様々な企業を訪問すると、「上から目線」の方に出会う。
上から目線は嫌われがちではあるが、個人的には特に悪いことか、といえばあまりそうは思っていない。
目的があり「上から目線」を使っている人は、少なからず存在する。
例えば、多くの独裁的な経営者は上から目線の方が多い、
これは自然なことで、認知心理学的には、人は「自信にあふれた人」を信用する傾向にある。したがって、尊大に振る舞うことにより、「社員が経営者に疑いを持たない」ということを彼らは経験的に知っているのだ。
また、LINEの執行役員であり、メディアの専門家である田端信太郎氏は著書*1の中で「上から目線」についてこのように述べる。
ネット上では、新聞や雑誌といった旧マスメディアに関わる大手企業の社員を指して「上から目線」の「勘違いマスゴミ」などと揶揄し、罵倒するムードがあります。
私も、その気持自体はよくわかりますが、プロとしてメディアの世界で満足な報酬を得ようとするならば、「ナメられてしまえば、商売はあがったり」であり、一定の「上から目線」はある意味では、当然の前提なのです
「権威」を必要とするマスコミの方々、あるいは専門家、管理職たちが、「上から目線」を使うのは意図的であり、特に批判されるべきことでもない。世の中には「上から目線の専門家」「上から目線の上司」を好ましいと考える方も数多くいる。
*1
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ただし、不幸なのは「本人が自覚していない状態で、知らず知らず上から目線になっている人」である。なぜなら、殆どの人にとってその人は「単なるコミュニケーションの取りづらい人」になってしまうからだ。
友達や家族に疎まれるばかりか、仕事でかなりの損をしているだろう。本人に明確な悪気がないのに、意図せず嫌われてしまうのであれば、それは気の毒なことでもある。
では、「知らず知らず上から目線になる人」はどのような特徴を持っているのだろう。
1.「評価」し、賞賛しない
「上から目線」と思われがちな行動で最も目立つのは、賞賛すれば良い所を、知らず知らずのうちに「評価」してしまうことである。具体的には
・よくやってるんじゃないかな。でも…
・悪くないよ。でも…
といった発言である。「素晴らしい」の一言で済むところを、どうしても「素晴らしいけど、◯◯の部分はまだまだだよ」と言いたくなってしまうのだ。特に中途半端に知識があると、素人が「素晴らしい」と賞賛することを素直に認められない方が多い。
嫉妬はとても強い感情であり、それが一種の「上から目線」を生み出す。
2.「勝ち負け」「序列」にこだわる
私、◯◯が好きなんだけど……と言うと、「いや、どう考えても◯◯のほうが上でしょ」という発言が多いと、上から目線という印象を持たれる。
つい先日、ある女性がパートナーからプレゼントしてもらったアクセサリーを周りの方に見せた所、「アクセサリーブランドの序列」について語り始めた方がいた。当然、女性はいい気持ちはしなかっただろう。
「勝ち負け」「序列」「格差」といったキーワードに敏感な方は、「上から目線」を生み出しやすい。
3.「主張したい」けど相手の理解はしたくない
ある「意識高い系」と言われている男子学生がいた。彼は真面目でよく勉強し、就職活動もそれなりにうまく行っていたので、後輩から就職活動のアドバイスを求められた。
だが、アドバイスを求める後輩は日に日に減っていった。なぜなら「あの人上から目線でムカつく」という噂が立ってしまったからだ。
実際、彼は意識が高過ぎる余り、後輩の「相談にのる」という役割を忘れ、ひたすら自分の主張を後輩に押し付けていた。
・とりあえず、この時期にエントリーシート◯社出してないなんて、ありえないでしょ。
・◯◯の説明会行ってないの?ヤバイよそれ。
・この時期には◯社くらいの内定を持っておかないと、失敗だよ。
だが後輩が求めているのは、彼の主張を話してもらうことではなく、悩みを聞いてもらい、対応策を一緒に考えてもらうことだった。
主張が強すぎると、「上から目線」を生み出しやすい。
4.「教えたい」が強い
「教えること」は「上から目線」と紙一重であり、勘違いされやすい。学びは「自分が無知である」と仮定しなければ得られないものだからだ。
したがって「教えすぎる人」は、相手に「自分が無知である」と考えることを強制するので、「上から目線」と捉えられやすい。
・◯◯について教えてやろう
・◯◯は私の言う通りにやれば大丈夫
・オレにアドバイスを求めないなんて、間違っている。
こう言った発言は「親切」であることも多いのだが、相手によっては「上から目線」と見られることもある。
「教えたからって、学ぶわけではない」のだから、教えたがりの方は注意しなければならない。それは「上から目線」を生み出しやすい。
5.「人を試す」ことが好き
質問に質問で返すことや、「◯◯って知っている?」といった人を試すような質問が多いと、「上から目線」という評価を受ける。
例えば聖書には「神を試してはいけない」という訓戒が述べられているが、それは「試す」という行為自体が人間を神の上位に置く行為であるからだ。
もちろんちょっとした投げかけや、コミュニケーションのための質問は悪くないが、「この人がどこまで知っているのか」「どの程度の事ができるのか」などを試す行為を頻繁に用いると、もれなく「上から目線だ」という評価をもらうことができる。
繰り返すが「上から目線」は時と場合によって使い分けが重要だ。
意図せざる評価を貰わないために「ちょっと気を遣う」だけでも、かなり印象が変わる。
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【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
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(2025/6/2更新)
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