スターバックスがオーストラリアから撤退するというニュースが少し前にあった。
スタバ、オーストラリア事業から撤退 地場コーヒー文化に屈する(時事ドットコム)
”コーヒーチェーン世界最大手の米スターバックスは、赤字が続いていたオーストラリアの直営店運営事業から撤退することを決め、従業員に通知した。豪メディアが28日報じた。スターバックスは2000年の豪州進出後、一時は84店を展開したものの、欧州系移民が多い同国ではカフェ文化が根付いており、過当競争から苦戦。コーヒー1杯が5.5豪ドル(約520円)と割高なことも消費者に敬遠された。”
スターバックスは一見好調に見えるが、2008年から2009年頃にかけては本国アメリカで深刻な経営不振に陥り、経営の立て直しを急ピッチで勧めた経緯がある。そして、その際に取った手法が「郊外化」だ。それは、現在進めている欧州や中国での経営の手直しにも使われている。
米スターバックスが経営陣刷新 中国小売り事業と欧州部門再建に注力(WSJ)
”家賃が高い店舗を閉め、ドライブスルーを増やし、マーケティングを改善するなどの対応も行っている。シュルツ氏によると、こうした戦略は数年前に低迷していた米国売上高を回復させた措置に倣っているという。”
そして、その流れは確実に日本にも押し寄せている。スターバックスコーヒー・ジャパンのIR資料を見ると、内情がよく分かる。
まず、新規の出店はほとんどが郊外のショッピングセンター、もしくはドライブスルーだ。おしゃれなイメージが有る繁華街やビジネス街は既存店のリモデルやリフレッシュで対応しようとしている。不採算店舗として、全体の1%程度の店舗を閉めているが、これは家賃の高い都心の物件だと推測できる。
また、一見客単価も向上しているように見えるが、実際にはドリップコーヒーの単価は殆ど変わらず、単価の高い各種フラペチーノの新商品を次々に打ち出して、単価を向上させている。
つまり、スターバックスはすでに「おしゃれで都会にあり、コーヒーをゆっくり楽しむ場所」から、「郊外にたくさんある、甘い飲み物を提供するファミリー向けの場所」に変化しつつあるということだ。
この変化は本国アメリカでも顕著なのだろうが、日本においても不可避なのだろう。
そういう背景をかみしてみると、オーストラリアから撤退したのもうなずける。オーストラリアはカフェ文化が根付いており、「おしゃれなカフェ」は、スターバックスが現れる前の日本やアメリカなどよりもずっと多かっただろう。日本やアメリカでは「コーヒーを飲む場所」は、オジサンだらけで、煙草の煙臭い場所だったのだ。だから、スターバックスはその隙間に入り込むことが出来た。
しかし、オーストラリアのようにもともとカフェ文化のある場所では入り込む余地が少ない。むしろ、「高くてカッコ悪いチェーン店」のイメージではなかったのかと思われる。
米本国では、スターバックスが増えすぎたため、ブランドイメージが損なわれたという。スターバックスのおしゃれなイメージはそろそろ転換点を迎えているのではないだろうか。
(事業サービス責任者-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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