「マニュアル通りの対応では、お客様の心はつかめない」とよく聞く。あまりに頻繁に耳にするせいか、「マニュアル」という言葉自体になんとなくマイナスのイメージを抱いてしまっていた。
一方、そんな私の仕事の1つに「マニュアル化」がある。バラバラと散らばっている過去の積み重ねをキレイにまとめることが仕事の1つとしてあるのだ。
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社員歴1年目の私は、仕事を教えるより教わる立場であることが圧倒的に多い。先輩から仕事を頼まれ、やってみる。ミスなくできることもあるが、ミスしてしまうこともある。
「できました。」
「ありがとう。……あれ、ここ違うよ。」
「すみません、やり直します。」
「教えてないから仕方ないよ。教えておくべきだったね。」
「いえ、私が気づくべきでした」
こんなやり取りをしたことがある。
その先輩はこう語った。
「教えなくても自分で気づいてほしいという思いは確かにある。ただ、真っ白な状態で気づける人と気づけない人がいて、世の中の大多数の人は後者だ。
だから何も与えずに放り出すだけでは、多くの場合、本人は成長したつもりになっても、実際はあまり成長していない。気づける人と気づけない人とでは、スタートラインから違っている。」
確かに「自分で気づこうとすること」「自分で気づけること」は大切だ。ただ、自分で気づけるかどうかにかかわらず、過去の積み重ねを引き継いだ上で新たなことに気づいた方が、より上に行けるのだろう。
時間は有限なのだから、既に先輩が知っていることに気づくより、わかっていることは教わり、スタートラインを引き上げた状態で新たなことを発見したい。(もちろん、気づけなかったことは反省した上での話である。)
マニュアルは、先輩の知識、過去の積み重ねを次の人に伝えるためにある。
「社員はいずれ会社を辞める。人はいつか死ぬし、転職・退職する可能性もある。でも、せっかく積み重ねてきて、その人がいなくなったらゼロからやり直し、では、いつまでたっても進歩がないでしょ。だから、過去の積み重ねをマニュアル化することには大きな意味があるんだよ」
先輩のこの説明を聞いて、私はマニュアル化する仕事を前向きに捉えるようになった。
同時に、世の中に存在する様々なマニュアルに対するマイナスイメージが、少し和らいだ。「マニュアル通りに動け」と言われたら、「マニュアルなんて」と反発したくなるが、マニュアルを知っていることには、意味があると思う。
ここでハッと思い出した2つの出来事がある。1つは新人研修。もう1つは別の先輩のメッセージだ。
◆新人研修
会社から内定をもらい、いよいよ社会人になるというとき、研修を受けた。いわゆる新人研修だ。そこでは、様々な「型」を教わった。
挨拶の「型」、上司に呼ばれたときの「型」、電話応対の「型」……。いわゆるビジネスマナーも、ある種のマニュアルである。「マニュアル通りに動くように訓練される」ことには反発したくなるが、「マニュアルを知り、練習して使えるようになる」研修は有意義だ。研修で学んだことは、実際に働き始めてからも役立っている。
◆先輩のメッセージ
新人研修について感じたことを先輩に伝えたところ、次のメッセージが返ってきた。
「型を知った上で自己流にアレンジするのと、型を知らないで最初から自己流でいくのは、全然違うんだよ」
私が受けた新人研修は、仕事で相手に良い印象を与えるための、過去の膨大な積み重ねを「型」として引き継ぐ時間だったのかもしれない。
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毎日気づきがある社会人生活は、本当に楽しい。これからも、何かを発見するために私は働き続けるんだろうな、と思う。さて、今日も「マニュアル化」の仕事をするか!
ではまた!
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【著者プロフィール】
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
著書「数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
Twitter:@Xkyuuri
ブログ:http://kyuuchan.hatenablog.com/「微男微女」