社会人になりたての頃、先輩とこんな会話をしたことがある。
「社内の人たちの名前はもう覚えた?」
「顔と名前はだいたい一致するようになってきました」
「名前を覚えたほうが仕事もしやすいよね。いろんな人がいるでしょ?」
「そうですね。でも、関わったことがない人も多くて、仕事の進め方や性格まではわからない先輩も多いです」
「だんだんわかってくるようになるよ。『自分の仕事はこれ』と決めて、それ以外のことは一切やらない人もいたり……」
「それは、仕事へのスタンスとか、どういう働き方をしたいかという価値観の問題ですよね」
「そうだね。ただ、やっぱり好ましく思わない人もいるよね」
“好ましく思わない人もいる”という事実を聞かされ、自分の中で2つの思いがぶつかり合った。
それは、「仕事へのスタンスは人それぞれでしょ」という思いと「とはいっても、範囲外の仕事は全くやらないという人とは仕事はしづらいだろうな」という思いだ。
先輩はあの会話で、「そんな人にならないでね」と伝えているような気がした。
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先輩の言っていたことをきっかけに、“仕事の範囲”について考えるようになった。そもそも、あなたが思っている“仕事の範囲”は誰が決めたものなのか。上司? あなた自身?
「あなたの仕事の範囲はここからここまでです」と明言されたことがある人は、実は少ないのではないだろうか。
そうだとすると、“仕事の範囲”は自分が思い込んでいる範囲にすぎず、周囲の人が期待する範囲と一致しない可能性もある。
だからといって
「仕事の範囲は広ければ広いほど良い」
「範囲なんて決めずに何でも積極的にやるべきだ」
と言うつもりはない。幅広くはなくても、専門性を身に付けて極めていくことにも価値はあるし、時間は有限なのだから優先順位をつける必要があり、何でもやれば良いというものでもない。
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「電話がワンコール以上鳴らないようにするにはどうするべきか」についての議論に参加した時のことだ。ある人はこう言っていた。
「これは、責任の所在が明確になっていないからこそ起こる問題だと思う。電話をとるのは誰の仕事なのかが決まっていないと、結局『とれる人がとろう』という話になってしまい、忙しくなると誰も電話をとらなくなってしまう。『新入社員の仕事』とか『一般職の仕事』というように、誰の仕事なのかを決めることで責任の所在が明確になり、誰もとらないということはなくなるのではないだろうか」
なるほど。その通りだと思い、私は頷いた。しかしこの直後、別の人がこう発言した。
「『誰の仕事か決めていない』のではなく『全員の仕事だと決めている』という考え方はできないだろうか」
これにはハッとした。たしかに、『電話をとるのは●●の仕事』と限定して決めてしまえば、“電話に出ない問題”は解決するだろう。
決めるだけだから、簡単と言えば簡単だ。一方、『全員の仕事と決める』のは、考え方は違うものの、実質的には『誰の仕事かは決めない』のと同じであり、“電話に出ない問題”が解決するかどうかは社員1人1人の意識の高さに左右されてしまう。
容易に解決するものではないが、後者の方がより仕事の本質に迫っているように感じた。
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仕事の範囲を決めることの賛否を論じるつもりはないが、仕事の範囲を決めると、責任の所在が明確になるという点には、多くの人が納得するだろう。
そのため、ある程度範囲を決めることは必要だ。「これは私がやる!」という気持ちが責任感にも繋がると思う。ただ、決めた範囲を固定化してしまうと、周囲の人にとって仕事がしづらい人になってしまったり、新しいことへの道が閉ざされてしまったりして、もったいないのではないかとも思う。
仕事の範囲は常に更新していきたいものだ。
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ではまた!
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名前: きゅうり(矢野 友理)←名前をクリックすると記事一覧が表示されます
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
著書「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
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