「スキルを高めたい」という理由で転職を選ぶ人が増えているように思う。

エンジニアになりたいんです、ライター志望です、マーケティングの仕事を希望します。そのように彼らは言う。

ロンドン大学ビジネススクール教授ののリンダ・グラットン氏が、「高度な専門技能を身につけるには、仕事に費やす時間の半分以上を、技能習得にあてなければならない」※1と述べたとおり、多くの人は「スキルのつく職場」を探すのに必死だ。

 

ある意味その行動は正しい。今の時代に求められるのは、会社人間となったネラリストではなく、専門技能に通じ、どの企業でも使うことのできる知識を持つ、スペシャリストであるからだ。

 

だが「転職で失敗する人」は後を絶たない。

・下積みだけをやって3年が終わった

・入社したら雑用ばかりだった

・スキルが身につかない仕事ばかりだった

「忍耐が足りない」「仕事が悪い」と言う方も居るが、実際のところは忍耐や仕事の問題ではなく、彼らがスキルの本質を知らないだけである。

当たり前だが漫然と時間だけをかけても、スキルは身につかない。

 

では、スキルの本質とはなにか。それは「掛け算」によって高める、と知っているかどうかだ。

例えば、英語ができる人は数多くいる。英語ができる、というだけではそれほど差別化はできない。そして、PHPのプログラミングができる人も数多く居る。これだけでも差別化は難しい。

ところが、英語が堪能なPHPのエンジニア、はなかなかいない。これはそれなりの強みとなる。希少性が上がるのだ。

さらにここに「文章が書ける」というスキルを保持していれば、かなり有望だ。英語ができて、PHPのプログラミングができて、文章も書ける。これはかなり希少性が高い人物である。

 

つまり、「スキル」は組み合わせに価値がある。カードゲームなどと同じだ。「文章だけで食べていくのは大変だ」という方が居るが、それは彼が掛け算を意識していないからだ。「文章」と何を掛けあわせるかが重要なのである。

 

したがって、スキルを身につける上で本当に考えなければならないのは、「掛け算」である。それさえ考えれば、ホントのところどんな業界にも転職できる。というより、違う業界に転職すべきだ。

一つの会社に長く居ると、どうしてもスキルの掛け算になりにくい上、「掛け算が重要である」ということにも気づきにくい。「何か一つのことを極めなければ」と思ってしまう。

異なる業界への人材の移動は、その業界の人からすれば貴重なスキルを持ち込んでくる人であり、イノベーティブなことをできる可能性が広がる。

 

誰にも負けないくらいのスキル、など世界にわずかしか存在しない。

だが仕事や研究は一つの分野での世界一だけが必要なわけではない。組み合わせ次第では、実は誰でも世界一になれる可能性がある。

実際、これまでにも成果を出している人は「今までになかった組み合わせ」を生み出して勝利してきた。

IT✕デザイン

英語✕教育

数学✕金融

営業✕プログラミング

 

だから、何かと揶揄される「ナンバーワンではなく、オンリーワンを目指せ」という言葉は、実はそれほど悪くない発想だ。希少な組み合わせを持つものは、オンリーワンになれる可能性がある。

ただしこれは「ニッチなところでオンリーワンを目指す」という意味ではなく、メジャーなスキルの組み合わせで、オンリーワンになるという意味だ。

戦略的にスキルを身につける人は、これを知っているのである。また、これを突き詰めると「そもそもスキルを自分で保つ必要すらない」という考え方にも行き着く。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

お申し込みはこちら(東京都サイト)


ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))

・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps

・ブログが本になりました。

 

 

※1

(Photo:delarge)