「普通の会社で1日8時間働き、普通の給料をもらって、それ程競争もせず、ゆっくり暮らしたい」という方がいる。全くもって真っ当な要望である。
が、一つの問題は「普通の給料」が一体どの程度なのかがわかりにくいことだ。そこで、「普通に働いて、普通の給料をもらう」ということがどういうことなのか、検証してみる。
現在は経済のグローバル化の真っ只中だ。そして、世界の人々の暮らしは増々フラットになりつつある。
それにスポットを当てたのが、下のTEDプレゼンテーションだ。
かつて、世界は2極化していた。
しかし現在、世界の所得の中央値は徐々にシフトし、先進国と発展途上国は平等になりつつある。
これを見ると、2015年には「普通の所得」は、1日辺り5ドルから10ドルの間、大体6ドル程度であることがわかる。
すると、世界的に見ると、普通の月収は「6ドル×30日」で、180ドル程度、月収1万8000円程度だ。
(画像出典:所得のフラット化 〜世界の変化をビジュアルで見る〜)
残念ながら、世界的に見ればこれが「普通」である。
皆がウェブを通じて「世界で一番安いところから買おう」、「世界で一番いいものを買おう」と考えて合理的に動いた結果がこれだ。
だから、今あなたが仮に「日本人」か、「先進国の市民」だとしたら、「普通」に働いている人は、今のままではほぼ間違いなく暮らしの水準は下がる。グローバル化は、「世界の人達が、皆同じように考え、同じものを欲しがり、同じ水準で競争する」ということが本質だからだ。
人道的に見れば、「平等」は実現されつつある。とても良いことだ。
が、暮らし向きの下がる人にとっては迷惑千万であることは間違いない。「アンチグローバリズム」はすぐとなりであなたを誘惑するのだ。「2極化バンザイ!」と。だが、その欲求は決して報われない。
とすれば、この状況を受け入れた上で、頑張るしか無い。「頑張らずに、普通以上の暮らし」は出来ないのだ。
だが、一つだけそうならずに済む方法があるかも知れない。それは「生産性」を向上させることだ。
この100年で、農業、工場の生産性は1000倍以上になった。同じ労力、エネルギーを投入しても、100年前に比べて圧倒的に現在は多くの事ができる。
ところが現在においても生産性が低いのは、「知識労働」だ。特に教育分野は400年前と生産性がさほど変化していない。アイデアを生みだし、無駄な労力を減らし、人の満足を少ない力で得られるように皆が働ければ、すべての人が「今より良い暮らし」ができるようになる可能性は十分にある。
ピーター・ドラッカーは、「共産主義がなぜ敗北したか」について「経済人の終わり」にてこう語る。
「マルクスの予言では、資本家と、労働者は相容れず、格差は広がるばかりだった。だが実際にはそうならなかった。それは圧倒的に工場における生産性が高まったからだ。生産性の高まった余剰分は、ほぼすべて労働者の手に入った。そして、中産階級が出来た。」
普通に働いて、今より良い暮らしができる。それが向かうべき方向であることは間違いない。
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