参院選が近い。
誰にどういう基準でもって投票すればいいかどうかよくわからない人や、そもそも政治っていうのがどういうものなのかがサッパリわからないという人は非常に多いと思う
(なお知識ゼロの人に向けた選挙の記事はこちらに書いたので、興味ある人は是非読んで欲しい)
そこで今日は政治家の成り立ちを出来る限りわかりやすく記載し、政治の本質について誰にでもわかるように書いていくことにする。
右翼・左翼って何?
現代ならともかく、かつては人は1人では生きてはいけなかった。故に徒党を組んでコミュニティを形成していた。
初めは○○族のような部族単位で始まり、そのうち地域で統括された集団ができあがっていく。日本の例で言えば、戦国時代ならば織田家とか毛利家のようなものを思い浮かべてもらえればわかりやすい。
当然というか織田家と毛利家では何が利益になるかは非常に異なる。お互いがお互いの所属コミュニティの為に様々な政治的駆け引きを行い、所属集団に利をもたらそうと画策する。
もともと政治というものは、このような部族単位のものであった。個人の人権というものが極端に重視されるようになってきたのは、民主主義になって国が豊かになってからの話だ。
地域単位で睨み合っていた戦国時代ならまだしも、日本も豊かになり歴史が進んでゆくと、今度は人権というものが意識されるようになる。
旧制度の頃は集団の利益が最も尊ばれていたのが、今度は個人の利益に着目されるようになった。当然、国会は政治的な話し合いがされる場所だから「士農工商のような今までのような身分制度がある旧体制から脱却して、全国民が平等になるように人権を尊ぼう」という事を主張する人がでてくる。
このような話し合いは歴史上どこの国でも行われており、かつてフランス革命の頃の国会で「旧体制の頃にみられた、個人ではなく共同体の利益を最も尊重する」人達が右側に座っており、「旧体制を批判し、硬直化した共同体から個人の自由を唱える」人達が左側に座っていた。
この事から共同体を尊ぶ人たちのことを右翼とよび、個人の自由を尊重する人達の事を左翼と呼ぶようになった。
つまり右翼とか左翼ってのは、座ってた席の位置が右か左かだけの違いで、言葉の意味としては何の意味もなしていない。個人的にはこのくくりは非常にわかりにくいので、右翼ではなくコミュニタリアン(共同体尊重主義。かつて旧体制を支持していた事から、日本では保守派と呼ばれる事が多い)、左翼ではなくリベラル(個人主義。旧体制を批判した事から、日本では革新派と呼ばれる事が多い)と呼ぶのがいいと思う。
こうしてリベラルと呼ばれる左翼集団がでてきたのだけど、今度は個人主義であるリベラルの中にも2つの異なる主張をする存在が現れ始めた。一方は「機会の平等」が提供される事が最も大切だと述べ、また一方は「結果の平等」が提供される事が最も大切だと述べた。
具体的に言えば、前者(機会の平等)はスタート地点での格差がないことが最も大切だと考え、平等な競争が行われる事を最重視する。その後に生じる勝ち組・負け組については完全に自己責任であるというスタンスで、競争の結果格差が生じる事は「努力したんだから当たり前だ」といって競争の結果生じた格差はあまり是正しない。
一方後者(結果の平等)は、スタート地点での格差はあまり気にしないが、競争の後に生じた格差はできる限り是正されるべきだと考える。勝ち組は負け組に保証を行うべきであり、また負け組は勝ち組からある程度の保証を受け取る権利はあるものだと考える。このように「結果的にみなが平等である」という事を最も良いことと尊ぶ。
この「機会の平等」を訴える人達は、自分自身を新たなリベラリズムの一派と自認したことから、ネオリベラリズムという名を宣言する事になった。現代ではリバタリアンと呼ばれる事が多い。一方後者の「結果の平等」を訴える人達は、そのまま前からあったリベラルという名を継続して自認する事となった。
右翼(保守)だとか左翼(革新)なんて呼ぶと何を意味しているのかがまったくわからないが、このようにコミュニタリアン(個人よりも集団の利益を尊重する)、リバタリアン(機会の平等を尊重する)、リベラル(結果の平等を尊重する)、という3つの区分が政治には存在するという事を考えれば、わかりにく政治もある程度はわかりやすくなる。
具体的に言えば、少し前の大阪の橋下さんなんかは完全にリバタリアニズムを地でいっていたけど、そのあまりにも個人に努力する事を求め過ぎる政策が大阪の人々を震え上がらせたのと、コミュニタリアンが持つ既得権益をメチャメチャに破壊していった事から、コミュニタリアン・リベラルの両方から攻撃され、残念ながら政治の世界からは引退する事になってしまった。
ちなみに幸福の科学のような宗教団体が擁する党は、どちらに分類されるかというと右翼の区分に分類される事になる。この手の党は「自分の宗教の利益」が最も大切であり、個人うんぬんではなく宗教団体ありきの考えがベースとなっている。
右翼≒保守という理解ではこれらを読み解くことは困難だが、これをコミュニタリアンという風に考えればかなり理解しやすいと思う。
この3つの区分を理解するだけで、驚くほど政治についての理解が進むはずだ。ここは最低限しっかりと抑えて欲しいと思う。
功利主義という考え方
先ほど、コミュニタリアン(共同体主義)、リバタリアン(機会の平等)、リベラル(結果の平等)という3つの考え方を示した。当然というか、このどれかに極端に偏った政策を掲げる人は稀だ。当然というかこの3つのどれもが人権的に大切なものだし、実際の政治ではこれらの3つがうまくブレンドされた人が選出される傾向にある。
この3つの主張の中から「最大多数の最大幸福」を見出す事を功利主義という。これはいってみれば3つの主張をバランスよく取り入れて、最も多くの人間が幸福になるように設計する主張であり、基本的にはよい政治はよい功利主義的な考えをしている人により行われる。
政治の歴史をみればわかると思うけど、基本的には貧しいと人は共同体を作って身を寄せあい、余裕が出てくると個人主義を提唱し始める。
現在の安倍政権は右翼(保守派)だと言われているけど、低成長である日本においては個人よりもコミュニティが尊重されるのは多少は仕方がない面はあるのだ。
まあ何はともあれ、難しい政策だとかマスコミの扇動に踊らされる事無く、各政治家やメディアの発する情報が、上の3つの立場のどこの要素が強いのかについてをしっかりと自分なりに分析する事が大切だ。これさえできれば、自然と政治がどういうものなのかを理解する事ができる。
政治は難しそうにみえるけど、基礎さえしっかり理解していればそう難しい物ではない。自分の中にある一票を大切にしていきていきたいものである。
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