こんにちは。日本植物燃料株式会社、代表の合田です。
今回は、前回に引き続き、モザンビークで「バイオディーゼル事業」に着手したところからの話です。
バイオディーゼル燃料事業を成立させるためには「生産」と「販売」の2つが課題です。 ですから何よりもまず、私たちは「バイオディーゼル燃料」を安定して生産できなければなりませんでした。
そこで、前回も少し触れましたが、ヤトロファの種を現地の人に提供しました。
今利用している農地にヤトロファを植えてもらうことはできませんが、今ある畑の脇に「柵」としてヤトロファを植えてもらい、収穫したヤトロファは私たちが買い取り、加工して燃料とします。
「組合」と言う形態をとりながら、1万人の農民たちに協力してもらい、なんとか私たちはモザンビークでバイオディーゼル燃料の原料となるヤトロファを栽培し、燃料を作り出すことはできるようになりました。
ですが、もちろんそれだけではビジネスとしては成り立ちません。
肝心の「顧客」がいないからです。
しかし、モザンビークで(世界的にも)バイオ燃料を使っている人など、殆どいません。まして、バイオ燃料を使って事業を興そうなんて考えている人もいないわけです。
ですので、バイオディーゼル燃料でビジネスをしようと思うと、事業の根本である「市場」から創る必要がありました。
1つは「製粉機の燃料としての利用」です。
(左は原動機、右奥は製粉機、右手前は精米機)
モザンビークではトウモロコシを粉にし、その粉を炊いて主食にしているので、栽培が盛んで、その製粉機を動かす燃料の需要があります。
そこで我々は一軒一軒製粉所を尋ね、ドラム缶に入った燃料をピックアップトラックで宅配すると申し出、顧客となってもらいました。
苦労の甲斐あって、約350件の製粉所を顧客として開拓することができ、バイオディーゼル燃料事業の基盤は出来上がりました。
そしてもう一つ着目したのが「電源」です。実は、モザンビークのほとんどの農村は「非電化区域」であり、いわゆる電気が通っていない地域です。
ですが「電気」に対する潜在的な需要はあります。
例えば、漁師たちは魚を冷やすのに-40℃の氷を使いますが、その氷は電化区域まで、1時間以上かけて買いに行っています。
また夜、家にお客様を招く時は電気ランタンなどを使うこともあります。
我々はそこに商機を見出しました。
発電機を置き、その発電機をバイオディーゼル燃料で回して発電する。その電気を使い、氷を製造したり、充電したランタンなどを貸し出せば良いのです。
そこで我々はキオスクと呼ばれる、日本でいうところのコンビニエンスストアのような店舗をつくり、そこで充電したランタンの貸出しや、冷えた飲料の販売、氷の製造販売などを行うようになりました。
(上はキヨスク)
(上は発電機と充電中のランタン)
ついに、我々はモザンビークに店舗を持つことができたのです。
ところでキオスクの運営は現地の方を雇って行っています。
月商が1店舗あたり約30万-40万ほど、粗利は20%程度なので、日本人を雇うわけにはいきません。また、モザンビークの「大卒」も、雇うには結構なお金がかかるのでパスです。
したがって採用は現地の「できるだけ真面目そうな人」を採用します。
また、余談ですがお店なのでお金の計算ができなくては困ります。そこで算数のテストをやってみてわかったのですが、残念ながら大体の人は3ケタの足し算引き算がやっとなのです。
「算数ができるって、実はすごいことだなあ」としみじみ思いました。
そのようにして現地の人を雇ってキオスクを経営していたのですが、ここで思わぬトラブル(?)がありました。
店舗の運営は現地の人に任せてはいますが、最終的な数字の管理は全て日本人スタッフがやっています、ところが月ごとに棚卸しし、帳簿と現金をつきあわせるると毎回必ず3割くらい、現金が足りないのです。
毎回合わず、しかも絶対に現金が少ない側に合わないのです。もし、計算が不得意だって言うのならば、たまにはプラスになってもいいのですが、とにかく必ずマイナスの方向に合わないのです。
人を疑いたくはないですが、もちろんそれは現地でスタッフに確認します。
「なぜ現金が足りないのか?」と。
現地スタッフの話はこうでした。
「私は、電卓を持っているので計算違いなんてしないから、絶対に私のせいではない。私が思うにこれは妖精のせいじゃないかと思う。
あなたのやっている商売は今とてもうまくいっている。「電気」を扱える店がほかにないからだ。でも、アフリカの人というのは妬みの文化なんだ。だから、この店を妬んでいる人たちが、悪い黒呪術師に頼んで呪いをかけている。
呪いがかけられると、豆粒みたいになった妖精が店の中に入ってきて、お金を持って行く。だから、お金が減っている。」
………。
「お、おう……。そうか……。」
さらに
「対抗できる白呪術師を知っているから、紹介しようか?」と聞かれましたが、丁重にお断りしました。
困りました。
ただ、考えてみればどんなルールを定めて管理をしたとしても「現金」を扱う以上は再発します。
結局、考えた末の私の結論は「現金を使わなければいい」となりました。
実は当時、電子マネーがアフリカの発展途上国にも普及し始めていました。
アフリカに電子マネー?と思われるかもしれないですが、それほど難しいわけではなく、キオスクに電子マネー用のPOS端末を1台置いておけば、そこでスイカのようなカードを使って、電子マネーをデポジットしてもらえばいいのです。
良い機会です。
NECが偶然にも「途上国向けの電子マネーシステム」を持っていると聞き、私は彼らと共同で、キオスクに電子マネーを導入しました。
狙い通り、効果は絶大でした。今まで必ず3割違っていた現金が、誤差1%程度になったのです。
要するに全く豆粒の妖精が出てこなくなったわけです。
また、電子マネーを導入したことによって、恩恵を受けたことはそれだけでありませんでした。現地の人の購買データがPOSを通じて入手でき、徐々に現地の人々の生活が見えてくるようになったのです。
例えば、モザンビークでは、パスタやトマト缶、米などは贅沢品になります。
「贅沢品をどれくらい買っているのか?」ということは電子マネー導入前にはあまりわかりませんでしたが、今はデータを見れば一目瞭然です。
また、だいたいキヨスクでの利用金額の30-50%が携帯のプリペイド料金であることもわかりました。
さらに驚いたことに電子マネーに4〜50万円ほどを貯金する人が現われたのです。これはモザンビークの平均年収くらいです。(※モザンビークの賃金・生産性 統計データ Global note 出典:ILO)
調べてみると、これはとても合理的な行動だとわかりました。
モザンビークの農民は、農作物を売ったお金が主な収入となります、従って現金が季節ごとにまとまって入ってくるわけなのですが、それは年間の生活費になるものなので貯めて置かなければなりません。
通常ではもちろん銀行に預ければと思うかもしれませんが、電気がない地域に銀行を作ることはできません。結局は自宅で保管することになります。
結局、多くの人は、自宅に現金を保管することになるのですが、保管する場所が土の中の壺だったりします。
でも、それにはひとつだけ大きな欠点があって、土の中に隠していると「お金が虫に食べられてしまう」ことがあるのです。これ冗談でもなんでもなく、現実にそうやってお金がまさに「目減り」します。
そのため、そのまとまったお金を電子マネーとして預けておいた方が安全だと気づいた人たちがたくさん現われたのです。電子マネーならば、現金のATMは必要ないですし、盗まれることもないですし、虫に食べられてしまうこともありません。
モザンビークの農村で暮らす人々の購買行動のデータと、貯金のデータが、今はすべて手元にあるわけです。
ここから私は本格的に「モザンビークで銀行業が始められるのでは……?」と思うようになりました。
(⇒to be continued……)
関連記事:
モザンビークで“銀行”をつくった初めての日本人 | Forbes JAPAN
「モザンビークにモバイル銀行を作るバイオ燃料会社CEO」合田真さんがやってきたこと、見据えていること | Life hacker

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