仕事がら、本を読むことが多い。

 

具体的には、コンサルタントの頃は、月に10冊必ず読めと言われていたので、辞めた今でも惰性でそれをボチボチ続けている。

もちろんこれは「仕事用」に読む本の冊数で、プライベートで読む本は別だ。

 

最近は、ほとんど電子で買っているので、Kindleで購入した本の冊数はもう4000近い。

ほんとうは、紙で本が欲しいのだが、本棚はとうの昔に限界を迎えている。

だから、本棚がたくさん置ける家に引っ越すのが、個人的な今の夢だ。

 

都内では夢のまた夢かもしれないけど。

 

 

ところで、「仕事で本を読む」のが苦痛だという方がいる。

マンガとか、小説ならば読めるけど、どうにも仕事となると……という。

 

これは何も珍しいことではなく、コンサルティング会社の同僚もほぼ同じことを言っていたし、何なら、私だって「興味の薄いゾーン」の本を読むのに苦労するのは同じだ。

 

だから、仕事で大量の「本の情報」をどうやって処理するかは結構重要な問題だった。

そこで、上司や読むのが得意な同僚に「読み方」を聞いた。

 

人によって個性が豊かな領域だったが、その結果、ある程度自分に合っている方法を見つけた。

その方法とは、以下のものだ。

 

なお、「楽しみのためにする読書」については、こんなことをする必要は全くないし、逆に時間の無駄となるから、やめたほうがいい。

あくまでも仕事で、時間をあまりかけられない読書に適応するためのものだと考えている。

 

1.本の内容を覚えようとしない

仕事でする読書で最も重要な考え方の一つは、「内容を覚えようとしない」こと

 

実は、読書が苦痛である大きな理由の一つが、「一発で覚えようとして熟読する」ことにある。

学校の教科書を読むようなイメージだ。

 

実は、本を読む目的は「内容を覚える」ではない。

本は、その時代の要請にこたえて、かなり考えて作られているので、「どんな本が出ているかを知る」ことだけ知るだけでも、十分価値がある。

 

どうせ後で、重要な本については読み返すことになる。

 

だから逆に言えば、「どの本を読み返せばいいか」を、何となくつかむことが、仕事での本の読み方と言える。

だから、流し読みしつつ「目次」「大項目」くらいがある程度頭に入ってくれば、それで十分だ。

 

2.ひとまずそのジャンルの本をまとめて10冊ほど読む

という事は、仕事の読書とは必然的に「たくさんの本を横断的に読む」ことを目指すことになる。

だから、記憶にある私の上司の机には、同じようなジャンルの本が大量に積まれていた。

 

例えば、最近ChatGPTをはじめとする、生成AI系の本がたくさん出ているが、古い本も含めて、

「何を差別化トピックにしているか」

「何が課題とされているか」

「著者の今後の興味はどこにあるか」

「どのような読者層を狙って書かれているか」

等が知りたく、ひとまず20冊ほど買った。

 

また、noteの方では、「文章術」について書く機会が多く、類書を含めて、30~40冊ほどを買っている。

といっても、繰り返しになるが、本の内容は覚えようとしていない

ただ「何となく、この本にはこんなことが書いてあったかなあ」くらいの記憶があるだけだ。

 

こうした「多量の本を並列で読む」やり方は、コンサルティング会社の上司に教わったやり方だが、先日読んだ「解像度を上げる」にほとんど同じ手法が載っていた。

事例のサーベイがある程度終わったら、次は大きめの書店に行き、自分の課題に関連する業界の本を端から端まで買うことをお勧めします。たとえば飲食業のSaaS(SoftwareasaService:サービスとしてのソフトウェア)ビジネスをしたいのなら、飲食ビジネスに関連する本を端から端まで買います。FinTechをするなら、銀行や決済に関連するテーマの本をすべて買いましょう。

複数の本を買うと情報が重複している可能性もあり、無駄に思えるかもしれませんが、著者によって異なる視点から同じ物事を見ることができますし、重複しているのなら、その情報は誰の目から見ても重要だということが分かります。そうして業界の構造やトレンドを深掘りしていくのです。

専門書などは高額のものもありますが、事前に1冊3000円以下のものは全部買う、予算は10万円以内などと決めておいて、その範囲で「悩まずにすべて買う」ことを徹底してください。そうすれば、どの本を買おうかと悩む時間を読む時間に充てられますし、たった数万円と数十時間で、基礎となる情報が手に入ります。

説明としては、必要十分だと思う。

 

 

また、学術研究においても、重複する研究をしないため「ひとまず先行研究の論文を全部読む」という手法を研究室で教えてもらった記憶があるから、この手のやり方は思っているよりメジャーなのかもしれない。

 

また、横断的に読むことの大きなメリットの一つは、「だんだん読むスピードが上がる」ことだ。

重要な知識に関する記述は、何度もでてくるため、知識の吸収スピードがどんどん上がる。だからあえて「初心者向け」から気軽に読み始めてみるのも良いだろう。

 

3.メモを取る(短くていい)

とはいえ、「ビビっときた」ポイントは、何かしらの形で残しておくと、後で「読み返す」時に探しやすい。

 

この点、電子書籍は検索が使えるので、「フレーズ」さえメモしておけば、後で簡単に読み返せる。

紙であっても、今はスマホがあるので、ページを撮影しておけば、後でそこから検索できる

 

また、AmazonのKindleには「ハイライト」というツールがあり、文章をなぞってハイライトしておけば、そこだけ後から集約して表示させることができるため、非常に便利だ。

上では「ハイテクよりも靴墨や時計のような事業で金持ちになった人の方が多いに違いない」がハイライトされているが、起業の時に何をするかの指針として、面白いと思ったことを覚えている。

 

4.本を汚していい(躊躇なく折ったり、メモしたり)

本は、汚していい。

躊躇なく、折ったりメモしたりすることで、役割を果たしてくれる。

 

結局、本は重要であればあるほど、ページを切ったり、メモを書き入れたり、付箋を貼ったりして、かなり雑な取扱いになっていくからだ。

使い続けていくと、背表紙側のノリがはがれて、本がばらばらになってしまう事も多々ある。

 

拓殖大教授で、ノンフィクション作家である野村進さんの「調べる技術・書く技術」には、「資料としての本は、乱暴に扱う」という項目があり、次のように書かれていた。

アンダーライン、書き込み、付箋貼り、ページ折りなどは、どんどん行うべし。私の場合、ページを破って袋ファイルに入れることもある。本をきれいに保とうとして、別にメモやノートをとるのは時間の無駄である。

これは全く同感で、仕事で使う本はあくまで「資料」だから、きれいに扱うことにあまり意味はない。

 

ただ、尊敬する作家の本は、「きれいにしておきたい」という欲求もある。

私はオタク気質なので、ドラッカーなどのお気に入りについては、同じ本を2冊、買っていた。

 

5.大項目には一通り目を通すが、無理して最後まで読まなくていい

そして大事なのは「無理して最後まで読む」ことはしなくていい。

特にビジネス系の書籍は、前半がコンセプトや概念で、後半は単なる前半部分の繰り返しか、細かい事例、あるいは対談の記録という事がよくある。

 

正直なところ、事例や対談部分は「必要なときに読み返せばいい」。

ほんとうに重要なのは概念やコンセプトの部分だから、最後まで無理して読む必要はないことも多い。

 

例えば、「静かな人」の戦略書という本がある。

面白い本で、お勧め本ではあるが、基本的なコンセプトの部分は、「PART1 静かな人の「仕事」の戦略」の部分に集約されており、残りの部分は、個別のわかりやすい事例や、応用編となっているから、忙しい人は最初の3割を読めば十分、著者の言いたいことを理解できるだろう。

残りの部分は、個別に「困ったシーン」が出てきたときに、読み返せばいい。

 

 

 

 

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(2024/4/21更新)

 

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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