1月1日の夜、我が家にとっては毎年恒例の『芸能人格付けチェック』という番組を観ていました。

高級ワインや超高級食材や何十億円もするような楽器での演奏と、コンビニや近所のスーパーマーケットで売っているような「普通の食べ物」、初心者用の楽器での演奏を比較して、どちらが高級なものかを当てる、という番組です。

 

食べ物の味とかはテレビを観ていてもわからないのですが、クラシックやジャズバンドの演奏(プロやアマチュアか)やプロの演出家と映画好きの違い、なんていうのはテレビ画面越しにでも判断できるので、毎年、新年の運試しのようなつもりで僕も挑戦しているのですが、これがもう、全然当たらない。

ABかの二択なので、ランダムに選んでも半分は的中するはずなのですが、どうもみても、半分もあたっていない。

そこで、「自分で思ったものと逆のほう」に張ってみると、やっぱり最初に「こっちだ!」と感じたほうが正解。誰に責められるわけでもないのだけれど、自分の芸術的なセンスの無さにがっかりしてしまうのです。

GACKT様は遠いなあ、と。

 

さて、今年、2017年のこの番組のなかで、「日本を代表する盆栽作家が丹精こめて製作した1億円の盆栽『雲竜』」と、「老舗和菓子店主がつくったお菓子の盆栽」の二択の問題が出ていました。

盆栽って、ハマるとすごく奥深いらしいのですが、僕は、まったく知識がありません。

 

Aは細い枝が頼りなげに伸びていて、その先に葉が少しついているような、僕の最初の印象では良く言えば「繊細」、悪く言えば「貧相」にみえた作品。

Bは幹が太くてどっしりとしていて、葉も立派に繁って整っており、立派なんだけれど、僕には「豪快」あるいは「大味」な作品。

 

うーむ、見た目の印象では、Bのほうが豪華で高そうな感じはするけれど、わざわざ問題にするということは、Aのほうが高いのか……?

そもそも、盆栽を観るポイントがわかっていないので、あてずっぽう、になるしかない。

結局、僕は「これでBが正解なら、当たり前すぎるだろ!」と、「A」を選択したのです。

 

答えは……「B」!

ぐはっ!

 

まあ、実害があったわけではないのですが、今年はことごとくハズレだったので、「逆神!」とみんなに呆れられました。

下手の考え、休みに似たり、とはこのことか……

 

さて、ホリエモンこと堀江貴文さんもこの番組に出演して、盆栽の問題に挑戦していたのです。

堀江さんは、この番組の帝王GACKTさんと同じチームで、外せないプレッシャーは相当のものだったと思います(結局、堀江さんは1問だけ外してしまい、コンビは「普通芸能人」になりましたが、GACKTさん個人の連勝記録は続いています)。

 

盆栽を前にした堀江さん、いままで見たことがないような真剣な表情で考え込んでいました。

いくら堀江さんでも、盆栽は守備範囲外みたいです。

悩みに悩んだ末に出した答えは……

「雲竜って言ってたんで、1億円の作品の方が。まあ、堂々たる雲竜っぽい感じがB

 

 この堀江さんの根拠を聞き、正解をみて、僕は「やっぱり堀江さんって、頭が良いんだなあ」と感心してしまいました。

僕は全くアテにならない自分の「審美眼」みたいなものに頼って、結局、あてずっぽうに答えを出してしまったけれど、堀江さんは「自分は見た目で盆栽の値段を判断することはできない」ということを認めたうえで、「雲竜」という名前と作品の概観を照らし合わせて、正解を導きだしたのです。

製作者がそういう名前を付けたからには、Aの枯れた感じよりも、Bのどっしりとした作品のほうではないか、と。

 

相撲の土俵入りにも「雲竜型」というのがありますから、重量感があるはずなんですよね。

僕は「値段が高いほう」を選ぼうとしたのだけれど、堀江さんは「提供された情報に適合しているほう」を選んだ。

目の前にあるものの価値がわからない、のは同じでも、堀江さんは、そこで思考停止せずに「問題文」をよく読んで、そこに答えが書かれていることを見つけ出したんですよね。

 

あらためて考えてみると、あの問題に関しては、盆栽の値段を決める基準を知らなくても、正解に近づくことはできた。

もちろん、あの番組のコンセプトからすれば「邪道」なのかもしれないけれど、生きていると、こういう「自分ではよくわからないものの価値を判断しなければならないこと」が、ときどきあります。

そういうときに、僕は大概、あきらめて「勘」に頼ってしまう。

でも、本当に賢い人は、そのまわりにある「情報」を分析して、少しでも正解に近づく粘り強さを持っている。

 

 子どもの塾の説明会に行ったとき、こんな話を聞きました。

「勉強ができない子には、うまく問題文を読めていない子が多い」

そんなの、書いてあることを「そのまま」読めばいいと思いますよね。

ところが、実際に出されている問題を読むと、確かに、誤読しそうなものもあるし、誤答例をみると、思い込みで答えてしまっている子も少なくない。

僕も子どもと一緒に算数の宿題をやっていると、子どもは、「わからない」「計算ができない」のではなくて、「問題文の意味を取り違えている(あるいは、読み取れていない)」ために答えを間違っていることが多々あるんですよね。

 

 その講師の先生は言っていました。

「答えは、必ず問題文のなかに書いてあるんです」と。

 

お正月ムードのなかで観ていた番組ではあったのですが、ものすごく印象に残る場面でした。

ホリエモン、すごい。

後付けでみると「当たり前にみえること」をああいうプレッシャーのかかる状況下でちゃんとできる人って、実際は、そんなにいないと思うのです。

「答えは、問いのなかにある」

それを意識すべきなのは、たぶん、子どもたちだけじゃありません。

 

【お知らせ】
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
ティネクト本音オンラインラジオ会員登録ページよりご登録ください。ご登録後に視聴リンクをお送りいたします。
当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

【著者プロフィール】

著者:fujipon

読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。

ブログ;琥珀色の戯言 / いつか電池がきれるまで

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