僕が大好きな作家のうちの一人に佐藤優さんという方がいる。

この方は元外交官であり、かつて鈴木宗男議員と共に北方領土返還について全力で取り組まれていたのだけど、運悪く鈴木宗男議員と連座するような形で検察に逮捕されてしまったという特異な過去を持っている。

 

佐藤さんはそのような形で外交官としての人生に終止符を打たれてしまったが、その後は作家として活動されており、その奇妙な人生や外交官を務める事で得た特殊技能の一部を僕達は楽しむことができる。

個人的なオススメは国家の罠と先生と私、紳士協定あたりだろうか。それ以外のものも非常に面白いものが多い。

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

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先生と私 (幻冬舎文庫)

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紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)

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この方の本を読むまでは知らなかったのだけど、日本では外交官はある種のスパイのような活動を担っているようであり、それらの活動は専門用語で”インテリジェンス”と呼ばれているとの事である。

インテリジェンスというのは、国家における諜報活動である。世界情勢はめまぐるしい。様々な国家が生き残りをかけて、軍事・政治・経済に関する情報を収集し、そして戦略を練っている。

 

こうかくとインテリジェンス活動とは、一般人が関与できない特殊な情報源から特別な情報を仕入れる活動のように思うかもしれないけど、佐藤さんによればインテリジェンス活動の9割は公開された情報の分析により行われる。

これをOpen source intelligence、頭文字をとってOSINTと呼ぶという。

 

実は世の中で必要な情報のほぼ全てはどこかに記載されており、諜報活動に関わる人は、その膨大な情報(インフォメーション)の中から必要なものを瞬時に見出し、それを価値ある情報へと再編集するのがプロの諜報活動に関わるものの仕事だという。

 

さてつい最近、シロクマ先生が「知識を手に入れるための知識」がない人にとって、Google検索はあまりにも難しい。という記事を書かれた。読んだ方も多いかもしれない。

僕はこの記事を読んで、ああ一般人もインフォメーションを得る難易度が下がった分、インテリジェンスに力を割かなくてはいけないようになってきたのだな、と感慨深くなった。

 

そもそもGoogleが発達する以前は、インフォメーションを得る手段が物凄く少なかった。高いお金を出して専門家に話を伺うか、それなりに気合をいれて分厚い書籍を紐解くといった面倒くさい行為を行わないと、情報というのは手にはいらないようなものであったのだ。

例えば僕の好きなグルメなら、かつては東京いい店旨い店とかミシュランガイド、大人の週末といったガイドブックを入手しないと、そもそもお店の地図や電話番号すら手に入れる事すら叶わず、アクセスなんてほぼ100%不可能だった。

 

しかし今では誰でもGoogleで(新宿・フレンチ)とでも検索すれば、検索上位に現れた、恐らく人気があるであろう自分の近所にあるお店にスマホを通じてすぐに予約の電話を入れる事ができる。

実に便利な世の中となったものである。それまでと比較して、入手できる情報の量は格段に向上した。ではそれによって本当に美味しいお店に私たちはアクセスできるようになったのかというと、残念ながらそれは断じて否である。

ここから先が、真のメシ愛好家が頑張らなくてはいけない踏ん張りどころであり、グルメ愛好家としてのインテリジェンス活動のスタートといっても過言ではない。

 

とあるメシ狂いによるグルメ情報分析の流れ

自分でいうのも何だけど、僕はグルメについてのインテリジェンス活動については相当こだわっている。一回3000~10,000円近く払って美食ガチャを引いて、ハズレを引くのが極端に嫌だからである。

 

初めに断っておくと、僕は基本的にはガイドブックで絶賛されているお店や有名レビュワーがオススメするお店といったものに、何の下調べもしないで訪れる事は100%ない。

信頼できる情報源からインフォメーションを入手し、それを信用するは一般人からすればコスパが高い安心・安全な行為かもしれないが、ことメシのような個人の趣味嗜好が極端に偏った活動においては、選択肢を他人に投げる事自体が愚か以外の何物でもない。

そもそも一番楽しい時間である店選びの時間を奪われるだなんて、グルメ活動の楽しみの99%を失うのと同じだと思う。

ちなみに次に面白いのはメニューを選ぶときである。というかグルメにおいて自分で選択可能な自由な時間なんて、この2つしか無い。これが終われば後は食事を楽しむだけである。

 

お店の探し方だけど、僕はまずはGoogle検索を利用する事が多い。

基本的には住んでる地区の近くの駅×料理のジャンルの2つを組み合わせて検索し、その後事細かに食べログのレビューや写真を読み込んでいき、お店のホームページでシェフの経歴や料理のメニュー名を眺めてそこが本当に美味しいかどうかを判定していく。

この活動も、始めの頃は経験値がほとんど足りてなかったからか、ハズレを引く可能性も割とあったけど、最近ではほとんど外す事がなくなった。

 

活動をしばらく続けていく過程で否が応にも料理についての知識も深まっていったし、あまり美味しくないお店に当たったときに、何が悪かったのかについてPDCAサイクルをガンガン回し続けていった事で、随分とレストラン分析の手法も向上していったと思う。

 

その後は自分の好みもかなり把握できるようになったので、食べログで自分の趣向が合いそうなレビュワーが褒めているお店にも割と出かけるようにもなったし、食べ仲間の誘いにも時々応じるようにはなったけど、これはあくまで自分がお店を選べるような状態になったからこその行動である。

よくわからないけどレストランに詳しい人にいろいろな店に連れてってもらうだけでは、絶対にこうも主体的に動けるようにはならなかっただろう。

大切なのは、身銭を切って自分の時間とお金を使い、情報を高く機に分析し、主体性を持ってお店を選び、結果を反省していく事にある。このグルメPDCAサイクルが情報をただのインフォメーションではなく、血肉が通ったインテリジェンスへと昇華させる、唯一の行動だろう。

 

ここまで読んで「こんな面倒くさい事、めっちゃコスパ悪いやん」と思った人もいるかもしれない。まあコスパは確かに良くはないだろう。けどこの行為、やってる本人からすればもう無茶苦茶に楽しくて楽しくて仕方がないのである。

 

先ほどのGoogleの話を出したとき、僕は「インフォメーションを得る難易度が下がった分、インテリジェンスに力を割かなくてはいけないようになってきた」と書いた。けどこれ、実は物凄く夢のある話だのだ。

素人がインフォメーションを手に入れるのは、昔は物凄く時間と手間とお金がかかった。それを吟味したくても、そもそもそんな手立てなんてなかったのがかつての世界だったのだ。

 

けど現代はそんな手間はほとんど消失してしまった。ほとんど全ての情報がオープンネットワークに現れるようになった今現在、私たちはそれまでの苦労に要した時間を、全て情報分析に当てる事ができるのだ。

もちろん全ての情報についてそれを行うのはあまり賢い選択ではないかもしれないけども、少なくとも自分の好きな活動に関してはインテリジェンス活動に従事できるだなんて、最高にロックではないだろうか?

 

というわけでみなさんも、自分の大好きな事についてのインテリジェンス活動にガシガシ情熱を傾けていき、立派なトップ諜報活動家への道を歩みだそうではありませんか。

 

データ分析、めっちゃ面白いですよ?

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

(Photo:Stuart Williams)