りゅうちぇる、タトゥー批判に反論「この体で、僕は大切な家族の笑顔を守る」(ハフィントンポスト日本版)

 タレントのりゅうちぇるさんが、妻と息子の名前を刻んだタトゥーに批判的な意見が殺到した件について、8月21日、Instagramで「それなりに予想はしてたけど、こんなにも偏見されるのかと思いました」と明かし、「こんなに偏見のある社会 どうなんだろう。仕方ないよね。ではなく、僕は変えていきたい」と自身の思いをつづった。

りゅうちぇるさんは、「家族の名前を身体に刻もうと覚悟して」タトゥー(刺青)を入れたそうです。

これに対する批判の声がかなりあるのですが、りゅうちぇるさんは、その批判に対する自分の考えを、これまでの人生経験も踏まえて語っておられます。

 

僕は正直なところ、「覚悟や決意はわかるけど、なぜそれをタトゥーで表現するのだろう?」と思ったんですよ。

そして、こういう「タトゥーで決意表明」には、既視感があったのです。

あの「ビッグダディ」の元妻・美奈子さんは、2013年に著書『ハダカの美奈子』のなかで、こう書いておられます。

【読書感想】ハダカの美奈子(琥珀色の戯言)

これ以上、子どもたちにつらい思いはさせられない。あたしの弱さは、あたしが一番良く知ってるはずだから。

もっと強くならなきゃ。あたしがこの5つの命を背負ってるんだから。なにか証を残さなきゃ。そう思った。

最初は日記を書こうと思ったんだけど、3日ぐらいで挫折しちゃった。あたしって身の回りの物、アクセサリーだってピアスだってすぐ無くしちゃうから、物じゃないほうがいい。

じゃあなんだろうって考えたとき、「自分の身体に入れちゃえばいいんだ、その証を」って自然に思えたの。

誰かから勧められたとか、誰かの影響を受けたとかそんなんじゃなく、あたし自身がひとりで決めた。

「タトゥーを入れよう」って。

僕はこれを読んで、思わず声を出して本にツッコミを入れてしまいました。

「日記にしとけよ!」って。

 

最近では、清原和博さんが、インタビュー集『清原和博 告白』のなかで、タトゥーを入れた経緯について語っていました。

清原さんは、現役引退後、何をやっても満たされた気分になれない日々を過ごしていたそうです。

清原和博「それで……、自分自身で新しいスタートにしたい、何かきっかけが欲しいという意味で、刺青を入れたんです。

自分を変えるためでした。野球界でユニホームを着るために刺青を入れたらダメというのは、彫る時には考えもしなかったです。自分に能力があれば、そういうものは関係ないと思っていましたから。

巨人のキャンプに白いスーツで行ったことが話題になったこともありましたが、あの時も野球界の慣例みたいなものがあることをわからなかったんです。沖縄だし、そういう白っぽい服装で行っても大丈夫なのかなって思っただけでした。

これは昔から思うんですが、世の中の人が思っている善悪と、僕が思っている善悪というのは違っていることがよくあります。

実際、刺青を入れてから自分の生き方が変わったかというと、うーん……、これはわからないです。

ただ、刺青は、ひとつ生きる意味として、やっておこうと思ってやったことなので。いまだに、生き方ということには苦しんでいます。もうずーっとそうですね、もうずーっとです……。」

僕は、刺青といえば暴力団などの反社会的勢力を最初にイメージしてしまいますし、タトゥーを入れている人をみると、正直、怖い。

サッカーのワールドカップでも、メッシのタトゥーをみて、「どうしてそんなにグレてしまったんだ……」とか、勝手に思っていました。

 

海外では、タトゥーはそれほど「重苦しいイメージ」のものではないし、タトゥーを文化として誇りに思っている民族もいるのです。

日本にやってきた外国人観光客が、温泉やプールで「刺青がある方の入場禁止」というのをみて、「差別」だと憤っているというのも知っています。

おそらく、近い将来、「刺青があるから入浴拒否」というのは撤廃されていくことになるのでしょう。

日本人の刺青はダメ、外国人のタトゥーはOK、というのも変な話だろうし。

 

仮に反社会的勢力の人だったとしても、温泉の大浴場で素っ裸の状態で大暴れ、なんてことは、ちょっと想像しにくいし、最近のタトゥーは色落ちもしにくいみたいですし。

大浴場に自分以外は大勢の刺青の人たち、という状況を想像すると、やっぱりけっこう不安ではありますが。

 

僕の感覚では、りゅうちぇるさんに対しても、「なぜタトゥー?」なんですよ。

少なくとも、今の日本では、タトゥーを入れることのメリットというのは「入れた本人の自己満足」「ファッション」以外には思いつかないし(他人から、「良く言えば一目置かれる、悪く言えば敬遠される、ということはあっても)、タトゥーはちゃんとしたところで入れないと、肝炎の感染などのリスクもあります。

 

そもそも、自分の身体に傷を入れることと、家族が幸せになることに因果関係があるとは思えません。

むしろ、これからも芸能界で生きていくのであれば、りゅうちぇるさんには、デメリットのほうが大きいはずです。

それこそ、子どものための預金通帳でもつくっておいたほうがはるかに気が利いているし、日記のほうがお金もかからないし、アクセサリーのほうが安全です。

 

僕は、冒頭の美奈子さんの本を読んだとき、「世の中には、反社会勢力への忠誠の表明や若気のいたり、という理由以外で、タトゥーを入れる奇特な人がいるんだなあ」って思いました。

清原さん、りゅうちぇるさんも、僕にとっては、なぜそれがタトゥーを入れる動機になるかわからない「独自理論」でタトゥーを入れているのです。

5年間で僕が知っているだけでも3人ですから、こういう「反社会的勢力でもファッションでもないタトゥー」を身体に刻んでいる人というのは、けっこういるのかもしれません。

 

こういうタトゥーが合理的かと問われたら、第三者としては「メリットよりデメリットのほうがずっと大きい」と答えます。でも、「自分にとっては、タトゥーを入れることが正しい」と考えて、実行する人は存在する。

入れるのはけっこう痛いはずだし、他者からの視線が変わることも承知のうえで。

 

他人がタトゥーを入れていても、こちらとしては「ちょっと怖い」以外の実害はないので、批判するつもりはありません(怖くないほうがいいけど)。

ただ、「それ、タトゥーじゃないとダメなの?」と言いたくなるし、価値観というのは人それぞれなんだなあ、とあらためて思い知らされる話ではあります。

 

こういう「自分とは違った価値観を持った人たちと共に生きていく」のが「多様性」ではあるのだけれど、タトゥーひとつでも、こんなに「わからんなあ……」と感じてしまうのが現実なんですよね。

 

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(2024/1/22更新)

 

【著者プロフィール】

著者:fujipon

読書感想ブログ『琥珀色の戯言』、瞑想・迷走しつづけている雑記『いつか電池がきれるまで』を書きつづけている、「人生の折り返し点を過ぎたことにようやく気づいてしまった」ネット中毒の40代内科医です。

ブログ:琥珀色の戯言 / いつか電池がきれるまで

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(Photo:Sergio Russo