「不自由の自由」という言葉をご存知だろうか。

 

例えば野球というゲームがある。野球をするにあたって、プレイヤーは野球のルールに従わなくてはいけない。

これはある意味ではプレイヤーを強烈な制限の元に置いていると言える。

プレイヤーはルールに縛られた動きしかできない。自由か不自由かといわれると、どちらかと言えば不自由だといえるだろう。

 

じゃあこの不自由な野球というゲーム空間で野球選手が不幸かというと、そうでもない。

制限がかけられた空間において、野球選手は数々の魅力的なプレイを繰り広げ、人々に数多くの感動をもたらす事に成功している。

 

仮にイチローを1人だけ東京ドームに呼んで「なんでもあなたの好きにやっていいですよ」といったところで、イチローが野球で見せたような偉大な行いと同じレベルの事をし、人々を感動させられるとは到底思えない。

偉大な野球選手は野球という不自由な空間に置かれることで、プロとしての技術を際限なく発揮する事ができるけど、自由な空間では野球のプロとしての技術なんてほとんど使い物にならない。

 

このように、自由はある意味では不自由となり、不自由はある意味では自由になりうるのだ。

このことを理解すると、自分のパフォーマンスをどのようにすれば最大限に発揮する事ができるようになるのかの糸口がつかめるようになる。

 

好きを仕事にするを再考する

自分の好きな事や得意な事を仕事にする。

これは働いているものならば、誰もが憧れることだろう。嫌なことをやらされて生きたい人なんていない。

人として生をこの世に受けたからには、自分の能力をしっかりと発揮して認めてもらいたいと思うのは、人として当然の事だろう。

 

しかし改めて自分の好きは一体何なのかという事を考えると、この問題がとても難しい事がわかってくる。

得意とか好きとか言われても、そんなものがわかってたらそもそも苦労なんてしていない。

 

この好きを見つけ出す方法の1つに、先程の不自由の自由の話が役に立つ。

例えば先程、イチローを具体例としてあげたが、彼が最大のパフォーマンスを発揮する事ができるのは野球というゲームの中である。

野球というゲームはイチローには限りなく自由を与えるが、その他の分野の人にとっては不自由極まりない空間だ。

イチローは自分にとって都合の良いゲームをみつける事ができたからこそ、彼は人類史に残りうる偉大な野球プレイヤーとして大成する事ができたといえる。

 

水を得た魚のようという言葉があるけど、イチローにとっての水は野球だ。

水という環境の中では魚は他のどの人類よりも優秀なように、野球というゲームの中ではイチローは凡百の人類よりも圧倒的に優秀だ。

 

あなたの人生を思い返してみた時、あなたが一番自由に自分のパフォーマンスを最大限に発揮できた時はどんなときだっただろうか?

たぶんあなたが生き生きとできる、魚にとっての水みたいな環境が今までの人生の中で一度ぐらいあったんじゃないだろうか。

そこにたぶんあなたの好きが隠れている。

 

小中学校時代のような、あなたがまだ天真爛漫だった時期、あなたはどんな事に心をときめかせる事ができただろうか。

それがわかれば、あなたにとっての真に自由でいられる場所を見つけるのはそう難しいことではない。

 

若い頃にいろいろやってみるのも人生の肥やしになる

ひょっとしたら一度も生き生きとした経験をしたことがないという人もいるかもしれない。そういう人に向けて、もう1つ為になりそうな話をしよう。

 

経済学者のヘンリー・シュウ氏によると「若い時期に転職を繰り返す人は、キャリアの最盛期に高収入を得やすい傾向にある」のだという。

転職は高収入とかなり強い相関関係がある。なぜならば、自分にとっての天職と巡り合うためには、様々な職種を経験するしかないからだ。

 

今の仕事がつまらないからといって、自分に仕事が合わないわけではない。

単に、今やってるゲームがあなたに向いていないのだ。

石の上にも3年というけれど、自分の中である程度の見切りがつけられたら思い切ってパッと別の業界に飛び込んで見るのも大切な事だ。

 

実は転職はそのほかにも凄く為になるものをあなたにもたらす。

若い頃に転職などを経験して様々な役職につく経験をする事で、世の中には様々な種類の仕事があり、それぞれに業界独自のルールがある事を知ることができる。

 

ある業界では当たり前のように行われている事が、他の業界では革新的な事だったりすることはよくある。

 

例えばマネーボールという本では、実在のGM、ビリー・ビーンがデータ分析の技能をプロ野球に導入することで、貧乏球団のアスレチックスを一気に強豪チームへと成長させる事に成功する事例があげられている。

データ分析なんてコンサルや普通の実業にいる人からすれば当たり前過ぎるアイディアだけど、従来の野球業界出身者ではそうそう思いつきもしないアイディアであったようだ。

実はこの話からも明らかな通り、世の中の多くのゲームは不自由ではあるものの、実は思ってもない部分に自由があったりもするのである。

 

あなたが今の業界で活躍できないのは、実は活躍できる場所を知らないからなのかもしれない。

それならば、一旦他の職種を経験することで、思ってもみない部分に活躍できる場所を発見する事ができるようになるかもしれない。

 

この事は実はデータにも現れている。

スタンフォード大学ビジネススクール教授であるエドワード・ラジアーが卒業生500人を対象にアンケートを取ったところ、経験した役職が2つ以下だった人がCEOなどの経営幹部となれた確率は2%だったのに対して、経験した役職が5つ以上だった人間が経営幹部になれた確率は18%にも及んだという。

 

たぶん、成功した人達はゲームに新たなルールを導入する事に成功したのだろう。

あなたも同じように、どこかの業界では当たり前のように行われている慣習を、他の業界に導入する事で大成功を収める事ができるかもしれない。

 

若いうちから様々なものに興味を示し、色々なものを経験する事は後々の肥やしとなるのである。

無駄なものなどどこにもない。興味の赴くままに、色々なものを楽しもう。成功のキッカケは、意外なところに落っこちてたりするものなのだ。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

【プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

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(Photo:Peter Miller)