最近知ったものの中で興味深いものにタカハトゲームというものがある。
もっともシンプルなタカハトゲームでは、共有資源を分割する方法として2人のプレイヤーはそれぞれ2種類の戦略から1つを選択することができる。
双方は攻撃的なタカとして振舞うか、温和なハトとして振舞うかを決定する。まず二人のプレイヤーそれぞれが求めている資源(食料、配偶相手など)を同時に見つけたと仮定する。
もし双方のプレイヤーがタカ戦略を選択した場合、資源を奪うために戦い傷つくために双方の点数はマイナスである。
一方がタカ戦略を選択し、もう一方がハト戦略を選択した場合、タカ戦略が資源を独占するが、ハトは速やかに逃げ出すために何も失わない。
双方のプレイヤーがハト戦略を選択した場合、しばらく威嚇しあった後に資源を対等に分け合うと仮定する。ここでの利得は適応度、すなわち生存と繁殖成功度によって計られる。(引用:Wikipedia)
このゲームの原理は様々なところで働いている。
例えば第二次世界大戦は先進国が強いタカであり、発展途上国が弱いハトであった。それ故に発展途上国は植民地として支配されるという憂き目にあった。
これはタカからすれば、ハトを攻撃した方がメリットが高いからこそ生じた現象だ。しかしその後、だんだんと世界は争いに疲れ、またハトも他の国と手を組みより強い力を身につけるなどをするようになり、段々と力を身につけるようになってきた。
そして現状ではハトのしっぺ返しの威力がそれなりに高まったが故に、タカとしての先進国は武力でハトを殴りつけるという事は少なくなっていった。
それ故に、いま現在はどこの世界もそれなりに平和である。まあ平和じゃない国もあるけども、それでも今現在は第二次世界大戦の頃と比べればかなり平和になっている。
私達の社会にもタカハトゲームが沢山隠れている
このタカハトゲームだけど、探してみると私達の日常社会にも非常に多くのものが紛れ込んでいる。
例えば学校でのイジメ。これはイジメっ子がタカであり、いじめられっ子がハトと考えればイジメがおきる構図についてが非常に理解しやすい。
多くの場合において、学校空間という場所は外部からの圧力がかからない。そうなれば、イジメっ子(タカ)はいじめられっ子(ハト)を攻撃しても何のデメリットも起きない。
子ども達だけでイジメを解決するのが不可能だというのは、これで簡単にわかるだろう。
だから本当にいじめ問題を解決したいのならば、取りうる選択肢は2つしか無い。1つはイジメがおきたら、警察を学校内に介入させてイジメっ子(タカ)に容赦なく犯罪者としての烙印を押せるようにする事だ。
これならイジメっ子(タカ)はハトと共存する方がメリットが高くなるので、結果としてはイジメの数は著減する事が予期される。
もう一つは学校側が、イジメっ子(タカ)を退学させるという選択肢を容赦なく突きつける事を行える環境をつくる事だ。
退学も基本的には結構大きいペナルティなので、これもイジメっ子(タカ)はハトと共存する事を選ぶ場合が多いだろう。
実際、私立はこの選択肢を決断する事も結構あるので、公立よりもイジメはだいぶ少ないという話もある。
なおこの2つの現象が望みにくいのならば、ハトが転校するという選択肢が最もよい。状況を変えない限り、タカからハトの攻撃が止むことは基本的にはない。
他にも会社でのパワハラ、セクハラ、もタカハトゲームの良い例だ。
会社でのパワハラは教育的指導という風になれば、それはやっても何の問題にもならない。それならば、厳しい上司(タカ)は部下(ハト)を容赦なく攻撃するだろう。
だってそのほうがタカにとってメリットが大きいのだから。解決方法も、イジメであげた方法がそのまま使える。
家庭でのDVもタカハトゲームの構図がそのまま当てはまる。家族空間は、ほとんどの場合において誰も裁く人がいない独立した空間だ。それならばタカはハトを攻撃しないはずがないのである。
国家への信頼が高まる不思議
「長時間労働は法律違反だから取り締まれ」
こういう意見が最近、凄く多い。たぶんみんなも似たような思いを持っているのではないだろうか?
しかし考えてみると、これは非常に不思議な現象なのである。
かつての第二次世界大戦の頃、日本は神の国を自称し、天皇陛下をTOPに添えて壮大に国粋主義を掲げていた。
そうして国家に権力が集中していたのが1900年台前後の頃である。その後、日本は戦争に負け、ポツダム宣言を受け入れた後に、今度は国家による取り締まりをかなり嫌がり、自由経済を社会の中に取り入れるようになった。
学校でも会社でも、国の影響を受ける事を極端に嫌ったのが、終戦後~最近までの風潮だったのだ。
今でも、学校で君が代が流れるだけで凄く嫌そうな顔をする人がいるし、仮に自分の会社で社長が「大日本帝国を讃えよう」とかいい始めたら、不快に思う人の数はかなりいるだろう。
そうして学校空間とか会社空間とか家族空間が政府から離れて自由な存在になった結果、生まれ落ちたのがイジメやブラック企業なのである。
私的空間内に、刑事罰という国家による介入がなされなければ、タカはハトを攻撃するようになるのは当然のことなのだ。
だからイジメやブラック企業というのは、ある意味では日本国民が国粋主義を憎んだが故に生まれた鬼子のようなものなのである。これ、実に興味深い話ではないだろうか?
最近の日本が右翼に傾いているのは、当然の流れ
そうしてその鬼子をみたハト達は、だんだんとタカを恐れるようになり、結果として国に頼るようになってきた。
ここまで読んだ後にまた考えてみてほしいのだけど「長時間労働は法律違反だから取り締まれ。」という発言、これって凄く面白い発言だとは思わないだろうか?
いまの国民は、学校で君が代が流れる事を嫌うような一方で、国による私企業による取り締まりはアリだと考えているのである。
かつてあんなにも国が企業や市政の人々に絡むことを嫌がったというのに、今度はむしろ逆に国に積極的に企業やその他もろもろに絡んで欲しいというようになったというのは、驚愕すべき事実である。
たぶんだけどこのこの流れは日本だけの現象ではない。トランプ現象や、イギリスのEU脱退などと世界的にも右翼的な政策が大人気だけど、これはグローバリゼーションとネオリベラリズムにより自由経済が史上とされ、グローバル大企業があまりにも力を持った事に対する、反動のような現象なのだ。
今後、世界が更に右側に流れるか、また左側に戻るのかはわからない。そういう事は置いといても、タカハトゲームの視点で世の中を眺めるのは非常に面白いので、みなさんも是非いろんな物事を分析してみて欲しい。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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【プロフィール】
都内で勤務医としてまったり生活中。
趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。
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(Photo:Jeff Power)