多くの人や事業者が「今儲かっていそうだから」という理由で新しい事業に参入する。一昔前はパッケージソフト開発、少し前まではスマホゲームやwebサービス等だ。
古くは大航海時代、ゴールドラッシュなど、例を挙げればきりがない。人の行動はいつの世もあまり変わらないのだな、と思う。
個人であっても「ブログが儲かる」や「転売が儲かる」「株式投資が」「不動産投資が」といって、色々と手を出す方もいるようだが、ただ、私は「儲かりそう」という理由だけで何かに参入することには消極的な方だ。
おそらく参入の必須条件は、大義名分とやりがい、そして何よりもその人の個人的な思い入れだろう。
といっても、私もそれを知ったのはすこし前に、ある経営者の方から下の話を聞いてからだ。
その方はあるアプリの開発で財を成した方だ、だが過去2度ほど大きく負けて財産の殆どを失ったという経験者でもある。
人生の浮き沈みを知っている人の話は常におもしろい、私は「成功の秘訣」と「失敗の原因」をその方に聞いた。
その方は言った。
「そうですね、その2つは同じ話ですね」
「?」
「つまり、「儲かりそう」というところで商売をしないことです。そうではなく「こうすれば儲かっていない商売が、逆に儲かるようになる」という所で商売や投資をするんです。」
「どういうことでしょう?」
「簡単ですよ。「儲かりそう」と皆が思うようなところは、すでに先行者がいて、その人達だけが儲かるように仕組みを作ってしまっています。マルチや、情報商材なんかはその代表的な例ですね。」
「なるほど」
「ですから、後から参入してもその先行者たちにカモにされるだけです。」
「……。」
「先行者たちは、後発の人たちとちがって、そこに沢山の人が入ってくればくるほど儲かるんですよ。人は一番有名な人のところにまず行きますから。
「競合が増えて困る」のは後発だけです。先行者は逆に後発の人たちが勝手にPRや広告をバンバンやってくれるんで、逆に人が増えたほうがいいんですよ。
私の言うこと、アタリマエのことなんですがね。」
「確かにそうですね。」
「だから、賢い人達は「儲かりそうにない所」を仕組みを作り変えて「儲かるようにする」んです。その後「実はこんなことをすれば儲かります」というキャンペーンを打つ。
そして、後から入ってきた人たち相手に商売をする。そうすると儲かるんです。
これはゴールドラッシュの時に、集まってきた人たちにジーンズを売りつけて大成功したリーバイスの商売と同じです。」
「……。」
「かつて私も「儲かりそう」なところばかりに手を出して、全て失敗しました。で、2回ほど痛い目にああってようやくわかりました。あ、これは「儲かりそう」なことをやってはいけないんだと。」
「でも、儲かりそうにないことをやるなんて、辛くないですか?面白く無いですし。」
「そうです。そのとおりです。」
「……儲かりそうなことも、儲からなさそうなこともできない……。」
「いや、ですから儲かるかどうかという軸で考えないほうがいいんですよ。どうせ得意で好きでなければ工夫もできないし、続けることもできません。
リーバイスはもともと布の商売をずっとやっていたから、ゴールドラッシュで成功できたんですよ。楽して儲けることはできません。知恵を使って、手を動かした人の一部が運よく成功出来るだけなんですよ。
「失敗せよ」って言うじゃないですか。そりゃ成功は運ですから、失敗は必然です。何回もそんなことを繰り返してると、何か1つは当たる、それだけのことですよ。」
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