以前、副業について、こんな記事を書いた。

 

いま、大流行の「副業」が、日本型雇用に風穴を開ける日(Books&Apps)

「高い能力を持つ人」が、更に稼げるようになるのが「副業」(三菱UFJ国際投信 mattoco life)

 

ただ、「副業」がすぐに一般的なものになるか、と聞かれたら、私は懐疑的だ。

いずれの記事にも、「結局のところ副業とは、ハイスキル人材がさらに稼げるようになるためのものであり、年収400万円前後の中間所得層には縁遠いものだ」とわたしは考えていた。

 

しかし。

上の記事をお読みいただいた方から、「純粋にお金がほしい、生活レベルをワンランクアップさせたいから、普通にダブルワークとして、副業している人もいるんです」という話を頂いた。

彼の話では、ポートフォリオワークで本業と副業、合わせて年間670万ほどの稼ぎを出しているとのこと。

これはわたしの了見が浅かったと思わざるを得ない。

 

そこで、実際の話を聞くために、川崎に行ってきた。

 

31歳、新潟出身、介護福祉業、年収460万、副業150万。

彼は現在、31歳、昼間はフルタイムで介護福祉業に従事しており、年収は460万円。

新潟出身で、立命館大学を卒業している。

そして夜間の副業は時給1060円の「警備員」。すでに4年以上アルバイトしており、バイト仲間の中でも、古株だという。

 

早速、年収670万円の内訳を聞くと、

・本業460万円

・副業(警備員アルバイト)150万円

・投資35万円

・その他25万円

となっている。

 

思っていたよりも、収入の内訳が多彩だ。

「投資はなにをしているのですか?」と聞くと、「給与と、アルバイト料の手取り合計45万のうち、10万円を生活費、35万円を株の購入に充てており、その配当収入がある」とのこと。

「その他」とは?と聞くと、金融商品のプロモーションを手伝ったり、お小遣い稼ぎサイトなどからの収入という。

 

そこで、思った。

これは、前に書いた記事の、ウォーレン・バフェットのアドバイスそのままではないか、と。

意外かもしれませんが、世界一の投資家として名高いウォーレン・バフェット氏は「まず貯蓄」と述べています。

“早いうちから貯蓄することを学ばないのは、大きな間違いだ。なぜなら、貯蓄は習慣だからだ。ゆっくりお金持ちになるのはたやすいが、手っ取り早くお金持ちになるのは極めて難しい。

出所)The Motley Fool”Warren Buffett Reveals the Biggest Mistake We Make When It Comes to Money”

計算してみると、20代前半から月に5万円の貯金で、30歳をすぎる頃には手元に600万円も貯まる。

これは60代の保有する金融資産保有額の中央値と同程度だ。

彼の現時点での全財産が750万円。

数字も合っている。

(参考:アラサー(31歳)、ダブルワーカーの全財産

 

副業には「やりがい」も「自己実現」も不要

彼の主張は明快だ。「副業には「やりがい」も「自己実現」も不要」だというのだ。

 

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「カッコいい副業」「自慢できる副業」の話ばかりしている人が多いけど、私は「ワンランク上の生活」を目指して、お金を貯めるために副業を始めたひともいるってことを知ってほしいんです。

 

やりがいの前に、生活です。

僕の警備のアルバイトの同僚には、ダブルワーカーが結構います。

 

例えば、昼間はJASDAQに株式公開している企業で正社員をやっている人がいます。

歳は20代後半で、給料の上がる資格を取ろうと頑張っているのですが、本業の年収は現在、「360万円」です。

360万円だと、手取りは月25万くらい。生活は出来ますけど、ゆとりはない。

贅沢品を買ったり、旅行に行ったりするのも難しいです。

 

もちろん、生活できないわけではありません。

でも、安定と言えば安定はしているけど、全く面白くはないです。

 

年収300万、400万では全く余裕がない。選択肢もない。なにか起きた時に、どうしようもない。倹約ばかりの人生です。

でも、会社の給料は上がらない。残業もやらせてもらえない。

だから、稼げるアルバイトをする。たくさん働きたい。

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私が感じた限りでは、彼はアルバイトを楽しそうにやっていた。

働き詰めといえば、そうなのだが、悲壮感はない。

 

わたしは、なんとなく好感を持った。

「お金が欲しい」と言いながら、なにもしない人はたくさんいるが、彼はなんのかんの言わず、稼ぐため、やることをやり切っている。

倹約を実行に移す意志力もあり、「財産」を形成する過程を楽しんでいる。

多分、あと十数年、これを続ければ、本当にお金持ちになるだろう。

 

過労では?

だが、私は一つ、気になることがあった。

「働きすぎでは?」という疑問だ。

そこで彼に、労働時間はどれくらいなのか。と聞いてみた。

 

まず正社員として、20日×8時間=160時間

そして、アルバイトが月に約90時間ということだった。

 

90時間……?

確か「過労死ライン」が80時間だったはずだ。

彼はそれを超えて、働いているのだ。

 

「体とか、大丈夫なんですか?」と聞くと、彼は「 全然元気っすよ」と言う。

 

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月に、最小で5時間からシフトに入れるので、疲れたら休みます。

あと、本業が長期休暇のときは月120時間、体力ない月は60時間と、自分でバランスは取ってます。

 

警備員のバイトは立ちっぱなしじゃないですし。

シルバー人材センターのおじいさんとかができるんだから、若者ならもっとできますよ。

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確かに、過労死ラインのような制度は一番弱い人に合わせて作られているし、規制もそうあるべきだろう。

会社はもはや、長時間社員を働かせてはいけないのは間違いない。

 

でも、HARES.JPの西村さんが言うように、確かに「働きたいだけ働く権利」は誰にでもある。

もっと働きたい!という人の「働く権利」について考えてみる。

もちろん、若者を中心とした「もっと働きたい!」という人の声を見過ごして良いわけはありません。

「働きたい!」というエネルギーを徹底活用することなくして、社会の活性化はありえないと考えています。

ただ、その「働きたい!」というエネルギーの使い道が「残業」しかないと考えているのだとしたら、それはあまりにも残念です。

あなたのそのエネルギーや類い稀なスキルやナレッジを求めているのは、あなたの会社だけではありません。

HARES.JP

「働きたい個人」が、このように働くのは、自由だ。

 

 

ただ、働きすぎは心身ともに悪影響がある。

だから企業側が「もっと働きたい人もいる」などと勧めるのは、私はあまり賛同できない。

 

実際、タニタが社員を「個人事業主化」したというニュースを見たが、これは、賛否あるだろう。

タニタ社長「社員の個人事業主化が本当の働き方改革だ」

残業の削減をすれば改革になるのか」。谷田社長は常々こうした疑問を持っていたという。

過労死を招くような長時間残業は避けるべきとしたうえで、「たくさん働きたい人に対してきちんと報いる仕組みがないことが問題」とし、そのアンサーとして「社員の個人事業主化」を提示する。

この制度に社長自身手ごたえをつかんでいるようで、「2021年春の入社組は、全員が個人事業主になることを前提として採用するつもり」であることを打ち明けた。

タニタは「個人事業主化は強要しない。個人の意志だ」というだろう。

それが「すきなだけ働きたい人が働けば良い」のだと。

 

まあ、そのとおりかもしれない。

 

だが、どうか。

個人事業主が「クライアントが1社だけ」という状態は、収入の多寡によらず、サラリーマンよりも遥かにまずい状態なのは明らかだ。

はっきり言えば「いつ死んでもおかしくない」状態と言ってもよい。

それを「たくさん働きたい人に報いる」という表現はちょっと誤解を招くと思う。

 

本当に個人事業主化を勧めるのであれば、最低限、ちゃんと「タニタから」独立できるように

「残業させない」

「副業を支援する」

そして

「タニタ以外の仕事の口を紹介する」

などを先にやってから、個人事業主化を推進するのが、筋ではないか。

 

そうすれば、もはや彼らはタニタに頼る必要がない。真の意味での「独立」だ。

それならこの制度は機能するかも知れない。

言ってしまえば、「出来る人」ほど、タニタの仕事を重視しなくなって初めて、この制度は成功なのだ。

 

果たして、タニタにはその覚悟があるのだろうか?

タニタは「タニタに忠誠を尽くす必要などない」と、言い切れるだろうか?

 

私は、上で取材した31歳の若者のほうが、

「安定収入」

「副業収入」

「投資収入」

「業務委託収入」

と、ポートフォリオを組んでいる時点で、タニタの制度を遥かに上回る、賢く、時代に合った立ち回りをしていると感じる。

 

 

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