人事評価は、つきつめて単純化すれば成果と労働時間、生産性のどれを評価すべきか、に帰着する。スキル、能力や経験その他に関しては、あくまで補助的なものにすぎない。

だが、そこにはかなりの考え方の差異がある。

 

例えば、皆様は、以下の6名にどのように評価の差をつけるだろうか?

なお、単純化するため残業代を除いた給与は全員同じとする。また、全員の目標値も10であり同じとする。

 

 

Aさん 成果8 働いた時間10(うち、残業0)生産性0.8

Aさんは定時内で絶対に帰る。が、目標達成できていない。「目標達成にこだわらないよ」という人物。働くのが嫌い。

 

Bさん 成果10 働いた時間10(うち、残業0)生産性1

Bさんは定時内で絶対に帰る人物だが、きちんと目標達成もする。が、求められる数値以上は絶対に働かない。「ワークライフバランス重要ですよ」という人物。

 

Cさん 成果12 働いた時間10(うち、残業0)生産性1.2

Cさんは定時内で絶対に帰る人物。有能で生産性が高く、残業せずとも目標オーバーできる。「どうすれば仕事が早く片付くか、真剣に考えてます。」とのこと。

 

Dさん 成果10 働いた時間15(うち、残業5)生産性0.7

Dさんは遅くまでよく働く。目標以上によくはたらくのだが、若干生産性は低い。「まずは量をこなすことで、仕事の質が上がるんですよ」と言っていた。

 

Eさん 成果12 働いた時間15(うち、残業5)生産性0.8

Eさんは出世欲が強く、遅くまで働くことを厭わない。長時間労働の割には生産性が高め。上司から「残業して」と言われたら断らないし、仕事が大好き。

「人より働かないと、出世できないし、面白い仕事出来ないですから。あと、無駄な努力は悪。」という。

 

Fさん 成果15 働いた時間25(うち、残業15)生産性0.6

Fさんはひとことで言うと、モーレツ社員。誰よりも長くはたらき、普通の人の1.5倍の成果を出すが、長時間労働の悪影響で生産性はかなり低め。

「仕事が生きがいです」とのこと。

 

 

さて、自分なりにどの人を評価すべきか、判断してみてほしい。

以下は、回答の傾向である。

 

—————————

 

ブラック企業っぽい会社における評価

Fが高評価。働いた時間と成果の絶対量が問題にされる。生産性は度外視。

残業代を払わないから、当たり前といえば当たり前。

また、EとDはそこまで評価が変わらない。AとBは評価が低いのはお約束として、Cも評価が低い。なぜなら「もっとやれるのに手抜きしている」とみなされるからだ。

結果:F>>>E、D>>>C>A、B

 

 

若手が多く伸び盛りの会社、スタートアップなどにおける評価

傾向としてEとF、そしてCが高評価を獲得する。成果の絶対量が重視され、長労働時間が苦にならない人たちの集団だからだ。逆にそれほど生産性は重視されない。

ただし、労働時間が長いのに成果がイマイチなDは出世できない。「無能」とみなされている。もちろんA、Bも出世できない。「たくさん働いて、たくさん稼ごうぜ!」が合言葉だからだ。

ただ、場合によってはFが「生産性低すぎ」とバカにされているケースもある。

結果: F>E、C>>>B>D>A

 

それなりに儲かっている中小企業や外資系における評価

F、E、Dは評価が低い。残業代がかかりすぎているからだ。特にFは最悪。「残業を減らせ」との圧力がかかる。

それなりにビジネスモデルが出来上がっている中小企業では、コストダウンをして、利益を出そうとするからだ。逆に評価が良いのはC、ついでB。コストを掛けず、それなりの成果を出せ、が優先される。また、Aはこの会社でも評価が低い。

結果:C>B>>E、D>>F、A

 

同調圧力の強い大企業における評価

Fのように目立つ人物は排除される。かといって、Aのように成果が出せないのもダメである。

E、Dのように「長時間労働」が評価されるか、B、Cのように「定時できっちり」が評価されるかは管理職が何を重視するかによる。

結果:

長時間労働バンザイ E、D>>>B、C>>>F、A

定時帰宅バンザイ B、C>>>E、D>>>F、A

 

知識労働者中心の企業における評価

F、Aは無能。Cがもっともよい。Bが次いで良いが、D、Eは今ひとつの評価しか受けられない。キーワードは「生産性」だからだ。生産性が高くなければ何事も認められず、無能の烙印を押される。

「おまえ、頭の悪い働き方してるな」と言っている人が大勢いる。

結果:C>B>>>D、E>F、A

 

 

労働時間、成果、生産性のバランスは組織の価値観と自分の価値観があってないとつらい。

 

ちなみに

・Aはどの会社でも評価が低い

・FとBは評価が上と下で分かれる

・ブラック企業でなければCがもっともよい

・Dは「可もなく不可もなく」の人。

・Eは「人よりちょっと成果を出している」ので、得なポジション。出世しやすい働き方。

といった特徴が見られる。

 

自分にあった会社で働こう。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

Books&Appsでは広告主を募集しています。

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

「仕事ができるやつ」になる最短の道

「仕事ができるやつ」になる最短の道

  • 安達 裕哉
  • 日本実業出版社
  • 価格¥500(2025/06/05 13:48時点)
  • 発売日2015/07/30
  • 商品ランキング110,823位

Joselito Tagarao