ノーブレス・オブリージェという言葉がある。

この言葉、『高い身分には義務が伴う』というような翻訳が当てられることが多い。今の世の中では、身分が高いもの、というよりは『金を持っている者』、『成功した者』とでも訳したほうが良いかもしれない。

テレビや新聞、雑誌やインターネット上の情報をみてみると、「多くのお金を集めた」物語がいかに多いかわかるが、そこで取り上げられているような人々のことを指すのだろう。

 

しかし、残念ながら全員が金を持てるわけでもない。成功するわけでもない。ピーター・ドラッカーの言葉を引用すれば、次のようになる。

人よりも上に行くことが立派なこととされている。しかし、職長になれるものは少数であって、経営管理者になれる職長は更に少数である。したがって、今日のように昇進を目標とさせたのでは、多くの者が不満に終わらざるをえない。

 

今の世の中、企業において、市場において、「昇進」であったり、「より稼ぐこと」を目指すことは推奨される。しかし、それが実現できる人はごく少数であることは自明である。そして、多くの人はそれに気づいている。

気づいているがゆえに、経営管理者の言う「頑張れば出世できる」「頑張れば報われる」は「経営者に都合のいい論理」に聞こえるのである。たとえ全員が等しく頑張ったとしても、結局「稼げる」人間と、「稼げない」人間は存在するのである。

 


ではどうするか。この問題は、残念ながら企業だけでは解決できない。企業の尺度では、「稼がない人」を評価できないからである。

これは、企業の存続という立場から見れば非常に正しいが、労働者の疎外はより強められる。疎外された労働者は、社会に対して恨みを持ち、反社会的な行動をとるものも出よう。

したがって、「経済的な成功に無縁の人たちを気にかけない」ことは少々危険である。 「機会の平等を利することの出来ない人たち」の自己実現を無視してしえば、長期的に見れば企業に取っても健全な市場を手に入れることができなくなるはずである。

 

ピーター・ドラッカーの言葉を再度引用する。

今日の我々は、経済的に成功出来ないものは、妻子を虐待する飲んだくれであるとするビクトリア朝初期の大衆小説の観念論に与するわけにはいかない。われわれは、経済的な成功が人間の価値を定めるとは思わないし、経済的に成功できず、そのゆえに価値なしとされる者を暗闇に捨てて行く気もない。

従って、我々が直面する最大の課題は、機会の平等を諦めること無く、無数の人たちに位置と役割を与えることである

ノーブレス・オブリージェとはつまり、このような考え方のことだ。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)