現在、日本で話題になっている「民泊」という言葉からどのような連想をされるでしょうか?
近隣とのトラブルや法的な問題でしょうか?
それともホテル不足解消やマンションの空室対策でしょうか?
それらのイメージは正しいです。
なぜなら、マスメディアが報道する「民泊」の話題の多くは、「旅館業」や「不動産」のビジネスの話だからです。
しかし、私がAirbnbを利用している理由は、そういった「ビジネス的な価値観」「金儲けの手段」とは一線を画します。なぜなら、Airbnbの創業者のスピーチは、そのような価値観から縁遠いからです。
Airbnbの創業者の一人でもあるJoe Gebbiaが「How Airbnb designs for trust(Airbnbはどのように『信頼』をデザインしたか?)」というテーマでTEDに登壇していましたのでご紹介します。(日本語字幕あり↓)
このスピーチの中では、どのような部屋がゲストに喜ばれて、どのような地域が素晴らしくて、ましてやどれくらいの収益性があるのか?というようないわゆる「旅館業」や「不動産」ビジネスとしての魅力は一言も語っていません。
語られているのは、Joeが成り行きで知らない人を自宅へ泊めてしまった経験から得た「知らない人は、友人になる可能性がある」という発見から、「知らない人は危険」という 偏見をいかにしてデザインで克服していったか?です。
スピーチの中で、一つの体験として隣の人と携帯電話を交換することで感じる感情について実験しています。
「では、そのロックしてない携帯を左隣の人に渡してください」
「今皆さんが感じているちょっとしたパニックの感覚は-」
「ホストが初めて自宅を公開するとき感じるのと同じものです」
「それではロックされていない他人の携帯を持つのはどんな感じでしょう?」
「多くの人はすごく責任を感じます」
「ゲストの多くが滞在中に感じるのも同じです」
「それがあるからこそ私たちの会社は存在しているのです」
今回スピーチをしているJoeは、デザイナーであると同時に当初はAirbnbカスタマーサービス係(つまりクレーム担当)でもありました。
苦情の電話は、直接私の携帯にかかってきました。信頼が裏切られる最前線にいたのです。そういう苦情の電話ほど 辛いものはなく、考えただけで心が痛みます。誰かの声にある失望感というのはかつて、そして今も私たちが改善をし続ける 最大の原動力になっています
彼らは、現場で起こる様々な障害を自ら受けることで解決しながら、アメリカのシリコンバレーという独特な自由な空気のなかで、「インターネットを活用して信頼をデザインする」という方法を用いて、「知らない人は危険」という偏見を克服する方法を発見しそして創造していったのです。
彼はスピーチの最後でこのように語っています
「私たちは別に新しいものを 作り出した訳ではありません。おもてなし(Hospitality)というのは昔からありました。 似たようなウェブサイトは たくさんありました。ではなぜ我々のサービスが 成功したのでしょう?幸運とタイミングを別にすると「信頼(Trust)」の要素を取り出しそれに向けてデザインすることが 可能だと学んだことです 「知らない人は危険」という深く根付いた偏見さえ デザインで克服できるんです」
Airbnbがなぜ世界中に熱狂的なファンを生み出しているか?
それは「知らない人は危険」という偏見に隠れていた「知らない人は、まだ見ぬ友達かも知れない」という事実に注目し、「まだ見ぬ友達を、本当に友達にしてしまう」仕組みをつくったからです。
実際にAirbnbのゲストが真に探しているものは、便利の良い場所にある綺麗な「部屋」より以前に、信頼できる「人」です。
それが信じられないなら、私のブログAirbnb日記や私と同様に一軒家の自宅でやっているエアログの写真を見てみてください。
(恐怖!ダブルブッキング→でも仲良くなる Airbnb日記 vol.126より)
(Airbnbゲストとタコ焼きパーティーはめちゃめゃ盛り上がる!より)
もしこれが旅館やホテルのだったら、また「民泊」として空室を貸すだけであれば、部屋の綺麗さや快適さ、料理のおいしさなどがアピールポイントになるでしょう。
でも、私たちの部屋にそういったものがあるでしょうか?
自分の寝泊まりしている部屋を綺麗で快適な共有スペースと言えるでしょうか?
エアログのたこやきパーティーがお金を頂ける料理と言えるのでしょうか?
実際は多くの人はその場にいる人々の笑顔に目がいったのではないでしょうか?
なぜ私たちの家に人が集まるのか?
それはゲストがホストの人柄を慕ってきているからです。それはまさにJoeが意図して構築した「信頼」がデザインされ、それらを積み重ねたホストにゲストが集まる仕組みを作ったからです。
少なくとも私が考えるAirbnbとは、世界中に友人をつくる手助けをしているに過ぎません。
旅館業でも不動産業でもなく、世界規模のネットワークを持つコミュニティを持った、人と人のマッチングプレイスです。そして、それはマスメディアの煽る「民泊は金儲け」というイメージとは程遠いものだと、確信しています。
(つづく)
“Airbnbは、いわゆるマスメディアの言う「民泊」とは違うと、私は信じます。Airbnb日記Vol.177” おわり
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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