ある会社で、人事担当の方に「能力は高いけど、中身のない人っていますよね?」と聞かれた。

「ほら、居るでしょう。仕事はできるんですけど、中身がない。例えば「高いものは、いいもの」と無条件に思っちゃっている人とか、ビジネス書しか読まないとか、「エビデンスのないものは信じない」とか、言っている人。」

 

 

なかなか面白い視点だ。たしかにそのような人物に心あたりがないわけではない。

彼は続ける。

「最近、中途採用で応募してくる人にそういう人ちょくちょく見かけます。」

「そうなんですか。」

「そうなんです。彼らは時にMBAを持っていたり、難関資格を持っていたりもします。が、そういう人を採用するのは最近ではちょっとやめよう、という意見が社内から出ているんですよ。」

「どういうことでしょう?」

「一言で言えば、感性が乏しいというべきでしょうか。人の感情の機微を読むことや、発想力という点で、若干難がある気がするんです。」

「そういうものなんですかね」

 

私はしばらく考えた。なぜそのような方が避けられるのだろうか、と考え、その人事担当の方に質問した。

「能力が高くても、感性が乏しいと会社の成果に結びつかない、ということでしょうか。」

彼はいった。

「多分、彼らは器用に生きてきたのだと思います。人に評価される対象については、きっちり学習もしている。だけど、恐らく彼らには「信念」があまり無いような気がします。

だから、彼らは結局損得で動くし、人が自分から進んで動くような、心を震わせることも言えない。まあ、浅いんですよね。

仕事ができないわけではないんですが…なんというか、受け売りで生きている、といった印象を周りにあたえますよね。」

 

私はさらに質問した

「それが、ビジネス上の成果と関係があるのでしょうか」

「もちろんです。信念を持つ人を動かすためには、こちらにも信念がなければならないし、チームの本当の結束を作るためには、感性が豊かであるほうが有利です。

もちろん、これは新しいことを始めたり、面白い商品を作ったり、人と違ったことをするときにも必要です。要は、信念や美的センスがない人間に、ほんとうの意味で良い仕事はできません。」

 

 

「中身がある人」とは何か、うまく定義することは難しいように感じる。だが、何かしらの美学を持っている人のほうが、「芯がある」と多くの人は感じるのではないだろうか。

そして、良い会社は「個性を殺せ」とは言わず「芯のある人物」を求める。 「能力はあるけど、中身はないよね」という言葉はそういった要求からくるものなのだろう。

ほんとうの意味で良い仕事ができるよう、感性を豊かに保つことは重要なのだ、と感じる。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


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・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
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・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/6/2更新)

 

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(Photo:Jason Scragz)