新卒で会社に入ったとき、多くの人は「仕事ができるようになりたい」という願望を持ったはずです。
それがいつの間にか、半年、2年、3年、10年と経つうちに、「とりあえず日々の仕事をこなせればいいや」と思うようになってしまうことがあります。
わたしもそういうときがありました。
では、いったいなぜ、そしていつから「仕事ができるようになりたい」という願望が消えてしまうのでしょう。
それはおそらく、仕事で何度も「壁」にぶつかり、大きな無力感を感じたからではないでしょうか。
あるいは、上司の理不尽な命令に怒りとあきらめを感じたからかもしれません。
いずれにせよ
「もう、この状況は自分には変えられない、どうしようもない、大過なくやり過ごすことが一番だ」
と思ったとき、「仕事ができるようになりたい」という願望も霧散してしまうのです。
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しかし世の中には、そうした壁を乗り越えて「仕事ができるようになった人」もまた、存在します。
彼らはどうして壁を乗り越え、理不尽を克服したのでしょうか。
単純です。
それらの壁や理不尽を乗り越える方法を、教えてくれる人が身近にいたからです。
彼らを「恩師」と呼んでも良いかもしれません。
「恩師」の多くは、彼ら自身が、身をもって学んできた方法を、自分の部下や後輩に分かりやすく伝える力を持った人たちです。
あるいは、体を張って私達の失敗の責任を取ってくれた人たちです。
実際、わたしにもそうした人たちがいて、コンサルティングの仕事で困難にぶつかった時、上手くそれを解決したり、時には回避したりする方法を教えてくれました。
しかし、問題もあります。
それらはたいていの場合、明文化されていない「暗黙知」であるため、その人の教えられる範囲でしか、問題解決ができないのです。
したがって、「恩師」を持つことができた幸運な人は「仕事ができる人」になりますが、そうでない不運な人は「仕事なんてどうでもいいや」とあきらめてしまう。
仕事ができる/できないの分かれ目は、結局「運しだい」と言っても良いのかもしれません。
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しかしそれはあまりに、人材の活用という観点から見て、もったいないことです。
そこで私は、コンサルティング会社を辞め、起業した時に、それまで学んだことを、できるだけ文章化し、論理的にかつ実践的に「形式知」となるようにブログにすることにしました。
それが、私が運営するメディアである、Books&Appsの生い立ちです。
そして2015年。
もう8年も前のことになります。
私は日本実業出版の編集の川上さんからお声がけいただき、Books&Appsの内容を書籍にして、出版することになりました。
そのタイトルは、『「仕事ができるやつ」になる最短の道』。
毎日書いてきた記事に、加筆修正を加え、編集を施して1冊の本にしたものでした。
コンサルティング会社では、会社の指示によっていくつかの本を書いたり、雑誌へ寄稿もしていました。
しかし、独立してから初の著書という事もあり、この本に書いたことは今でも、特別な思い入れがあります。
上述したように、それまで私がコンサルティング会社で上司や先輩から習ってきた「仕事の方法」は、きわめて小さな範囲で共有されてきたものでしたが、その方法が「著作物」として、広く世の中にいきわたることになったからです。
今でこそ「コンサルタント」は人気の職業であると聞きます。
しかし、私が籍をおいていたころのコンサルティング会社は、
・長時間労働
・成果主義
・パワハラ
が普通の「ブラック企業」の代名詞のような存在でした。
そのブラックな環境で何とか生き抜き、成果を上げるために生み出された働き方が『「仕事ができるやつ」になる最短の道』の内容でした。
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そして現在、「働き方改革」や「少子化による採用難」により、数々あるコンサルティング会社も「ホワイト化」し、ずいぶんと働きやすくなったと言います。
かつてのように、先の見えない長時間労働や、理不尽なパワハラに苦しめられる人が少なくなっているのは大変に喜ばしいことでしょう。
しかし、それは裏を返せば「短時間で最大限の成果を求められる」というべつの意味での厳しさがあるということです。
ですから今でも、普遍的な「仕事ができるようになる方法」は、役に立つと思います。
仕事ができるようになる、3つのこと
ところで、実務上は、私が「仕事ができるようになる」ために最も推していることが3つ、あります。
ひとつ目は、「最初に発言する」こと。
会議や、アイデア出しをやっているとき、あるいは上司から意見を求められたときなど、会社では発言をする機会が数多く与えられます。
そこでまず、「最初に発言すること」を心がけてください。
「バカなことを言ってしまわないだろうか」
「恥ずかしい」
「緊張する」
など、悪いことばかり想像してしまうかもしれません。
でも、「最初に発言すること」は、それ以上のメリットが得られます。
上司の覚えが良くなりますし、何より最初に発言するために、全力で頭を使います。
その場の方向づけもできますし、何より「間違った発言」をしたとしても、それは成長の糧になります。
ふたつ目は、「人の話をよく聞く」こと。
これは「黙って聞く」だけではなく、「ちょっと聞いて分かった気にならず、わかるまで相手に質問をする」ことも含みます。
よく聞くことで、相手の発言の意図だけではなく、どのような背景があって、その発言に至ったのか、その人が何を願望としているのか、そういったことがよくわかります。
よく聞くことは、その人を「マーケティング」することと同じです。
コミュニケーションを円滑にし、その人の望みを叶えるように動けば、必ず信頼と尊敬を勝ち取れるはずです。
みっつ目は、「本を読む」こと。
人類の叡智の殆どは、文書、とくに書籍の中に保存されています。
ビジネス書だけではなく、様々なジャンルの本を読むことで、時代を超えた知識を得られます。
また、ある程度本を読むようになると、分野横断的な「メタ知識」と呼ぶべきものが手に入ります。
これこそ、真の意味での「使える知識」なのです。
以上が私の「余計なお世話」です。
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なお本日、出版社の方から、旧版の『「仕事ができるやつ」になる最短の道』は、再構成及び加筆修正して、「新装版」として世に出すことになりました。
タイトルは、「仕事ができる人が、見えないところで必ずしていること」。
上の文章は、その「まえがき」のフルバージョンです。
(長すぎて、書籍に収まりきらなかったので、こちらに掲載しました)
多くの本が絶版になる中、こうして商業出版が継続されることは大変にありがたい話ですが、それ以上に、読者の皆様の役に立てることを願ってやみません。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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