任天堂が苦境にあえぐ中、「パズドラ」を始めとしたスマートフォンゲームの会社の業績は好調だ。また、LINEも、実は収益の大部分をゲームに依存している。
ついに任天堂3期連続の営業赤字 どうなるゲーム機ビジネスの立て直し?(財経新聞)
恐るべしパズドラ。「オワコン」ではなかった!(東洋経済)
LINE事業の2013年7~9月期売上は99億円、うち60%がゲーム課金
まさに世の中は、「スマホゲーム全盛」の時代である。
「マリオ」や、「ゼルダ」で育った世代の我々としては寂しい限りだが、これも時代の流れなのだろう。
しかし、このような状況に業を煮やした投資家が、任天堂に注文をつける。
”「1ドル払えばマリオがもっと高く飛べるようにしたらどうか」香港の投資家が任天堂のスマホ参入を促す書簡”
せっかく面白いコンテンツを所有しているのだから、スマートフォンの課金モデルを任天堂も取り入れてはどうか、という提案だ。
課金の発想としては安直だが、まあそれは本意ではあるまい。要は「任天堂もスマホゲームをやれ」という話だ。
だが、こういった提案に対してアレルギー反応を示す人もいる。
誰が「課金すればより高く飛べるマリオ」なんか欲しいものか (AGORA)
”ここ数ヶ月、私なりに少ないながらそれなりに投資をして、いくつかのソーシャルゲームをプレイしてみたが、結論としてはそれは自分がこれまでプレイしてきたゲームとは余りにも異質なものだった。
キャラクターというか、キャラクターのカードを入手する際にある程度の課金をしない限り、ほぼ確実にレアなキャラクターは手元には入らない仕組みや、プレイする時間にまで課金アイテムを必要とするシステムは、それまでの様々なゲームをプレイした私にとってストレスでしかなかった。”
なぜこのようなすれ違いが起きるのだろうか。
少し考えてみると、このすれ違いの原因は、「ゲーム性の違い」にあると思われる。
任天堂のゲームは、一度購入すれば「とことん遊べる」タイプのゲームだ。そして、そのゲームはどちらかと言えば「ゲームの世界に没入する」ことを目的とする。
だから、「いかに長時間遊ばせるか」ということが、ゲーム製作者の目的となる。そうして、ユーザーは「映画のような」楽しみを求める。そこは一種のファンタジー、仮想現実であり、物語や小説を読むように、ゲームをやる。
それに対してスマートフォンのゲームは実際にはゲームセンターに近い。
例えば、ゲームセンターのユーザーは大きく二通りいる。「見ている人」と、「課金してゲームをやり込む人」だ。そして「見ている人」の一部は「自分もやりたい」と、課金ユーザーとなる。これはスマホゲームの構図とよく似ている。
また、ゲームセンターのゲームは「お金がかかっている」ことで、「もう100円使おうか」「コンティニューすべきか」という楽しみも生まれる。「課金」は、「負担する」という負の側面だけではない。ユーザーにとって一種の賭け事であり、それは純粋に楽しいことでもあるのだ。こういった「お金を賭ける」ことも、ゲームセンターとスマホゲームの類似点だ。
そして、ゲームセンターは長時間ゲーム台を独占されると商売にならないので、「いかに短時間で楽しんでもらうか」がゲーム製作者の目的となる。
スマホゲームについては「台の独占」は関係ないが、実はあえて「遊べる時間を限っている」ゲームが多い。パズドラで言えば「スタミナ」という概念があり、スタミナが尽きるとゲームがプレイできない。スタミナを回復させるためには課金する必要がある。
だから、ゲームセンターとスマホゲームは、考え方が同じだ。
短期間で楽しんでもらうためには、アドレナリンが出るように仕向ける必要がある。よって、「気持ちよさ」や「射幸性」をゲームに組み込む。「物語」は不要だ。
そして、その刺激を忘れられない人は、課金を繰り返す。ゲームセンターでも100円玉を積み上げてゲームをやっている人がいた。あれと全く同じである。
だから任天堂がスマホゲームをやらないのは明らかで、ゲーム性が違うからだ。ゲームセンターで任天堂のゲームを見かけることはない。
■
スマホゲームは「ゲームセンター」と思ったほうが良い。問題なのは手元にいつも「ゲームセンター」が存在するので、特に子供などが易易とハマってしまう点だ。
ゲームセンターは営業時間を風営法で規制されているが、スマホゲームは規制がない。最近では年齢により課金できる上限を規制しているゲームも多いが、本人確認をしていないので全く機能していない。
スマホゲームが「悪である」と主張する人々はゲームそのものよりも、その運営体制を批判したほうが良いだろう。
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