人を伸ばす力―内発と自律のすすめ金銭は、動機付けに対し強力な力を持っている。それ故に、多くの会社は、その影響力を使って、社員をコントロールしようと試みる。例えば、以下の様なことだ。

  • 目標を達成したら、ボーナス支給する
  • 今入社を決めたら、お金を支給すると誘う
  • 高い給与で転職を促す
  • 成果を出さなければ給与を下げるぞと脅す
  • 最も成果を上げた人に対して、特別ボーナスを支給する

 

もちろん、お金で人をやる気にさせることは可能だ。誰でも魅力的な報酬に敢えて逆らう必要はない。

 

しかし、お金による動機付けは「良い影響ばかり」なのだろうか?

その疑問に切り込んだのが、ロチェスター大学の、エドワード・L・デシという学者だ。彼は一連の実験により、「お金による悪い影響」を立証するべく、実験を行った。

 

その実験の内容は以下のとおりである。

1.大学生に「ソマ・パズル」という非常に人気のあるパズルをやってもらう。その際に2つのグループに別れる。一つはパズルをとくとお金がもらえるグループ。もう一つは報酬を受け取らないグループである。

2.まず30分、被験者に自由にパズルに取り組んでもらう。

3.その後、実験者はパズルを解く時間が終わったことを告げ、自分はデータを入力し、書き込んでもらう質問紙を印刷するために、2、3分中座すると被験者に告げる。

4.この中座した時間に、被験者が一体何をするかを観察する、果たして実験時間中だけでなく、実験が終わった後も自発的にパズルに取り組むのか?

5.実験の結果、報酬を支払われたグループは、報酬を支払われないグループに比べて、自由時間にパズルを説くことはずっと少なかった。つまり、報酬の支払がなければ、パズルと解くことも無くなった。

 

結果をデシは、以下のようにまとめている。

”彼らは、最初報酬なしでも喜んでパズルに取り組んでいたのに、一旦報酬が支払われると、あたかも彼らはお金のためにパズルをやってるかのように見えた。金銭という報酬が導入された途端に、学生たちは報酬に依存するようになった。

これまでは、パズルを解くこと自体が楽しいと感じていたにもかかわらず、パズルを解くのは報酬を得るための手段にすぎないと考えるように変わってしまったのである”

 

 

この実験には、再現性が有り、やるたびに同じ結果を得たという。

さらに、「同僚との競争」も、金銭的な報酬と全く同じ結果を得た。すなわち、「競争」は、「行動そのものの面白さを損なう」のである。

また、この結果は、「世界のあらゆる場所で」「職場においても」起こりうるとデシは結論づけている。

 

 

もし、

子供に進んで勉強して欲しい、と思えば、報酬で誘引してはいけない。「報酬がもらえる時だけ勉強し、勉強が嫌いな」子供ができる。

社員に進んで仕事して欲しい、と思えば、報酬で誘引してはいけない。「報酬がもらえる時だけ仕事し、仕事が嫌いな」社員ができる。

 

子供に勉強が好きになって欲しいなら、競争させてはいけない。「競争で勝っても負けても、勉強は嫌いになる」

社員に仕事を好きになって欲しいなら、競争させてはいけない。「競争で勝っても負けても、仕事は嫌いになる」

 

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