5月13日に、米国、シリコンバレーの教育系スタートアップの雄であるEdmodoを訪問して、話を聞いて来ました。Edmodoは、教師と生徒、および保護者のための「ソーシャルラーニングプラットフォーム」、いわゆるSNSのようなものですが、すでに世界190カ国(全体の75%がアメリカのユーザ、25%が海外ユーザ)、1900万人の登録者を抱えるサービスです。
どうやってサービスを使うのか、具体的な機能などの紹介は、ここが詳しいですが、、実際に内部で働いている人が、どのようにこのビジネスを伸ばしていこうとしているのか、また何が課題なのかがよくわかりました。
まず、従業員数は約80名、1900万人を抱えるサービスにしては、意外に少ないです。内、60名以上がエンジニアであるとのこと。自社サービスを作るのであれば、やはりエンジニアが中心となります。
また、1900万人の登録ユーザの内、アクティブユーザは約30%、これは普通の数字であると仰っていました。
主たる収益源は「プラットフォーム上で動くアプリケーションの販売手数料」です。販売手数料はアプリケーションの売上の25%。「Facebookアプリ」のようなイメージでしょう。
どのようなアプリケーションが販売されているのかを聞くと、「単語帳」「関数電卓」「数学の問題集」など。教師から教師へアプリケーションを販売するためのAppStoreが整備されています。
ただし、アプリケーションを製作するにはウェブに関する知識や、HTML5などの知識を必要とするので、「理論的には教師が作ることができるが、いいものを作ろうとすると、ソフトウェアのプロフェッショナルでないと厳しいだろう」というコメント。
また、元教師で、Edmodoを使っていた人をユーザーサポートグループとして雇い入れています。「ティーチ・フォー・アメリカ」という教師派遣の非営利組織の話題を先日取り上げましたが、元ティーチ・フォー・アメリカの教師も多数いるそうです。
そして肝心の売上を聞いたのですが、非公開。合計で50億円近い額を調達しているので、お金に困っている印象はないですが、それほど収益化には成功していないようです。
なぜなら、どのくらいのアプリケーションが販売されているのかを聞いたのですが、回答は「500」。一つのアプリケーションが仮に1万円としても、収益は500万円の25%なので、たった75万円です。ですから、スタートアップの常である「赤字」は創業5年を経ても変わらないようです。
ただ、1900万人も会員がいるなら、収益化は何とでもなるだろう、と思いましたので、「広告はやらないのか」と聞きました。回答は「SNSの性質上、やらない。ただし、将来的に教師に向けての広告は行う可能性がある。」
あくまでもアプリケーションの販売手数料からの収益化を目指しているようです。また、「自社アプリケーションを出さないのか」との質問にも、「我々はあくまでプラットフォームをつくるだけだ」という回答でした。
以上の話からすると、明らかに課題は「収益源たるアプリケーションを増やさないといけない」ということです。
しかし、「一体誰がアプリケーションをつくるのだろう」という疑問が浮かびます。まだ500しかアプリケーションがないのでなんとも言えないのですが、「アプリケーションを作るが得意なソフトウェア会社」は一般的に「教材」は作れません。
逆に、「教材」を作れる先生や専門家はソフトウェアのプロフェッショナルではない。
Facebookのアプリはなんでもありなので、ゲームで収益を上げ、かつ広告で収益を上げることができますが、Edmodoはその顧客の性質上、収益化が極めて難しい部分もあると感じました。
ただ、サービスそのものを作っている人たちの情熱や、1900万人という会員数を考えると、成長性という部分では限りなく可能性を感じるスタートアップです。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)