数年来の付き合いになるずんずんさん(Twitter界の古参アカウントでそこそこ有名な方)から今度出る最新刊を献本頂いたのだけど、とても興味深い内容だったので紹介させていただこうと思う。
タイトルは「ずんずん式、壮絶メンタルトレーニング」だ。
って壮絶メンタルトレーニングwww
これを書いたずんずんさんの経歴を簡単に紹介すると、本人曰く、機能不全家族(いわゆる毒親)育ちで大卒後に日系のウルトラブラック中小企業に勤務した後に、何故か外資系投資銀行へキャラ採用で転職に成功。
その後、日系のまったり企業に転職するも外資系で仕込まれたメンタリティで日系企業に拒絶反応が出現。
その後、何を血迷ったのか単身でアジア最大の金融街であるシンガポールに乗り込み海外就職に成功。
そこで世界レベルのエリートと切磋琢磨した後に日本に帰国。
現在は独立し、シンガポールで学んだコーチングという、自分の毒親体験を克服するのに役立った技術を日本で提供されているとのことである。
こう書くと「うぉぉ。この人めっちゃ優秀やん。うちらとはワケが違う人種だ」という感じがするけど、ぶっちゃけたことをいうと、ずんずんさんは結果的に”優秀となってしまった”だけである。
少なくとも、日系ブラック企業に務めていた当初のずんずんさんをみて「この人めっちゃ優秀やん」という人は残念ながら皆無だろう。
この本はメンタルトレーニングを謳っているけど、本質はそこいらにいる日系ブラック中小企業に務めている普通のOLが、資本主義というウルトラ弱肉強食の世界で、ハイスペックとしてどう適応していくのかが書かれているところにある。
あなたはここまで読んで
「おお、どんな凄いテクニックが書いてあるのだろう!」と期待に胸を踊らせるかもしれないし、あるいは
「エリートサラリーマンの仕事術?自分には全然関係ないな・・・」
と思うかもしれない。
これら2つの期待をある意味では壮絶に裏切るのかもしれないけど、本書に書いてある事はものっすごくドメドメな、どこの会社でもあるような普遍的な悩みの処世術である。
グローバルエリートとはいえ、やはりサラリーマンはサラリーマンなのだという事が実によくわかり、ある意味ではグローバルエリートへの変な幻想が全部ぶっ壊れる事うけあいである。
結局、どんなところに行ってもサラリーマンの処世術は変わらない
Books&Appsさんでも記事を執筆なさっている借金玉さんは、全てのサラリーマンは部族であると看過されていた。
<参考文献(この記事はハルオさんという方が描いた絵も相まって、ものっすごく面白いのでオススメ)すべての会社は部族である 〜発達障害の僕が見た部族の掟〜|転職サファリ>
簡単に言うと、どんなに上っ面を整えた所で、企業には文化があり、その文化のしきたりに従って皆とうまくやるのがサラリーマンという生物であるという事である。
例えば新入社員が会社に入った後に宴会で下世話な芸をやらされるのは、要は部族に入れてもらうためのイニシエーションみたいなものだというのである。
どこかの部族では成長した後、紐無しバンジーをやり遂げてようやく一人前として認めてもらえるという話を聞いたことがあったけど、つまるところ新入社員の宴会芸はこの紐無しバンジーと全く同じ事なのだ。
借金玉さんはその著書である「発達障害の僕が『食える人』に変わった すごい仕事術」の中で、この部族の掟を色々書かれているけど、ずんずんさんの新刊は借金玉さんとは少し異なった視点でサラリーマン部族の掟を書いており、これまた非常に興味深い。
組織の一員として認めてもらいたい? なら踊れ。
本書で一番笑ってしまったのはINSEADという世界ランキング1位のビジネススクールを卒業したインド人の話だ。
世界ランキング1位のビジネススクールを卒業したエリートなのだから、さぞ仕事での能力を問われる事だろうと思いきや、このインド人、入社してまずはじめにやった事は、上司の誕生日パーティに呼ばれて同僚と共に終業後猛烈に練習したキレッキレのダンスを披露した事なのだという。
これを見てずんずんさんは
「お前の世界一のビジネススクールに支払った学費600万円は、この時の為の投資だったか・・・」
と目頭が熱くなったそうなのだけど、これは正に先程書いた、新入社員が会社に入った後に最初の宴会で下世話な芸をやらされるのと全く同じである。
つまり社畜の掟は、エリートだろうが中小企業だろうが、世界各国で共通なのだ。
あなたがどんなに優秀だろうが、残念ながら上司の目の前で芸ができなければ、社会人として失格なのだ。
ちなみにこのインド人の彼だが、このダンスの結果・上司に気に入られたようで、外資系投資銀行で生き残る事に成功し、インドで豪邸を買えたのだそうだ。
ダンスで数億稼げたのだから、600万の投資は安いものだと言えるだろう。
これをみれば分かる通り、結局世界一の大学を卒業しても、仕事の能力だけ見て欲しいと訴えるのは甘えなのだ。
むしろ世界一の大学を卒業したからこそ、こういう本当にみっともない事までガチにマジにならなくてはならないのである。
かつてハーバード流宴会術という本が出された事があったけど、むしろ外資系のような様々な多様なバックグラウンドを持った人がやってくる組織だからこそ、このような泥臭い部族の茶番を徹底する必要があると言えるだろう。
<参考 今夜から酒の席で使える「ハーバード流宴会術」の極意(フライデー) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)>
世界各国の飼い犬が、飼い主の機嫌を取る為に腹をゴロッと上に出して甘える姿を取るよう、人間も上司に気に入って貰う為にダンスを踊るのは世界各国で共通の儀式な事なのだろう。
ちなみに先程紹介させていただいた借金玉さんも、新卒で入った金融系の会社でAKBを踊らされたのだそうだ。金融系は踊りが好きなのだろうか……。
本が読めるのなら、一からアレコレ全部再発見する必要はない。
これ以外にも、ずんずんさんの本には実に興味深い生き残り術がたくさん書いてある。
例えばお局様に目をつけられてしまったら、どうすればいいのかとか。
友達の顔をして近寄ってくる敵、フレネミー(フレンド+エネミーの混合語)とどう接すればいいのかとか(小・中学校の頃、こういう担任に告げ口して悪評振りまくヤツ、沢山おったわ……)
クソ使えない上司が入ってきた時、どうすればパージ(粛清)できるかとか。
このどれもこれも、解決できないと心穏やかにサラリーマン生活を送る事が極めて困難になる事例ばかりである。
これらを自分で一から解決方法を見つけ出すのは物凄く手間な事だけど、本書を読めばずんずんさんがわざわざシンガポールに行ってまで見つけてきてくれたエレガントな解法を身につけられるのだから、メチャクチャ安いものだろう。
このような「先人の見つけた偉大なる知恵をワザワザ再発見する」事を専門用語で”車輪の再発明”というのだけど、実際・こういう知識を一から見つけ出すのは本当に時間がかかる事である。
けどあなたが本を読む事ができるのなら、車輪を再開発することなく、これらの知識がスルッとこういう知識が身につけられるのだ。
こう考えると、本というのは本当に安い。ほんと、本が読めるだけで人生の難易度が圧倒的に下がるとしか言いようがない。いや、マジでな。
というわけでみなさんも本書を読み、サラリーマンの処世術を学び、人生の難易度を圧倒的に下げましょう。
とても読みやすく仕立ててあるので、誰でも読めるかと思います。
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