「部下は年下」

そんな常識は年功序列とともに崩れ去った。

そのためか、最近では「年上の部下に苦労してます」というつぶやきが多く聞かれる。

 

そんなことはない、実体は昔からそうだった、という指摘があるかもしれない。

企業においては、結局最後は、「できる人」が上に行く。ゴマすりだけで出世できるほど会社は甘くないし、会社の人事評価はほとんどの場合に正確だ。

 

もしかしたら今は「年功序列」が減ったことにより、地位と年齢お上下逆転が顕在化されやすくなっているのだろう。

 

例えば、知人の勤めるある大手企業では、変革を求める経営陣が人事評価制度を変更したことに伴い、抜擢人事が増え、いたるところで年齢の逆転現象が起きている。

40歳の課長の下に、40代後半のメンバーがいる。

25才のリーダーの下に、30代後半のメンバーがいる。

そんなことが当たり前になりつつある。

また、別の知人が勤めるシステム開発会社においては、30代半ばで役員となった若手が、多数の40代を抱える部門を従え、会社を切り盛りしていると言う。

 

だが、予想通り、それとともに軋轢も生じている。例えば、

・つい最近まで親しくしていた先輩が、豹変して冷たい態度をとるようになる。

・気さくに話しかけてくれていた先輩が、突然敬語になった。

といったライトな事象から、

 

・同じ部署の仲間に、「アイツは調子に乗っている」という風評を流す

・「昇進した瞬間、◯◯さんは高圧的になった」と触れ回る

といった上司への信頼を下げる工作をする輩もいる。

 

果ては、極端な行動に出る人物もいる。

・こんな会社辞めたほうがいい、と新人に吹き込む

・頼んだ仕事をやらない

実害のある行為に至ることもあり、困っている上司も多いことだろう。

 

言うまでもなく、これらは嫉妬から出た行動である。

特に「自分のほうが能力が上であるにも関わらず、報われていない」と思い込んでいる人物の嫉妬は、「できる人」にとっては非常に厄介だ。

本質的には「若い人に嫉妬する程度の人物である」と皆に見抜かれているから人の上に立つことができないのであるが、自分自身を客観的に見ることは極めて難しいため、抜き差しならない状況に陥ってしまっている。

 

だが「嫉妬」を避けて通ることはできない。

ドラッカーの言うように、「つまるところ、大勢いるのは普通の人である」は正しい。高い能力をもつ人物は「普通の人」から大いに嫉妬される。

カエサルはブルータスに、モーツアルトはサリエリに、ゴッホはゴーギャンに、村上春樹は安原顯に嫉妬された。人が集まれば嫉妬が発生する。これは人間性の本質である。

 

哲学者の中島義道は、次のように述べている*1

もともと自分により多く与えられていたものが、逆転して自分に近いものにより多く与えられるとき、嫉妬は最高潮に達する。例えばクラスにおける人気や学力において、自分がこれまで上位であったのに、ある時を境により下位であったものにとって代わられるとき、その者に強烈な嫉妬を感じる。

同じ大学において、自分よりはるかに学力が低く業績の少ない者が先に教授に昇進するとき、その者に対する嫉妬は噴出するのです。

したがって、若くして組織を束ねる人物は、「嫉妬のマネージメント」に長けていなければならない。組織に対する悪影響を出来る限り避けなければならない。

 

まず、このような場合に上に立つ人物が絶対にやってはいけないのが、「自分は対等だと思っている」と言ってしまうことだ。

実際には対等を演じようとしても、火に油を注ぐだけとなる。

彼は上司の「憐れみ」に気づき、ますます上司を憎むだろう。したがって「話し合い」は、最もマズい対処法となる。

 

では嫉妬への対処はどうあるべきか。

まず重要なこととして「人の感情をコントロールするのは不可能」であることを前提として認識することから始める。人の感情は人のものであり、一種の妄想である。

妄想を外部が扱うことは不可能だ。

したがって我々が可能とできるのは、次の3つである。

 

1.時間が解決すると確信すること

怒りや憎悪、嫉妬など、負の感情はそれを持ち続けることは非常に大きなエネルギーを使う。自分の身になってみれば、非常に嫌いだった誰かも、数年も経てばすっかりどうでも良い存在になったという経験があるだろう。

彼が自分に対して嫉妬するのも、多くの場合は時間が解決する。

 

2.成果をあげること

成果をあげることが唯一、あなたが人を束ねる立場にあることの根拠である。うまくいかないこともあるだろう。しかしそれを下のせいにすることはできない。その行為は「嫉妬」の正当性を強化するだけとなる。

逆に、成果をあげ続けることで、嫉妬は気にならなくなる。

「あんなことを今までなぜ気にしていたのだろう」と、不思議に思うだろう。

 

3.真摯な行動をとること

嫉妬を解決しようとしてはならない。前提で述べたように、人の感情は解決不可能である。

しかし「新人に辞めるようそそのかす」などの実害に対しては断固として対処することができる。その際、結局はまわりの人物はあなたと彼の「人間性」の比較でどちらに理があるかを判断するだろう。

そして、人間性の判断基準は普段の行動が真摯であるかどうかにかかってる。

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
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(2025/6/2更新)

 

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*1

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