経営者は、会社の中で唯一、直接の評価を受けない人間だ。なぜ経営者は社内の超重要なイベントである「評価」を受けずに済まされるのだろうか。
「上司が存在しないから。」
「市場から評価を受けているから。」
「株主から評価を受けているから。」
というもっともらしい理由はある。だが、本当のところ経営者は「積極的に評価を受けたがらないからなのでは?」と私は疑っている。
まず、評価は必ずしも上司から受けるものではない。日本においても360度評価を作用している会社は数多くあるし、同僚や部下からフィードバックを受ける、というシステムは数多くある。
次に、市場から評価を受けているから、株主から評価を受けているから経営者への評価は不要、という意見も根拠は薄い。
市場や株主からは、業績やパフォーマンスについての評価しか下されないからだ。だがよく知られている通り、評価はパフォーマンスだけを評価する場ではない。
・会社の文化に良い影響を与えているか
・適切な時間の使い方をしているか
・どのような能力をを開発すべきか
そういったことについて、重要なフィードバックをする場でもある。
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では、経営者は誰に、どうやって評価をしてもらえばよいのか。フィードバックをどう貰えば良いのか。これについては、ある会社での最近の試みを参考としたい。
創業社長のR氏は、最近会社にあまり活気が無いことに気づいた。社員数が30名を超えてきたあたりから、会議での発言回数や、その中身が「無難な内容」になってきているのだ。会議で全く発言しない人もいる。
かつて会社が10名程度だった頃は、それこそ夜中まで議論を戦わせたものだが、今の様子ではそういったこともない。
「会社が大きくなってきたのだから、これが普通なのかもしれない」とR氏は諦めていたが、他社の様子を聞くと「30名程度で、そんな状態になるのはおかしい」とのコメントを貰った。
R氏はそれを聞き、「採用がおかしいのでは」と、創業当時からの腹心のK氏に相談した。
K氏は言った。「社長、実はその話ですが、心当たりがあります。実は社員から「社長と話をすると、詰問される」という苦情が結構来ていまして……。」
R氏は驚いた。「そんなバカな、オレは社員を問い詰めた覚えなんかない。」
「ですから、社員にはきちんと私から説明をしています。社長にはそんなつもりはないと。ただ社長も議論が盛り上がると、多少言葉が乱暴になったりするところもあるのではと。」
「……。オレの話し方が悪いってことか。」
「そうですね、社長のことを昔から知っている社員は、「いつものヤツね」と思うかもしれませんが、普通は社長からきつく言われたら、まあ、怖いと思うでしょう。」
「……なぜ早くそれを言ってくれなかった。」
「言いましたよ。何度も。」
「悪いが、記憶に残っていない。」
「でしょうね。」
R氏は反省をしたようだった。
「どうすればいいと思う。」
「前からやろうと思っていたのですが、我々も部下たちから評価を受けるべきです。社長自身のビジョンへの忠実度や、会社の文化に与える影響、コミュニケーションの取り方など、注意すべき項目はたくさんあります。もちろん民主的な会社になる必要はありませんが、共に仕事をする人からフィードバックをもらわないのは不健全です。」
「われわれも評価結果は給与に反映するのか。」
「いいえ、そんなものは意味が無いでしょう。そうではなく、フィードバックの結果を公開しましょう。全部。」
「………。マジか。」
「そうでもなければ、社長はそれを気にしないでしょう。」
「むー。」
「もちろんリスキーかもしれませんが。経営者や私も、少なくともよく一緒に働いている社員のフィードバックは必要です。」
はたして、社長と役員へのフィードバックはおこなわれるようになったが、今のところ特に問題はないとのことだ。むしろ「自分を振り返る良い機会になった」と彼らは感じている。
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どんな権力であれば、外部からの評価と査定を受けなければ、堕落する。これは心理学の様々な実験でも確かめられている事実である。
裏を返せば、パフォーマンスでのみ評価されている経営者は、「パフォーマンスさえ挙げれば、何をしてもよい」という考え方になりやすいということだ。
経営者になる前は有能で、勉強好きであった人物が、トップになった瞬間に頑固になり、部下の意見に耳を傾けなくなってしまった、という話はいくらでもある。
あるベンチャー・キャピタルの幹部は、
「そんな人に限って、有名な経営者の講演や、外部のセミナーなんかが大好きなんですよ。自社の社員の方が、よほど経営者のことを理解しているのにね。」と言った。
上で紹介した会社の事例は少々極端ではあるが、自浄作用を組織内でどのように保つか、大きな経営課題の1つである。
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奥田 真輔 氏
システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、
メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。
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