もし今、自分が「人生がそれほどうまく行っていない」と思うなら、人の話をよく聞くだけで、人生は好転するよ。
そのように、ある先生に教わった。
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先日、昔の仲間と共に、件の先生に会う機会があった。
久しぶりの再会であったので、積もる話に花が咲いた。
しかし、前に会ったときから10年以上が経っていると、人生は悲喜こもごもである。
金持ちになった人間、
子供が非行に走った人間、
離婚した人間
起業した人間
会社を潰してサラリーマンに戻った人間
裁判で係争中の人間
また、前回あったときには出世コースに乗ったと意気揚々としていたが、今は役職を追われ、落ちぶれてしまった者
離婚の調停のさなかで落ち込んでいたが、今は再婚して子供もでき、楽しそうに家族の話をしている者、
大切な人を亡くした者
……
うまくいっていると自認している人間は、自信満々で話す一方で、本当にうまく行っていない者は、顔を出す気にもなれないのかもしれない。
人生の残酷さ、不思議さを感じずにはいられない。
しかし一方で、先生は昔から一貫している。何があっても「人との関わり方」が真剣であれば、人生はうまくいくと、彼はいう。
心理学者のアルフレッド・アドラーは、
「仕事も、家族も、友人関係も、悩みは全て人間関係から出ずる」*1
と述べたが、先生もそれに近いことを考えていたのかもしれない。
もちろんそれを聞けば、
「それでは、人間関係を良好に保ち、よい友人を得るにはどうしたら良いのでしょう」
と聞きたくなるだろう。
そして、いつも
「もちろん、人の話をよく聞くことによって。」
と、先生はいう。
ところが先日は
「先生はいつも話を聞け、といいますけど、ちゃんと聞いてますよ。」
と友人の一人がいい返した。
すると先生は彼の方を見ていった。
「君は、人の話を「よく」聴くということがどういうことなのか、きちんと理解しているかね。「よく聞く」と「聞く」は、違う。」
皆の顔に?のマークが現れる。
誰かが言った。
「傾聴しろということですか?」
「傾聴ではない。傾聴は「聴いているだけ」だ。「よく聞く」とは異なる。」
「……」
「よく聞く、とは2つのことを含んでいる。一つ、相手の尊敬できるところを見つけること。相手の良いところは本当に一生懸命探さなければ、決して見つからない。見つかるまで相手の話を聞いているかね?」
先生は続ける。
「二つ目は、相手の気持ちに「なる」ことだ。相手の話を理解するのではない。話を聞いて、わかったと思うだけでは「よく聞いた」ことにはならない。相手と同じ気持ちに「なる」事ができるまで聞くのが、「よく聞く」だ。」
一人が言った。
「先生、人の話を聞いて、「相手の良いところを見つけましょう」「相手の気持になりましょう」という話だけで人生がうまくいくってのはちょっとオーバーじゃないですかね」
「なぜそう思うのかね」
「現実的な話をすれば、人生を好転させたい人は、お金とか、仕事とか、チャンスなどを求めているのではないかと………」
先生は言った。
「私が言っているのは、金持ちになる方法ではない。お金では人生は好転しない。」
「では、何ですか?」
「人生が好転する、というのは「良い人と関わることができるようになる」ことだ。これは普遍の真理だ。つまり、私が言っているのは、よき人を得るための方法だ。」
「それが先程の話?」
「そうだ。君が目の前の人の「良い所」を知っている人は、尊敬できるだろう。」
「まあ、そうです。」
「目の前の相手の気持になることができれば、共感し合えるだろう。」
「ええ。」
「では、話をよく聞くのは重要ではないだろうか。」
そして、先生は笑っていった。
「人と話をし、そこから友人を得るか、敵をつくるか、それとも赤の他人として無視するかは、君の選択次第だ。」
先生、と一人が手を挙げた。
「人生に絶望しかけたときに、本当に「人の話を聞く」だけで人生が好転するのでしょうか?」
先生は即答しなかったが、やがて言った。
「世の中には解決できないこともある。しかし、真の意味での充足感は、人との関わりの中にしか存在しないということは言えるだろう。だから、人の話をよく聞けない人物は、一生満たされることはない。」
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知人がこんなことを言っていた。
「本当に良いものは、マーケットの中に存在しない。本当に価値あるものは、自分を高めることでしか手に入らない。」
その一つの現われが、「人の話をよく聞けるか」なのだろう。
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