まず、前提として「わかりやすく書く技術」は重要だ。

というのも、現代の仕事に於いては「書く」ことの重要性が増しているからだ。

メール、企画書、提案書、記事……

現代の働く人は、一昔前の働く人に比べ、多くの知識を扱うがゆえに、遥かに多くの「書く」作業を要求されるようになった。

 

では「わかりやすく書く」ためには、具体的にどうすればよいのだろうか。

文章の書き方を具体的に示した名著の一つ「理科系の作文技術」は、その指針となることが数多く書かれており、文章力を上げたい方にオススメの一冊である。

同書によれば、文章の作成手順は

1.目的規定文

2.序論

3.本論

4.結び

の4ステップである。

 

目的規定文(タイトル)

まずは「目的規定文」だ。これは書こうとしている文章の主張を一文にまとめたものだ。

要するに「タイトル」と考えて良い。

インターネット上には「結局何が言いたいのかよくわからない文章」が散見されるが、これは「タイトル」を最初に考えていないことに多くの原因がある。

ブログでも、報告書でも、企画書でも「タイトル」を軽んじてはならない。

 

序論(リード)

次に序論つまり「読者がこの文章を読まなければならない理由を書け」とある。

要するにブログなどでは「リード」である。

本記事では以下の部分だ。

「わかりやすく書く技術」は、けっこう重要だ。

というのも、現代の仕事に於いては「書く」ことの重要性が増しているからだ。

メール、企画書、提案書、記事……

現代の働く人は、一昔前の働く人に比べ、多くの知識を扱うがゆえに、遥かに多くの「書く」作業を要求されるようになった。

良いリードは読者が「自分のために書いてくれている」と思えるように、「筆者と読者の共通体験、共通言語」をベースにして書くと良いだろう。

 

本論

リードを書き終えたら、次に取り掛かるのは「本論」だ。

同署で強調されているのは「概要から細部に向かって書く」ことなのだが、この記事の多くの読者に役立つのは3種類の「説得」の方法だろう。

1.従来の説、自分と反対の立場に立つ人の説の欠点を指摘してから次節を主張する(逆の順序も可)。

2.幾つかの事例をあげて、それによって自分の主張したい結論をみちびく(逆の順序も可)。

3.あまり重要でない、そのかわり誰にでも受け入れられる論点から初めて、クライマックスで抵抗の予想される自分の言いたいことを主張する(逆の順序も可)。

 

結び

結びは、本論の主たるポイントを列挙してまとめ、それらの重要性を強調し、将来への発展を示唆する。

短く、読者の記憶に残るように、簡潔に表現されなくてはならない。

 

しかし「わかりやすい」が「面白くない」文ができてしまう。

以上が「わかりやすい文章」の書き方である。

通常の「文章の書き方」講座では、ここまでの説明しかない。

 

だがここに問題が残る。

それは、上の書き方を踏襲してできたものは「面白い文章ではない」ことだ。

これはブログなどの記事を書いたことのある方ならだれでもかかえる悩みではないだろうか。

「わかりやすい」だけでは、読みやすいが面白くはない。だから、どこにでもありふれた文章になるし、読者も集まりづらい。

 

その先にある「おもしろい文」は、どのようにしたら実現できるのか。残念ながら、私には永らく、そこに対する回答がなかった。

 

だが数年前、ある大手出版社の編集者から「百年法」という小説を勧められ、それを読んだ時、突如として閃いた。

文章の面白さは「例え話」にあるのではないだろうか

不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―国力増大を目的とした「百年法」が成立した日本に、最初の百年目が訪れようとしていた。

処置を施され、外見は若いままの母親は「強制の死」の前夜、最愛の息子との別れを惜しみ、官僚は葛藤を胸に責務をこなし、政治家は思惑のため暗躍し、テロリストは力で理想の世界を目指す…。来るべき時代と翻弄される人間を描く、衝撃のエンターテインメント!

「百年法」は、衝撃のエンターテインメント、と謳う看板に偽りなしの傑作だった。正直、記憶を消してもう一度読み直したいほどだ。

 

だが、この「百年法」という本 の主題は、非常にシンプルだ。

仮に、この本の目的規定文を書いたとすれば、「不老不死が実現した社会の負の側面を、政治的、倫理的、技術的な観点から啓発する」となり、

そして、本論には

「世代交代がなされないことによる活力の喪失、格差固定の懸念」

「法の抜け穴を利用した独裁、専制政治の恐れ」

などのテーマが並ぶだろう。

 

しかし、上の話をただ論じたのでは、「わかりやすい」が「面白くない」のである。

おそらく、論文のようになるだろう。

 

そこで、架空の人物を登場させ、彼らの口を通して「不老不死社会の例え話」をいくつも連ねる。

我々は主人公の葛藤を通じて、「不老不死」の生み出す苦しみを体験し、政治がそれを利用することの恐怖を実感できる。

 

小説が面白いのは、それが「例え話」だからだ。

 

例え話を意識して書くことで「面白い」文章が立ち上がる。

これは小説だけではない。

例えば、私が好きなブログに、上田さんという方が書いた「真顔日記」がある。

中には様々な面白い記事があるのだが、白眉は「B’zの稲葉と同居しても自分は歌がうまいと思えるか?」だ。

 

この記事の無味乾燥な目的規定分を書けば、冒頭のリードにある通り

「「好き」のレベルが高い人と対峙すると、自分の「好き」が中途半端に思えて恥ずかしい」

だろう。

「好き」というのも相対的なものである。たとえば、あるアーティストのヒット曲をちらっと聞いて「好き」と言うのも、インディーズ時代から何十年と追っかけて「好き」と言うのも、言葉にするならば「好き」なわけである。(中略)

そして圧倒的な存在と同居したとき、人は自分の半端さを思い知らされる。私はこの数年、もう気軽にネコ好きを自称できなくなっており、もちろん好きは好きなんだが、頭のなかでは「まあ中途半端だけど」と思っている。

このテーマは昔から繰り返し語られているものであり、目新しいものではない。

だが著者はここで「例え話」を持ち出す。

例え話をしよう。

一人の男が「俺、そこそこ歌うまいよな」と思っている。カラオケでも高得点を出すし、高音もけっこう出るし、つか俺のファルセットやばくね? なんてふうに友人に言っている。これが、気軽にネコが好きだと言えていたころの自分である。

そんな男が、B’zの稲葉と同居することになる。私の現状はそれに近い。それでも以前と同じように「俺、けっこう歌うまくね?」と言ってられるかということである。

一体他に誰が、「B’zの稲葉と自分」をこの話題の中で比較しようと思うだろう。

しかも例え話の殆どは、著者の妄想である。

以下、私は実際の稲葉浩志がどんな人なのか知らないので、「日常のあらゆる局面で圧倒的な歌唱力をおしげもなく披露する人」という前提で書きますが、まず帰宅すると、家で待っていた稲葉は「おかえり」を「ウォ・カ・エ・リッ!」と言いますね。ちょっとポーズも取る。

このあたりまで来ると、もう文章に引き込まれて、一気に最後まで読んでしまう。

 

実は、「ソクラテスの弁明」も「論語」も、「神曲」も「マネジメント」も、名著は「例え話」がわかりやすく、かつ豊富に提示されていることが共通して見られる。

つまり、著者の個性や話題の面白さ、というものは「例え話」の中に存在していることがわかる。

 

言っていることが正しく、本質をついていたとしても、それだけでは数学の定理集を読むようなもので、「面白さ」を把握できる人は一握りだ。

いかに多くの人に、主張を体現する「例え話」や「事例」を提供できるか、これが「面白い書き手」と「普通の書き手」の分水嶺となっている。

 

「書くこと」は私たちの知識をアップデートする

そう言えば、大学の時の先生が、「何かを人に伝えたいときには、伝えたい事が整理できているかどうかを確かめるために、まず書いてみなさい」としつこく言っていた。

そして、その先生はこうも言っていた。「書くことで、思考が洗練されてくる。」

 

作家のジェイムズ・グリックは著書「インフォメーション 情報技術の人類史」の中で、「書くことが思考を作る」述べる。

わたしたちの知識は、書き言葉という仕組みによって得られたものだ。書き言葉がわたしたちの思考を構築する。(中略)歴史も論理も、それ自体が文字による思考の産物なのだ。

わかりやすく「自分の主張をまとめる」こと。

面白く「人に主張を伝える」こと。

この2つの能力は今後も非常に価値あるスキルの一つとなるだろう。

 

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