一時期、フリーランスという働き方がもてはやされた。
会社に縛られず、好きな時に働き、好きな時に休めるという生き方は、満員電車で揺られ定時出勤するビジネスパーソンからみれば夢のような環境にみえる。
「これからは組織の時代ではなく、個人の時代だ」
では実際問題、あなたはフリーランスで働いている人の実情をご存知だろうか。
今日は縛られない生き方の現実をキッカケに、マイルドな支配が一番心地よいという話をしようかと思う。
社畜は規則正しい生活を会社に外注させてる生き方である
人間、生きるにあたって健康が一番大切だ。
健全な精神は健全な肉体に宿るというけども、それらに最も大切なのは規則正しい生活である。
毎日同じような時間帯に寝て起きてを繰り返すだけで、人は割と健康を保つことができる。
この規則正しい生活だけど、実際問題自分でやってみようとすると実は維持するのが思いのほか難しい。
毎日同じような時間に寝て、同じような時間に起きるというのは、外部からの強制力が働かないとなかなか実践できることではない。
会社も学校も、一律に同じような時間で開始して同じような時間で終わるけど、あれはあれで実は結構意味があるのだ。
ああいう形で外部から強制的に規則正しい生活を共用されると、人は意外と規則正しく生活できる。
僕も学生時代は朝起きるのが本当に苦手で、働くようになってから寝坊しないか心配で心配で仕方がなかったけど、働きだすと嘘のように( ー`дー´)キリッと起床できるようになった。
仕事という強制力は素晴らしい。あんなにも自堕落だった学生も、会社という場所に規則正しさを委ねれば、嘘のように規則正しく生きられるようになるのである。
この規則正しい生活が、思いのほか人の健康に役立っていると知ったのは、フリーランスの知り合いが徐々に増えてからだった。
もともと規則正しい会社通いという、社会人生活にあまり馴染まない人が多いという事もあるのかもしれないけれど、フリーランスの人達は生活リズムはかなり不規則だ。
もちろん不規則なりに上手くやれている人もいるのだけど、中には生活リズムの乱れに伴い睡眠や食生活が乱れる事から、若くして健康を損なう人が結構いる。
ある僕の知り合いは、仕事がなくて暇だからと深夜に大量のアルコールを嗜むようになってしまい、それで随分と身体を悪くしてしまったそうだ。
彼は「会社に務めてたら、明日は仕事があるから飲酒もある段階でキリがつけられたけど、フリーになって出社の必要性がなくなった途端、自己管理能力が破綻した」と言っていた。
この話を聞いた時、会社勤めというのは、一見、会社に自主性を奪われているようにもみえるけど、その実は会社に規則正しい生活をおくるという意思決定を外注させているような効用もあるのだな、という事を初めて理解した。
マイルドな支配が一番心地よい
完全な自由は凄く大変だ。
「今日からお前の好きに生きろよ」と突き放されて困惑しない人なんていないだろう。
その一方で、ガチガチに管理されて自由が全くないのもまた辛いものがある。
人は、マイルドに支配されるのが一番心地よい。実はこの事はホッブズにより数百年も前に指摘されている。
「万人の万人に対する闘争」
このフレーズだけ独り歩きしているホッブズのリバイアサンだけど、そこに書かれている内容は今読んでも非常に新しい。
彼は国家というものを題材に、支配と自由の関係についてこれ以上無くわかりやすく私達に解説してくれている。
例えば日本という国は、基本的には非常に治安がよく、普通に暮らす分には割と悪くない国だ。
けどこの暮らしやすさは、国が法律や警察などにより、それなりの規制を敷いているからそこ維持されているものである。
これが撤廃されると国は荒れる。
ISISのような組織を持ち出すまでもなく、法と警察が機能していない国では私達は安心して暮らす事はできない。
これが「万人の万人に対する闘争」の真意であり、国が適切に権力を保持しうまく行使している事は、国民にとって幸せな事なのだ。
もちろんこの権力も強すぎると我々を不幸にする。
絶対的権力者と軍事組織で運営されている北の某国に進んで移り住みたい人なんていないだろう。
個人も国も、マイルドな支配がみんなを一番幸せにするのだ。会社というマイルドな支配は、私達を自由というリヴァイアサンから守ってくれているのである。
日常の中に特別を差し込んで、自分を支配してみよう
先日、安達さんが「習慣を設計できると、人生のクオリティが極めて向上する件」という記事を書かれていた。
実際、習慣は設計できれば随分と強い。毎日運動できれば、痩せるし食べても太らない身体が手に入る。
毎日勉強できれば、一年後には今とは比べ物にならない位、知識が深まる。
そんな事は当然みんなわかってる。けど、これができないから苦労しているのである。
これらを意思の力でなんとかするのは結構骨が折れる。
けど、実際にこれらを習慣化させられている人は、とても多くのものを得ているのである。
なんとかならないだろうか?では、1つのヒントを提示しよう。
日常の中に、やりたい活動を無理やり割り込む
僕の友人に随分と太った人がいたのだけど、彼は最近かなりのダイエットに成功した。
彼に一体何をしたのかと聞いた所、彼の答えは非常にシンプルなものだった。
毎日の通勤路の中で、全力疾走する時間を設けたのだという。
「何回か、運動を習慣化させようかと思ったのだけど駄目だった。わざわざ運動の時間を設けるのは、強い意志と継続力がいる」
「けど運動しないと痩せない。どうしたものかなーと思ったのだけど、そういえば通勤路で走ればいいじゃんって事に気がついたんだ」
「毎日、行きと帰りの2回だけ、全力で走る。会社には週5で通うのだから、自然と運動する機会もできる。これだけで今までジャージに着替えてわざわざランニングするダルさから逃れられたんだから、いい発見をしたと思うよ」
僕もこれを聞いて、家から病院まで毎日走ろうかと思ったものである。
後者の勉強はどうだろうか?これまた僕の知り合いで、改善した例をみてみよう。
彼女はどうしてもやりたい勉強があったのだけど、つい意思が継続できず続かなかった。
そんな時、ふと会社の帰り道に24時間営業のマクドナルドがある事に気がつき、そこで毎日退勤後に30分だけ、勉強するようにしたのだという。
彼女いわく、30分と区切りをつけるのがポイントなのだという。無制限に時間があると、どうしてもダラダラやりがちだけど、30分と区切りをつけることで集中できる。
それにキリが悪い所で終わると、それについてモヤモヤ考えてしまい、今まで絶対にやろうともしなかった自宅での学習のキッカケにすらなったというのだ。
このように人間は不自由の中で自由を発見できると、強烈に成長できる余地があるのだ。
「会社に支配されてるからできない、もっと自由があればできるのに」
こう言ってしまうのは簡単だろうし、僕もそういいたくなる気持ちはわかる。
けど多く人は大抵の場合、本当の自由を貰ってしまうと自由の重さに潰されてしまい、怠けがちだ。
だから、そんな重たい自由を求めるよりも、今のマイルドな支配を最大限に利用してみてはいかがだろうか?
枠組みを一から作るより、枠組みの中で工夫してみた方が遥かに生産性は高まる。
マイルドな支配を活用しよう。そこにこそ、本当の自由が隠れているものである。
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(Photo:David Blackwell.)