「新しい働き方」がもてはやされているが、果たして「新しい働き方」とは一体どんな働き方を指すのだろうか。

「新しい働き方」と聞いて思い浮かべるのは副業、フリーランス、起業といったところだろう。

これら3つに共通することは、「会社に依存せず、個人の力で勝負せよ」というメッセージである。

「ごもっともだ」

「待ってました」

「やっと実力を発揮出来る時代が来た」

と思う強者もいるだろう。

 

ただ大半の人は

「恵まれた環境だから、そんなことが言えるんだ」

「頭ではわかっているけど、実際行動に移すのは無理だ」

「能力の高い一部の人間にしか、そんなことはできない」

と、不安と焦燥感にかられるのではないだろうか。

 

そもそも、なぜ私たちは新しい働き方を目指さなければいけなくなったのか。今までの働き方では、本当に生き残れないのだろうか。

 

時代の流れには逆らえない

ほんの数十年前、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代があった。高度経済成長を遂げる日本に世界からの関心が集まり、松下幸之助、本田宗一郎、井深大などの経営者が注目された。

多くの研究者が、彼らの経営手法を研究した。それはやがて、終身雇用や年功序列に代表される「日本型経営」と呼ばれるようになった。

日本型経営のもと、社員はまるで家族の一員のごとく受け入れられた。文字通り「仕事に就く」就職観を持つ欧米とは対照的に、日本では「会社に入る」ことが重視される。社員自身も、どこでも通用する職能より、特定のコミュニティにおける”メンバーシップ”を求めていた。

しかし、時代は変わった。

 

○もはや「社員は家族」は死語となりつつある

だが、今は「社員は家族」という経営者はほとんど居ない。いや、「居ない」というよりむしろ「できない」と言ってもよい。

環境変化が激しく、企業は「安定した事業」を創ることが難しくなっている。安定した事業がなければ、安定した雇用は存在しない。会社を生き延びさせることを優先するあまり、社員に多大な負荷を強いる会社もあるが、それは本末転倒というものだろう。

会社あっての個人ではなく、個人あっての会社、という流れはおそらく止めようがない。

かつては絶対的な原理原則として信じられた日本型経営も、現在では実行そのものが難しくなってしまった。

それでも本屋に行けば、未だに偉大な経営者の自叙伝はベストセラーとして平積みされている。この手の本は現実的な手引きというより、もはや古き良き昭和を回想する小説になっている。

 

どこも欲しがらない人になったら致命的

20代なら若さという武器を手に、無駄に不安がることも、焦ることもないのかもしれない。

30代ならどうだろう。若さだけでは通用しない世界がやっと見えてきたところだろうか。それでも、不安や焦りをまだ振り切れるだけの勢いが残っているかもしれない。

40代ならどうだろう。昭和を生きた先輩のやり方も通用しなければ、迫り来る若い世代の勢いにうまく乗ることも出来ない。経験や能力は誰よりもあるはずなのに、実は一番、絶望と希望の間を行き来している世代かもしれない。

 

「自分をマーケティングする技術」を磨かなくてはならない。

つい先日も何名かのリストラに合った方々のお話を聞く機会があった。全員40歳前後、給与も高くなってきており、「これから若い時の会社への奉仕を回収」と思っていた矢先の出来事だった。

だが、話を聞いていると気の毒だとは思いつつ、仕方のない部分もあるのだな、という印象も持つ。例えば、ある会社のリストラの基準は以下のようなものであった。

1.40歳以上

2.成績が下位30%

3.年収が600万円以上

4.不採算部門に在籍

(中略)

リストラの考え方は非常に単純だ。要は

・給料が高過ぎる、稼げない

・どこからも呼ばれない

の2つが、基準になっていることが圧倒的に多い。特に致命的なのが「どこも欲しがらない、呼ばれない」であるように感じる。

 

 

会社に依存しないで働く人は実在する

ここまで読んで、どう思うだろうか。

「随分働きにくい世の中になったな。」

あなたがもし、古き良き昭和の企業戦士をロールモデルとしているならば、その感想はおそらく正解である。

ホワイトカラーはすべてフリーランスのように働く。「フリーランス型社会」の到来

新しい稼ぎ方、仕事の仕方を模索している方々がいる。彼らに共通するのは、以下のような行動である。

1.企業ではたらく目的は、「経験をつける」ことと「人脈を作る」ことの2つとする

2.副業する

3.発信する

4.社外でプロジェクトを組む

(中略)

以上のこと考えると、これはある働き方に似ている。

それは「フリーランス」である。アメリカではすでに4人に1人がフリーランスとして働いているという。

組織内であっても外部であっても「成果」を求められることには変わりない。そして、自分を発信し、売り込み、様々な組織の人とプロジェクトを作る。

これは、サラリーマンがフリーランスのように働く、「フリーランス型社会」の到来である。

私たちが昭和の余韻に浸っているうちに、世界は刻々と変わっていたのだ。

 

新しい時代を、どう生きるのか。

みんながみんな新しい働き方を選ぶ必要はない。それが唯一の正解とも言っていない。

ただ、新しい時代の到来を事実として真摯に受け止め、変化に対応しながら生きている人が実際存在する。

要は「時代は変わった」という事実を、私たちがどう受け止めるのかという話である。新しい働き方がカッコいいとか、偉いとかの問題じゃない。生き方に対するスタンスの問題である。

 

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(photo by Fabrizio Lonzini