景気の良し悪しにかかわらずリストラをする会社が増えた。

不採算部門を切り捨て、企業同士の合従連衡によって企業の体質を強化する。そして余剰の「ムダな人員」をカットする。

終身雇用が全盛だった時代では、このリストラの一連の流れは世の中に反発と驚きをもって迎えられたが、現在は良い意味でも悪い意味でも、「普通の出来事」として捉えられている。

 

労働者の流動性が高く、3回、4回の転職は当たり前、という状況がすぐそこまで来ている。

IT業を見れば、その傾向は明らかである。他業界も大きな流れはIT業に従うだろう。一部を除き、誰もが何かしらのスペシャリストであることが求められる世界だ。

だが、自らの意志ではなく退職を選ばされた方々、すなわちリストラをされた方々のお話を聞くのは、そのような状態となった今でも結構厳しいものであると感じる。

 

つい先日も何名かのリストラに合った方々のお話を聞く機会があった。全員40歳前後、給与も高くなってきており、「これから若い時の会社への奉仕を回収」と思っていた矢先の出来事だった。

だが、話を聞いていると気の毒だとは思いつつ、仕方のない部分もあるのだな、という印象も持つ。例えば、ある会社のリストラの基準は以下のようなものであった。

 

1.40歳以上

2.成績が下位30%

3.年収が600万円以上

4.不採算部門に在籍

 

また、別の会社の基準は以下のようなものだった。

1.35歳以上

2.成績が下位20%

3.ここ3年で「チャレンジ目標」の達成なし

 

さらに別の会社では、

1.成績下位10%

2.他部門からの「欲しい」という声なし

 

リストラの考え方は非常に単純だ。要は

・給料が高過ぎる、稼げない

・どこからも呼ばれない

の2つが、基準になっていることが圧倒的に多い。特に致命的なのが「どこも欲しがらない、呼ばれない」であるように感じる。

これは、年齢や過去の実績にあまり関係がない。要は「これから、部門の業績を上げることにおいて、必要かどうか」「職場の雰囲気を良くするかどうか」という2つの基準で判断されるということだ。

過去の実績は、その参考情報にすぎない。

 

ある大手企業の人事の方は言った。

「いま、会社は好業績であっても役に立たない人物を極力排除したがっているのは間違いない。そして、リストラ対象かどうかは、運の要素もあるが、大抵は皆、必然だとわかっている。お荷物・あの人と働きたくない、と言われたらだいたい終わりだ。そういう人は、20代、30代にも居て、彼らはリストラ予備軍だ。」

 

かつて企業は年功制により、若い時は給与を安く、ベテランになってから報いる、という約束をしているように見えた。が、その約束はすでに幻だ。

どこにいても「お呼びがかかる人物」を目指すため、自分自身の価値を高めるだけではなく、「自分のやっていることを発信する人物」でなければ、ダメなのだ。

いわば、「自分をマーケティングする技術」を磨いた人物が生き残ると言えるのかもしれない。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (最新記事をフォローできます)

 

(Photo:bowenmurphy)