こんにちは。翔栄クリエイトの河口です。
数年前、業績を向上させる狙いで米ヤフーのCEO、マリッサ・メイヤー氏は在宅勤務を禁止し、会社に社員を集めました。
最近では、IBMがオフィスに社員を集めたことなどが報じられていますが、「フェイス・トゥー・フェイスでの社内コミュニケーションを活性化する」ことで、新しいアイデアの創出や、会社の一体感を演出しようとする会社もまた多いのは事実です。
そこで今回は「社内コミュニケーションを活性化する」ことを意図した会社の事例を取り上げてみたいと思います。
事例:株式会社プラウ21
株式会社プラウ21様は小中高の模試問題等を作成している「教育」の分野に特化した会社です。
(株式会社プラウトゥーワン 代表取締役 白石健一郎様)
17年前に友人同士3人で起業して以来、今ではスタッフは常時40人ほどが勤務する、右肩上がりとなっています。
しかし「右肩上がり」は、マネジメント上の課題も生みます。
例えば、中学受験向けの模試を作成するとしましょう。
模試は各教科の専門家が作ります。国語なら国語の担当、理科なら理科の担当というように、学校の5教科に合わせて、各教科の専門家チームがいるのです。
そして、経営者が「コミュニケーションが足りないかな……」と感じたのは、まさにその模試制作の現場でした。
もともと、プラウ21様は友人同士で起業した会社です。
したがって、初期の頃は誰がどんなことをやっているかは、常に全員がほとんど把握していた、と白石社長は言います。
しかしスタッフが増えるにつれ、組織化は進みます。
ある時からは各教科ごとに専門のスタッフを置き、いわば縦割りの組織になっていったのです。それはもちろん効率的ではありましたが、代償として「横のつながり」は若干、薄くなりました。
例えば、以下のような事象が現れました。
・教科をまたぐコミュニケーションが少なめ
・飲み会の座席を幹事が決めないと、いつも同じ人で固まってしまう
・黙々と仕事をする
・先輩等詳しい人に相談することが少ない
それでも白石社長は「各教科共通している事が多く、お互い相談した方が絶対効率的。コミュニケーションを増やさないと……」と考えていました。
そんな時にちょうど我々はプラウ21様のオフィスをご訪問しました。
私はつい、いつものクセで、オフィスの状況をよく見てしまいますので、分散されているキャビネットや、テーブルの配置等を見ました。
そこでこれって、並び替えるだけで、がらっと変わるかも・・・と思ったわけです。
そして、会議室に戻り、白石社長に、
「コミュニケーションって、図れてますか? 御社って、個々にノウハウが蓄積されていくお仕事だと思うので、 コミュニケーションって結構大事なポイントになりますよね~」
といった話を何気なくしたところ、 白石社長が、「そうです!そうです!」となり、 そこからプロジェクトが始まっていったのです。
こちらは、以前のオフィスです。
よく整理された、綺麗なオフィスです。
コミュニケーションというのは、「人」が「人」に惹かれて、自然にできあがっていくのが理想的と考えます。
そうなる為には、その基となる「コミュニケーションの種」が必要になってきます。
しかし、元のオフィスの動線を見ると、入り口からワークスペースまでの間に、「社員が接点を持てる可能性がある場所」は2箇所、しかも1〜2人ほどのスペースしかないことがわかります。
この環境下、強制的にコミュニケーションを取るよう指示を出したとしても、しばらくはコミュニケーションを取る努力をするが定着せず、もとの状態に戻ってしまう事が想定されます。
そこで「無理なく、人が集まるようにするにはどうすべきか」について検討した結果、完成したのが以下のスペースです。
まずは、コミュニケーションが生まれやすいベースの形を創ります。
①動線を中央に持ってきます。(赤矢印)
②分散していた書棚を整理し(書棚1本減)入り口付近に綺麗に配置。(緑枠)
③パーティションに囲まれていたミーティングブースを、スペース効率を良くする為に、2つのオープンブースへ変更。(青枠)
④個室壁面側に、ドリンクスイーツコーナーを設け、ハイテーブル・ホワイトボードを設置。(黄枠)
これにより、外出・お手洗・来客対応時等に通る中央動線と、 書棚・ミーティング・ドリンクスイーツコーナー等の各ゾーンが接している事から、 社員同士の接点が大きく増える事が分かると思います。
そして、ドリンクスイーツコーナーのハイテーブルに集まっている方々と、 中央動線を通る方々との、自然な挨拶から「このお菓子美味しかったですよ~」等の会話が生まれ、あらたに立ち止まる方が増えたり、 また、そこから隣接するミーティングスペースも巻き込んだ会話に発展していく可能性がある等、コミュニケーションの輪が広がっていく事が想定されます。
このレイアウトを見ると、コーヒースイーツコーナーの“ハイテーブル”が、“鍵”になっている事が分かると思います。
しかし・・・ 残念ながら、これだけでは、コミュニケーションが活性化する事はあまり期待できません。
それは、肝心なハイテーブルが機能しない可能性が高い為です。 このまま実践すると、どうなるか・・・ まず、ハイテーブルに、人が集まらないでしょう。 用も無いのにハイテーブル前に立って一人でコーヒーを飲む人は、あまりいないからです。
普通は、コーヒーを入れて自席に戻ってしまいます。 では、このハイテーブルを機能させる為にどうしたのか!!
ドリンクスイーツコーナーに設置されているホワイトボード。
もし、ここに、おっ!と、心惹かれるような魅力的な情報且つ、いつも新しい情報が書き込まれていたらどうでしょう。
そうすると、ホワイトボードを見ながら、ハイカウンターに立ち止まり、コーヒーを飲んだり御菓子を食べたりする可能性が出てきます。
立ち止まってさえくれれば、先ほどの流れでコミュニケーションは広がっていきます。 “魅力ある情報満載のホワイトボード”が、この場合の “コミュニケーションの種”となる訳です。
何が”種”となり、それが何を動かし、どのように発展していくのかを、ロジカルに考えないとコミュニケーションは活性化していきません。
ようは、 “種”が無いと“芽”も出ないという事です。
そこで、私は白石社長にお伝えしました。
「魅力的なホワイトボード運用ができるのであれば、コミュニケーションが生まれていくと思うので、 リノベーションの投資価値も高く、また社風がどんどん変わっていく可能性があります。
また、ホワイトボードが魅力あるものにできなさそうでしたら、今回のリノベーションは辞めたほうが良いです。 」
結果、白石社長に、やってみます!とおっしゃって頂きました。
さて、その後暫くの運用を経て変化が起きました。
白石社長は「このホワイトボード自由に書き込んで良いよ」程度しか指示を 出していなかったのですが、一ヵ月後には下記のような、書き込みが自然に始まったそうです。
3ヵ月後には下記のような社員発信の魅力ある掲示板となり、フレッシュな会社の状況が書き込まれるようになりました。
その結果、 ハイテーブルに自然と社員が集まるようになり、自主的に定例飲み会の企画し始めたり、決まった時間にスタンディングテーブルに集まろうという企画が生まれたりしてくるようになったのです。
また、ホワイトボードにて“帰宅部募集”という、仕事の生産性を上げて、皆で早く帰りましょうという動きも出始ました。
元の社風からは大きく変わり、活性化のみならず自主的に進んでコミュニケーションをとるという社風に変わりました。
プラウ21様にはもともと「社員同士の交流」に必要な十分なポテンシャルは存在していたように思います。
ですが、今回はこの「場」を創ることを一つのきっかけとして、それが花開いたのだと感じます。
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私は長い間「オフィス空間創り」のプロフェッショナルとして仕事をしてきました。
その経験の中で言える重要なことの1つとして、
「コミュニケーションのベースが無い会社は、コミュニケーションの種を見つける事から始める必要がある」があります。
幼稚園であればここに滑り台を置けば園児は集まるだろうと、比較的想定しやすいと思いますが、 働いていらっしゃる方は皆大人で、それぞれ人格を持っており、人間関係も既にできています。
したがって、それぞれが、その会社の社風の中で行動しておりますので、 セオリー通りに、コミュニケーション用のテーブルを設置したり、内装工事をすれば、コミュニケーションが生まれるという簡単なものでは無いという事です。
そこで働いている方々に合った、その社風・シチュエーションに合った、 コミュニケーションの種を見つけだし、それを育てる“空間”と“運用”が揃う事で、はじめて自然なコミュニケーションが生まれていくと考えています。
コニュニケーションの本質を捉えて、社員同士が自然にコミュニケーションを図れる場を作る、と言うのが私の中で「オフィス創造」というものの根幹をなしているのです。
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