電通での過労死が問題となっている。
皆の意見を聞くと、ブラックな職場で働いたことのない、幸運な人が結構いるようだ。
そこでいわゆる、ブラックな職場ではどんなことが起きているのか綴ってみたい。なお、ここでは1つの例として、ある営業会社を想定している。
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まず、無垢な新卒を雇うことから職場づくりは始まる。
今まで社会に出て働いたことがないということは、その状況にあまり疑問を持たないということだ。洗脳するためには非常に重要である。
入社した新卒は、まず厳しい新人研修プログラムに送り込まれる。研修は上司には絶対服従、会社の理念には百パーセント共感するのが当たり前、と刷り込むためのものだ。
少し生意気な社員は「自分はそんな洗脳など通用しない」と思っていても、残念ながら現実はその上を行く。
まず教官は肉体的に追い込む。寝不足にしたり、マラソンをさせたり、大声を出させたりする。そして疲労が蓄積された状態になると、人間は物事を上手く考えることができなくなる。
そして同時に精神的にも追い込む。例えば皆の前で罵倒するなど、思い切り恥をかかせる。あるいはなんども無意味な作業のやり直しをさせたり、恫喝を加えたり、経営理念を暗記させたり、試験をやってその順位を公表したりと、人の精神に負荷を与え続ける。
すると人間の心理的免疫システムが働き、達成した時の充実感が倍加する。いつの間にか、「研修の課題をクリアすること」が異常に気持ちよくなるのだ。
これは、ハーバード大の心理学者、ダニエル・ギルバートの研究が示す「 経験によって十分に不幸せになると、心理的免疫システムはもっと明るい見方を用意するために、事実を料理し、責任を転嫁する」に通じる。*1
人間は、精神的に追い込まれた状態になると、人は心を守るため「過剰なポジティブさ」を身につけるようになるのだ。
ブラック企業に在籍したときの事を過剰に懐かしむ傾向にある人がいるが、それは心理的バイアスがかかっている。あまりに辛い思いをすると、「クソすぎる体験」が美化されてしまう。
ともあれ、こうしたバイアスもあり、研修は一種の異様な高揚感のうちに終わる。
*1
さて、研修が終了したところで、つぎは新人の目標設定だ。
基本的に目標は上位2〜3割しか達成できないレベルに設定する。このような会社は、高い目標を掲げれば人は成長する、と信じているため、むしろ多くの人が達成できない、高い目標を掲げなければダメなのだと、経営陣が本気で信じている。
当然、絶対服従を強いられている新卒はそれに疑問を持たない。いや、持てない。一種の専横を受けている上、目標がどの程度厳しいのか、この時点ではわかるすべもないからだ。
こうして、仕事ははじまる。
基本的に新卒に与えられるのは新規開拓の仕事のみ。手段はテレアポと飛び込みだ。当たり前だが、数少ない引き合いと優良顧客の担当は、ベテランで受注率の高い人間のみの特権なのだ。したがって新卒には極めて労働集約的な仕事が割り当てられる。
また、彼らはそれ以外の仕事をすべてシャットアウトされる。「言い訳させない環境づくりが大事なんだ」と、経営陣とマネジャーは語る。
したがって新卒は「目標必達」をキーワードにし、ド新規の顧客を開拓すべく、ひたすら行動するように要求される。
「行動量が、質を生み出すんだ」という合言葉とともに。
彼らの朝は早い。「朝のミーティング」「朝礼」をこなしてから、9時ちょうどからテレアポを始めるため、彼らは7時30分にはすでに出社をしている。
「朝のミーティング」では、チームのマネジャーから昨日の行動に対する成果を聞かれる。テレアポの件数、アポイントを取った数、飛び込みの回数、集めた名刺の枚数などが逐一チェックされ、規定数に足りていない倍はマネジャーからの厳しい叱責を受ける。
1時間ほどのミーティングの後、8時30分から朝礼である。朝礼においては社長からのありがたい訓示が行われ、つづいて日時、週次の成績発表と表彰、つづいて経営理念の唱和が行われる。
9時、皆テレアポを一斉に始める。
お互いを監視しながら行うため、一瞬たりとも手を休めることはできない。彼らはテレアポの結果を記録しながら、必死に経営者にアポイントを取る。
なお、アポイントが取れる確率は大体100件に1件〜3件である。
そして朝、運良くアポが取れれば一安心だ。明日の朝、マネジャーから吊るし上げられることはない。
ここでアポ数が足りないと、夕方にもう一度テレアポに取り組まねばならないのだ。
彼はつかの間の休息を楽しんだ後、10時30分からのアポイントにいそいそと出かける。
彼らの受注率と目標の数からすると、1日に最低2〜3件はアポイントが入っていないと、目標達成は厳しい。当然の事ながら、アポが入っていないときは、テレアポをやり続ける。
この日はアポがたくさん入っている。自分のテレアポで獲得した10時30分、13時、15時、そして17時からの4件のアポをこなし、彼は18時ごろに帰社する。当然直帰は許されない。
帰社すると、早速18時30分から「夕礼」がある。その日の営業の内容を報告し、上司にアドバイスを貰うためのものである。
ここで上司は自分のチームの数字を確保するため、新卒に対するロールプレイや営業知識の勉強会、さらにはお客さんの攻め方などの作戦会議を開く。
昼間は重要な顧客を回らなければならないため、新人の教育はどうしても夜になってしまう。当然のように、チーム全員の発表が終わる頃には、すでに21時を回っている。
21時、もちろんまだ帰れない。ここからは明日の営業の準備と、今日回ったお客さんへの提案書などの資料作り、メールへの返信などが待っている。
もちろん社内の役割分担として、今度の合宿の計画も立てなければならない。暗澹たる気持ちになりながら、新人は仕事に取り掛かる。
24時30分、ようやくすべての仕事が終わる。もうヘトヘトだ。もちろんタクシー代や残業代は出ないので、終電に間に合うようにいそいそと帰宅する。
上司から「会社の近くに住め」と言われていたので、通勤時間は30分少々だが、終電は相変わらず混んでいる。
家に帰るともう1時を回っている、シャワーを浴び、目覚ましを6時30分にセットし、彼は4、5時間の眠りにつく。明日も、明後日も、1年後も、3年後もこのような生活が続くのだろうか……。
だが、この会社で成功しなければ、どこへ行っても同じだと上司は言う。がんばらなければ、がんばらなければ……やれるはずだ、じぶんならやれるはずだ……ああああああ。
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奥田 真輔 氏
システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、
メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。
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