「社員は家族」という経営が、少し前までは普通に存在していた。日本型経営の特徴は、会社は社員の生活を保証し終身雇用をする。逆に社員は会社に忠誠を尽くし、会社の命令には服従する、というものであった。

だが、今は「社員は家族」という経営者はほとんど居ない。いや、「居ない」というよりむしろ「できない」と言ってもよい。

環境変化が激しく、企業は「安定した事業」を創ることが難しくなっている。安定した事業がなければ、安定した雇用は存在しない。会社を生き延びさせることを優先するあまり、社員に多大な負荷を強いる会社もあるが、それは本末転倒というものだろう。

会社あっての個人ではなく、個人あっての会社、という流れはおそらく止めようがない。

 

 

一方で、リクルートが上限日数のない在宅勤務制度を開始した。

リクルート、在宅勤務を全社員対象に 上限日数なく 

リクルートホールディングス(HD)は10月から上限日数のない在宅勤務制度を導入する。全社員が対象で、子育てや介護といった理由がなくても利用できる。一部のグループ会社にも適用し、まず約2000人を対象とする。

(日本経済新聞)

この内部を知る方のお話では、「この副次的な効果として、副業を行う人が増えた」とのことだ。社員に自由を認めれば、当然の成り行きといえよう。

むしろ副業を社員に行ってもらうことで、収入、人脈、など様々な面で良い効果が期待できる。だが、そこに「社員は家族」の発想は微塵もない。

 

 

よく考えれば、いや、よく考えなくても家族と会社は異なる。

・家族は存続(生存)していれば良いが、会社は存続しているだけではダメで、成果が必要である

・家族の中において、生産性は問われないが、(生産性が低いからといって、赤ん坊や病気の家族、老人を切り捨てたりはしない)会社は生産性こそが重視される

・家族を辞めることは難しいが、会社は簡単に辞められる。

・家族は愛情や血縁を基板とするが(愛情も血縁もない家族は珍しい)、会社は成果を出す能力がベースとなる(成果を挙げられず、努力もしないのであれば、放逐される)

・家族は運命共同体だが、会社は運命共同体ではなく、一種のプロジェクトである

 

 

そもそも、人類が科学技術や高度な生産手段を手に入れることができたのは、「家族」という単位を超え、契約やルールにより構成員の利害調整を図ることができるようになったためだ。

 

「社員は家族」ということは聞こえは良いが、残念ながら実際は「制度やルールなどが未熟である」ということの現れにすぎないのかもしれない。

 

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