先日、ある人材系企業に行き、大変ためになる知見を数多く頂いた。
中でも、「20代、転職」と「30代、転職」といった、年齢と転職をかけたキーワードがとても検索されると言う話を聞き、「転職の年代」を気にする方が多いのだな、と改めて思う。
さて、家に帰り、改めて「20代、転職」をGoogle検索してみる。
ズラッとキーワードに引っかかるページが並ぶ。
ほとんどは転職サイト、広告と、とそしてアフィリエイトのページである。
幾つかのサイトをクリックしてみると、ガッチリSEO対策されていて、「20代」「転職」というキーワードが執拗に出てくる。
ただ、おそらくこれらは、自分が20代の時読みたかった記事ではない。
これらは「転職を決めた人が読む記事」であって、「転職しようかどうか迷っている人」がなんとなく読む記事ではないからだ。
多分「自分が20代だったころ、読みたかった転職の記事」は、以下のようなものだ。
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タイトル:「20代、30代、40代の転職、一体何が違うのか?」
20代と30代、そして40代の転職はなにがちがうのか。
webで調べると、Google検索上位の記事の傾向は、
・二十代は「やりたいことを探す」転職。
・三十代は「専門領域を深める」転職。
・四十代は「マネジメント能力の求められる」転職
と、そんな感じだ。
でも、正直に言えば、これらは表現がきれいすぎる。実際の転職は、そんな綺麗事で決まるわけではない。
もっと具体的で、シビアな本音のぶつけ合いが起きる。
転職者の本音はweb上でたくさん見ることができる。
だが採用側の本音は、転職サイトにはなかなか出てこない。
当たり前だが、採用側は「きれい事」を並べるほうが簡単だし、炎上して責任を問われるようなことは避けたいからだ。
でも、実際は採用側はこんなことを見ている。
20代は「能力」「扱いやすさ」
20代での転職の本質は、「お前、どれくらい頭いいのよ?」である。
採用する側は、とにかく若い人へポテンシャルを期待している。つまり「地頭が良い人」が欲しい。
言うなれば、「能力」での勝負である。
もちろん、頭の良さが重視されない会社もある。
根性勝負の営業や、流れ作業をこなすだけの人員が欲しい会社は、「地頭がいい人を採りたい」とはあまり言わない。
ただ、そういう会社は概して労働条件が悪く、離職率も高い。誰もが入りたがる、条件の良い会社に入るには、とにかく「賢いこと」が求められる。
なぜなら、知識労働は、頭が良くなければ話にならないからだ。
Googleだって、Appleだって、Facebookだって、給料が良くて、スキルが付いて、職場が綺麗で、名前が売れて、キャリアにプラスになる一流企業は全て「頭の良い人物」を欲しがっている。
若いときの転職では学歴が重視されるのは、その理由からだ。
そしてもう1つ、同じくらい重要だと採用側が考えているのは「扱いやすさ」である。
「多様性」とか言う会社もあるけれど、それは綺麗事。
本当は扱いやすい人が欲しい。それを「理念に共感する人」といった言葉でオブラートに包んでいるだけだ。
特に中小企業の場合は、社長だけは賢いが、幹部にあまり賢い人がいなかったりする。
そういう場合でも、若手をいきなり上にはできないので、賢さの逆転現象、つまり、幹部<<<若手 ということが現場ではよくある。
そして若手は気づく。
「あれ……?上のやつ、威張ってばかりいるけど、頭悪いじゃん……」ということに。
だが、幹部はそんなことは認めないし、認めたくはない。社長も、苦しい創業時代から一緒に働いてくれた古株を無下にはできない。
だから、上の幹部をバカにしてしまうような態度を取ってしまう、扱いにくい若手は、採用できない、ということになる。
そのような時に使われる表現が、「君は、うちには合わないよ」とか「うちよりもっと良いところがあるよ」とか、「賢すぎる人はいらない」とか、その類の表現である。
総括すると、「地頭がよく」「扱いやすそうな」人が、20代では圧倒的に採用市場で高い値がつくのである。
30代は「実績」
30代になると、潮目が変わる。
29才と30才と、たった1歳しか違わないのに、人間の受ける印象が変わるために、転職市場の受け止め方も大きく変わる。
では、30代の転職の本質は何か。
それは「お前、20代でどれだけ実績作ったのよ?」である。
もはや、地頭とか、扱いやすさとか、学歴とかそう言った部分はあまり求められない。
求められるのはひたすら「結果」である。
どんだけ凄いプロジェクトやったのよ?
どんだけ売ったのよ?
どんだけ経営に近い場所にいたのよ?
どんだけネームバリューのある会社にいたのよ?
そんなことが、人を測る基準になる。
どれだけ頭が良さそうなことを言っても、実績のない人間は相手にされない。
逆に言えば、30代で未経験を採ったり、実績を気にしないで人を採用するような会社は、あまり条件の良い職場ではないことが多いだろう。
だから、30代の転職は結構、逆転現象が起きる。
20代で引く手あまただった人が、30代では市場価値がなく、20代であまり市場価値のなかった人が、30代になって急に高値がついたりする。
それは、20代であまり市場価値が高くない、と思われていた人が「学歴なんか関係ない」と言い出す時期とだいたい重なる。
そう。時間が経てば、学歴などあまり関係なくなるのは間違いない。
20代で良い会社に入って、のんびり10年、20年仕事をしていた人が、35くらいになって「自分は出世できなくなった」と悟って、急に転職市場に出てきても、ほとんど評価されずに「こんなはずでは」と後悔するのも、この時期だ。
何れにせよ、20代にとにかくなりふり構わず働き、現場で実績を上げ続けた人が、30代でチャンスを掴む。
20代で「不本意な就職」をした人であっても、諦めなくていい。
20代に実績を出せば、30代で逆転できる。
40代は「構想」
そして40代である。
40代の転職は、20代、30代とは全く異なる。
ここで勝負できる人は、能力が高いのは当たり前。実績を挙げているのも当たり前の人たちだ。
それは前提条件にすぎない。
では、そこに付加される条件、40代での転職の本質とは何か。
それは「お前、どんな構想を描けるのよ?」である。
どんなビジネスを描けるか?
どんな人を集められるか?
どんなネットワークを築くことができるのか?
魅力的な理念を打ち出せるか?
どれだけ、人に実績をあげさせることができるのか?
考えても見てほしい、あえて40代を、高い年収と評価で新しく会社に迎え入れる理由は何か。
それは
「社内だけでは打開できないビジネスの行き詰まり」や
「別の人的ネットワークへのアクセス」を得るためではないか。
「別の業界の知見とノウハウ」にアクセスし、別のビジネスモデルを打ち立てることを目指すためではないか。
「既存事業を任せ、社長が新しい領域にチャレンジする」ためではないか。
能力や実績は前提として、プラス、絵を描ける人が、人を使える人が、人望を集める人がほしい。
採用側は、そう考える。
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以上が、「一般的な企業」が年齢相応の人材を採用する時に考える要件である。
もちろん例外も数多くある。
会社というのは結局、だれを採用するか、という話は、経営者がどういう人が好きなのか、に依存するからだ。
だが、間違いなく傾向はある。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
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・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
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