採用活動をやっていると、内定者から、「何を勉強すればいいですか?」という質問をよく受ける。かつて自分も社会人となる前、企業の人事担当者に同じような質問をした記憶がある。が、おそらく、「資格をとっておけ」「旅行しておけ」「学校の勉強をしろ」「会社から出される宿題をやっておけ」といった類の回答だったように思う。あまり覚えていないところを見ると、「ふーん」と言った感じだったのだろう。
この質問に人事はどう答えるべきなのだろうか。あるいは経営者はどのように考えるべきなのだろうか。
大別すると、企業が「内定者教育」を行う目的は3つだ。
1.内定辞退を防ぐための教育
2.「内定者教育」の名を借りたアルバイト募集
3.「新人研修」のような内容を早めに内定者に行う。
1.は目的がわかりやすい。内定辞退を防ぐためには「不安解消」が大事であるとリクルートは言っている。内定者の不安を取り除くべく、「資格取得」や、何かしらの作業をやらせることで不安を感じさせないようにする。要はある程度「忙しい」状態においてあげればよいのだ。内容はなんでも良い。
したがって、この場合は「資格取得」や「何かしらの作品の提出」、あるいは「課題図書」 の読破など、夏休みの宿題と言った内容のものが採用されやすい。
何も宿題がないよりはあったほうが「マシ」というくらいだろう。
2.もよくある。特にゲーム会社などは猫の手も借りたいくらいに忙しい状態だ。プログラミングができる学生に手伝いに来てもらえれば、「内定者教育」の名のもとに仕事を手伝ってもらうことができる。もちろんそれによって学生も「実戦経験」を持つことができるので、一石二鳥だ。
個人的には「その人の仕事の能力」は、一緒に働いてみないとわからないので、このやり方は良いと思う。
ただ、最近では内定者教育ではなくインターンの事例であったが、「安く人が使える」というヨコシマな動機でこういったことをやっている企業が問題となっているようだ。
学生の「インターンシップ」は無報酬でも問題ない? 労働法違反にならないの?
そして3.だ。「入社した時点である程度マナーなどの基礎的なことが身についていて欲しい」という企業側の思惑もあり、新入社員教育のようなことを内定者に行う会社もある。しかし、マナーや心構えを始めとした新入社員研修の殆どの内容は「知識」ではなく、「実践」あるのみという内容だ。
例えば新入社員研修ではこのようなことを教わる。
・会釈 15度体をを傾ける
・敬礼 30度体を傾ける
・最敬礼 45度体を傾ける
これは「知識」ではなく、実践に属する内容だ。
だから、やってみなければ感覚をつかむことはできないし、どの場面が敬礼で、どの場面が最敬礼なのかは仕事の中で覚えるものだ。だから、こういったものは1日か2日程度の実践研修なら役立つかもしれないが、その程度だ。
さて、本題に戻ろう。「何を勉強すればいいですか?」という問いに対する回答だ。
内定辞退を防ぐために何かはとりあえずやらせたい。でも、意味のない事をやらせてもしょうがない。かといって、学生に手伝ってもらうような仕事もない・・・。どうすればいいか。
そういえば、以前お世話になった会社が面白い内定者教育をやっていた。
「内定者教育は、自主性を育てるようなものでなくてはいけません。」
経営者はそう言っていた。
その会社は人事との面談で、内定者が「入社までにやりたいこと・やるべきこと」を自分で考えるように仕向けていた。
資格取得でも、海外旅行でも、プログラミングでも何でも良い。とにかく目標を自分で決めさせていた。そして、進捗を人事と共有しながら、彼らに「目標を自分で作って、自分で達成するように努力する」という考え方を学んでもらう。
内定者は最初、会社が喜びそうな目標ばかり持ってくるが、「本当にそれが重要なこと?」と聞くと、苦労して良い目標を改めて考えてくるのだという。
そうだ。
「何を勉強すればいいですか?」と聞かれたら、「何を勉強すれば良いと思う?」と聞いてみよう。そうして熱心に話して、内定者のやりたいことと、我々がやってほしいことをすり合わせるのだ。
会社とは、そういう場なのだから。
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