どうもしんざきです。

 

しんざきは一応中間管理職なのですが、どうも「人を評価する」というのが今ひとつ苦手でして、毎年上半期も終わりにさしかかるこの時期になると、人事の中間評価で気が重くなります。

最近、「なぜ上司が部下の評価をしなくてはならないのか?」「部下の評価をするのは、本当に上司であるべきなのか?」ということを考えています。

 

人事評価というのは何のためにあるかというと、基本的には「従業員のモチベーションアップ」と「人材育成」のためです。

つまり、がんばって成果を出した人が適切に評価されて、給与が上がったり、昇進したりする。

それを目指して、従業員が成果を出そうと努力する。あるいはがんばる気になる、モチベーションの維持と向上という側面。

 

また、「評価される人材はどういうものか」というビジョンが企業から提示される。

そこにたどり着く為に、各自が必要な努力をして、自らの能力を向上させる。

つまり、「企業が求める人材の育成」という側面。

 

この二つが、人事評価制度を持つ企業にとっての二つの大きな目的である、という点は、おそらくあまり異論が出ないところでしょう。

 

「自分は適切に評価されている」と感じると、従業員のモチベーションは上がりますし、評価される自分を目指して頑張ると人材が育ちます。いいことずくめです。

勿論これは、人事評価が上手くいっていればの話であって、実際にはなかなかそう簡単にもいきません。

 

「人事評価制度に関する意識調査」という、アデコさんが2018年にやったアンケート調査がありまして、ちょっとリンクさせて下さい。

「人事評価制度」に関する意識調査

 

このアンケートでは、人事評価制度に対して不満を持っている会社員は6割を超えており、更にその理由の多数を占めているのが「評価基準が不明確」であること、及び評価者の評価に対する不公平感であるようです。

部下のモチベーションを向上させる為にある人事評価制度が、実際には不満の種になってしまっている、というのは実によく見る光景です。

 

皆さんはいかがでしょう?自分に対する評価に満足出来ていますか?

 

***

 

ところで、会社員の人事評価を行うのは、一般的にはその社員の上司です。

会社によって制度は色々であって、目標を自身が設定してそれに基づいたKPIを設定するという会社もあれば、最終的な評価は人事部から出るという会社もあるでしょうが、まあ評価判断に上司の考課を全く参考にしない会社はかなり希少である、というのは恐らく言ってしまって問題ないでしょう。

 

ただ、決して自分が人事評価をするのが面倒くさいからというわけではないのですが、ここしばらく、「部下の評価をするのは本当に上司であるべきなのか?」ということについて結構考えているところなんです。

上司が部下の評価を行う理由は幾つかありますが、恐らく重要なところとしては、

 

・部下の働きの責任を直接とる立場だから

・部下の日頃のパフォーマンスを最も把握する立場だから

・会社のビジョンや目標を部下に伝える立ち位置だから

 

といった部分が大きいのでしょう。

勿論、部下の評価を適切に行って、部下のモチベーション向上に努めるというのは、上司の仕事、上司の能力判断の内でもあります。

 

一方、ご機嫌とりではないのですが、「自分の評価を行う人間」に対して部下の忠誠心、あるいはいいところを見せようとする心情を煽ることで、上司がメリットを享受している部分もおそらくあるのでしょう。

それ自体に文句があるわけではないのですが、「部下の評価を行うのが上司」という関係が固定化してしまうと、色々と弊害もあります。

 

・上司-部下という固定化された視点でしか評価出来ない為、多角的な評価が難しい

・上司が部下の働きを適切に管理・把握出来ていない場合、評価が全く見当外れになってしまう恐れがある

・上司が自分の好みや感覚で評価をつけてしまう人物だった場合、激しい不公平感が発生する可能性がある

・上司が会社のビジョンを的確に伝えられていなかった場合、育成方向のピントが壮絶にずれる

 

早い話、上司一人が「評価」というキーを握ってしまうが為に、上司の能力、評価の仕方一つに、部下のモチベーションや成長全てがかかってきてしまうと、そういう話なのです。

実際のところ、「よくわかっていない上司のよくわかっていない評価で、部下がブチ切れて会社を辞める」というのは、人事評価あるあるです。実によくある話です。

 

冷静に考えまして、上司が人事の専門家であるかというとそういうケースはむしろ希少であって、大多数の上司は「業務知識は持っていても、人事のノウハウを持っているわけではない」訳です。

 

勿論上司の職務として部下のモチベーションを向上できるような適切な人事評価が出来るよう努力はしているものの、会社から人事評価についての指導や研修を受けられるわけでもなく、半ばは自分の感覚頼りに人事評価をすることになってしまっている、という会社さんも恐らく少なくはないのでしょう。

 

かくいう私も、一応上司と言う立場にあって、まあ勿論あれこれ考えて適切な評価を出来るよう頑張ってはいるつもりなんですが、会社から「人事評価のノウハウ」とか「部下を育てる人事評価とは」みたいな指導を受けた記憶はありません。

これ、言ってしまえば、「人事評価という最重要な業務の一つが、専門外の人間にまかせっきりでほぼ野放しにされている」という状態と同値だと思うんですよ。

 

先ほどのアデコさんの意識調査をもう一回引いてみたいんですが、なかなか興味深いことに、「自分が適切に評価を行えていると思いますか」という質問には8割近くの人が「そう思う」と答えているんですよね。

評価する側は自信満々で「適切に評価を行えている!!」と考えている一方、部下の方はさっぱりそう思えていないという、深刻なミスマッチの状況が伺えます。これ、どうすればいいんでしょうね?

 

***

 

ところで、しんざきは最近、新しい部署の立ち上げに携わっています。

細かいことはまた別途書こうと思っているんですが、基本的には他部署のサポートをする頻度が高い部署でして、データ分析みたいなこともすればPMOみたいなこともします。

 

で、ここでの初めての人事評価が間もなく行われるんですが、今回「評価の他部署へのアウトソース」というものを試そうと思っているんですよ。

つまり、「上司一人に評価基準を持たせてしまうと無視出来ない弊害が発生する」のであれば、「複数人数に評価のキーを渡してしまおう」と。

いや、決して、人事評価をするのが面倒くさいという話ではないんですよ?

 

幸いなことに、新しい部署は、他部署の業務をサポートする機会が非常に多く、他部署との接触が満遍なく発生する部署です。そこで、

 

・部下がそれぞれ設定する目標の中に、「他部署から、業務に対して貢献出来たという評価を得る」という項目を含める

・実際に、業務で関わった他部署のメンバーに、アンケート形式で、業務の達成にどの程度寄与出来たか、という評価を出してもらう

・かつ、その評価の点数は、そのアンケートを提出したメンバーの成果によって重みづけをする

 

という方式を考えてみたんです。

いや、この方式自体は多分他にもあると思うんですが、一応自分で考えたので一旦勘弁してください。

 

勿論、評価する人を増やすことによって、評価の視点自体も広がることが期待出来ることは言うまでもないのですが、部署の性格上、「サポート対象の部署への貢献度」というものが、割と明確な尺度として動作するという要素もあります。

 

一方、好みやら仲の良さといった業務と関係ない視点が評価に影響してしまう可能性も勿論あって、まあそれ自体ヒューマンスキルと言えないわけでもないんですが、評価の公平性を上げる為に、「評価者が出した成果」というものを評価の重みづけに含めると。

 

会社により貢献している人が高く評価してくれるのであれば、会社にとって望ましいサポートが出来た可能性もより高くなり、評価自体の妥当性も高まるのではないかと、そんな風に考えているわけなんです。

 

これについて、人事部やら私の上司やらと相談してみたんですが、幸いなことに「お前が面倒くさいだけやろ」とは突っ込まれておらず、「まあ面白そうだし一度やってみれば?」ということになりました。

昨今、360度評価やら、メンバー評価といった新しい人事制度が出てきていることもあり、割と理解を得られやすい状況だったのだろうとは思います。

 

実のところ、この方式は今まさに実施中であって、かつ何回か試してみてブラッシュアップしないといけないだろうと思っているところでもあります。

その為、今の時点で成功だ失敗だを云々することは出来ないのですが、もしかすると上述の、「部下の満足度と、上司の満足度のミスマッチ」に対する一つの回答にはなり得るのではないかなーと。

 

我が社としては完全に初めての試みであって、実際やってみてどうだったか、というのは再度ご報告するつもりなので、良かったら経緯をお待ち頂ければなーと考える次第なわけです。

よろしくお願いします。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

(Photo:Ethan