しんざきとしんざき奥様は、夕食の席などでしばしばよく分からない議論をするのですが、今日のテーマはタイトルのようなものでした。

つまり、「三匹の子豚の長男と次男救済計画」
皆さんよくご存知の通り、「三匹の子豚」はヨーロッパに古くから伝わる民間伝承で、その筋は大きく下記のようになります。

1.母豚の元から送り出された三匹の子豚が、それぞれ自活する為に家を建てる。

2.一匹目の子豚は藁で家を建てるが、狼に吹き飛ばされて食べられてしまう。

3.二匹目の子豚は木の枝(シダ)で家を建てるが、同じく狼に吹き飛ばされて食べられてしまう。

4.三匹目の子豚は煉瓦で家を建てる。狼は、煉瓦の家は吹き飛ばすことが出来ない

5.狼は、あの手この手で三匹目の子豚を誘い出して食べようとするが、毎回裏をかかれてしまう。

6.煙突から家に潜入しようとした狼は、子豚の罠で釜茹でにされてしまう。

近年の版では、5番のパートが省略されたり、一番目二番目の豚(以後、便宜的に「長男豚」「次男豚」と呼称します)が狼に食べられず逃げてくるだけで、結局誰も死ななかったりと、基本的にはマイルドな方向にアレンジされている傾向があるようです。

19世紀に出版された、当時のフルバージョンに近いと考えられる版は、以下から参照できます。ご興味あればどうぞ。

The Story of the Three Little Pigs
で。このお話が、それ自体「ヨーロッパにおける、石造建築の優越」を表している、というのはよく知られているお話だと思います。つまり、当時のヨーロッパ、特にこの童話が出版されたイギリスでは、「狼の吐息」で表されているように、強風・暴風こそが最大の脅威だった。特に4月から5月、イギリスで非常に強い局地風が吹く(現地ではgowk stormと呼ばれるそうです)ことは著名です。藁や木を建材にすることは、そもそも検討に値しないわけです。

そのような事情から、童話では長男豚と次男豚が一方的に割を食ってしまっている、というか食われてしまっておりますが、よく考えれば家の脅威は狼(=強風)だけではありません。最高気温が低く地震が少ないイギリスであればともかく、日本や他の国であれば、自ずから豚さんにとっての最適解は違っていた筈なのです。

早い話、狼が「強風・暴風」を擬したものだったのが問題なのであって、それ以外を擬したものだったら話はどうだったろうか、ということになるわけです。
この記事では、食べられ役になってしまっている長男豚・次男豚を救済することを目標に、彼らの選択のメリット・デメリットを検討してみます。
まずは、藁の家、木の家のそれぞれのメリットをみていってみましょう。

 

○藁の家のメリット

・コストが安く、建て替えが容易

・建材が軽く、地震時に危険が少ない

・風通しが良い

・建材に豊富な空気が含まれ、断熱性、遮音性が高い

→地震、猛暑、多湿気候などに強い!!

 

○木の家のメリット

・調湿効果が高い(湿度が高いと湿気を吸い、湿度が低いと湿気を吐き出す)

・藁ほどではないが地震時に押しつぶされる危険が少ない

・風通しが良い

・防虫・防ダニ効果がある

・いいにおい・手触りの良さなどでリラックス出来る

→同じく地震、猛暑、虫が多い地域、精神的にストレスが多い職業などに強い!!
まあ、元の童話ではシダの枝を使っているので、ちょっと上の話とは異なりますが、細かいことを気にしてはいけません。ここでは一般的な木材建築と考えることにします。

こうして考えると、藁の家にも木の家にも、それぞれ大きなメリットがあることがわかります。特に、日本は地震が多く湿度が高い気候ですので、両者のメリットが際立ちます。
例えば狼が「地震」を擬したものであったらどうか。

狼「おらーーぐらぐら揺らして押しつぶしちゃうぞーー。ぐらぐらーー」

長男豚「超軽い。無駄な努力乙」

次男豚「木材の自然な耐震構造最高」

三男豚「ぐええーーー(スプラッタ表現の為詳細を省略致します)」

こんな感じで、あからさまに長男次男だけ生き残ること請け合いです。
例えば狼が「多湿」を擬したものであったらどうか。

狼「おらーー湿気・結露などでじわじわいやがらせしちゃうぞーー。じめじめーー」

長男豚「藁の吸放湿性なめんなコラ」

次男豚「湿潤性気候に強すぎる木の家最高」

三男豚「ぐええーーー結露結露!!」

こんな感じで、あからさまに長男次男だけ生き残ること請け合いです。三男も死んではいないような気もしますが。
あるいは、狼が「都会の仕事上のストレス」を擬したものであったらどうか。
狼「おらーー長時間労働と残業・人間関係等のストレスで精神的に押しつぶしちゃうぞーー。ぱわはらー」

長男豚「建て替え容易過ぎ。ノマド(笑)」

次男豚「木の香りのリラックス効果で優雅な週末を実現」

三男豚「ぐええーーーー労働局!労働局!!」
こんな感じであからさまに長男次男だけ…あれ、三男も生き残ってますかね?まあいいや別に。
ということで、迫り来る脅威が「強風」でさえなければ、長男と次男にもワンチャン生き残りがあったという話です。地域によって自然に増えていくバリエーション。童話の柔軟性は素晴らしいですね。ああ、ジェイムズ・オーチャード・ハリウェル=フィリップスは讃うべきかな。
ただし木も藁も火事には弱い。建材ごと燃えていい感じに焼豚になること請け合いです。まあしょうがないね。あとシロアリだけは勘弁な。

 

ということで、どうでもいい結論でしたが、今日書きたいことはこれくらいです。

 

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【プロフィール】

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SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて
書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

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