a0003_001083食品の誤表示、虚偽表示のニュースが極めて多い。

 

 

ほとんど業界総ナメの状態だ。おそらくこれらも氷山の一角であり、まだまだ発覚していない誤表示、虚偽表示が数多くあるのだろう。

「企業のモラルが低い」と言ってしまえばそれまでなのだが、もう少し考察してみる。

 

 

まず明らかなのが、「おそらくこの事実をほとんどの会社が既に知っていたにちがいない」ということだ。

リッツカールトンの件が表沙汰になった瞬間、多くの会社が「調査結果を報告し、誤表示、虚偽表示が合ったことをほとんど同時に認めた」という状態はかなり不自然である。本来ならば調査には長期間かかるのが普通であるし、「同時に」発表が成されるのもおかしい。

曲がった見方かも知れないが、「この機に乗じて」一気に膿を出してしまおう、という意図が合ったと思われても仕方ない。

 

そして、この件でふと思いだしたのが「回転寿司」の件だ。

おいしいね!回転寿司で大活躍の偽装魚まとめ

回転寿司では、低価格を実現するために「代用魚」という名前で表示とは異なった魚が数多く使われている。これは、半ば公然の秘密と言った具合だが、今回の件を機に、飛び火する可能性もある。

 

だが、回転寿司はそこまで糾弾されないかもしれない。

「やすいモノは訳ありだ」という一般の認識があるため、代用魚だったとしても

「ウマけりゃいいじゃん」という一言で済まされてしまうからだ。

 

これに対して「ホテル」や「百貨店」はいわゆる「ブランド」を販売する業態であり、「ウマけりゃいいじゃん」というモノではない。

「味のちがい」など、よっぽど美食を食べなれた人でなければ判別は難しいのかもしれないが、「味がわかろうと、わからなかろうと、ブランドものを食べている」という満足感も販売していたのであるから、これは罪が大きい。

 

 

この手の「買い手と売り手の情報格差」が大きい市場を、経済学では「レモンの市場」という。金融や不動産、中古車のなどの市場も、これに当たる。

レモンの市場は以下の様な点で問題である。

 

”レモン市場では、売り手は取引する財の品質をよく知っているが、買い手は財を購入するまでその財の品質を知ることはできない

情報の非対称性が存在する)。そのため、売り手は買い手の無知につけ込んで、悪質な財(レモン)を良質な財と称して販売する危険性が発生するため、

買い手は良質な財を購入したがらなくなり、結果的に市場に出回る財はレモンばかりになってしまうという問題が発生する”

 

だから、各社とも多分、あまり反省していないだろう。しかし、規制がない状態では、市場全体が衰退し、結局は安物のみが流通する状態となる。

市場の信頼性を高めるためには金融や不動産のように、厳しい規制をかけるか、もしくは中古車の「ガリバー」のように、市場が情報をオープンにするしくみが必要だ。

 

具体的には魚介であれば築地などの市場が品質保証書を発行する、というのも有りかもしれない。ただ、そうすれば食品を購入するためのコストは当然上がる。日常的に購入する食品などの低価格物品に対してそのようなムダなコストを掛けるのは勿体無い。

実際には「一食◯万円を超える価格帯の食事を提供をする際には、「保証書」の提示を行うことを認める。ただしこれは任意である」と言った具合になる?かもしれない。

 

そんな市場が理想なのか、と言われれば、当然答えはノーだ。

誤表示や虚偽表示は、市場を滅ぼす。

 

だが、このような状況を生み出した食品、外食、ホテル業界が過当競争であることは否めない。

「良い物を安く」を追求し過ぎれば、結局そのツケは消費者が支払うことになる。「完全自由市場」と「競争」は必ずしも「高品質」や「消費者の利益」とはならないのだ。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)