NHKの大河ドラマが、史上最低の視聴率を記録したというニュースを見た。

大河史上最低視聴率で“完走”の「いだてん」…最後の最後に漏れたNHK制作トップの本音

リアルタイム視聴率という数字だけを見れば、「史上最低の大河」と言われてもしようがない結果。18日、東京・渋谷のNHKで行われた同局の編成・制作の総責任者・木田幸紀放送総局長の定例会見でも「いだてん」に関する質問が当然のように集中した。

これだけを見ると、どんなにひどい番組だったのか……と思ってしまうが、どうやらそうでもないらしい。

 

ネットで特にこき下ろされているイメージはない。

楽しく見ている人は見ているし、温かいコメントも見かける。

最低視聴率、と言うフレーズが一人歩きしているが、「駄作」という声は、実はかなり少なかったのではないだろうか。

『いだてん』、最低視聴率に終わっても「名作」と言えるワケ

NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』の全47回の平均視聴率が関東地区で8.2%、関西地区で7.1%(ビデオリサーチ調べ)となり、大河史上最低となった。

視聴率は低迷したものの、評価が低かったわけではなかった。

『いだてん』を「名作」と言い切る時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが振り返る。

視聴率は低いが、作品の評価は決して低くはない、おそらく、これは本当なのだろう。

 

だが「「いだてん」は、特に駄作ということでもなかった」が正しいとすると、問題はもっと深刻だ。

真の問題が「コンテンツ」側ではなく、「テレビ」というプラットフォームの側にあることになるからだ。

 

だから、「テレビはつまらない」という言説を見かけるが、おそらく、本質はそこにはない。

 

実際、テレビは「つまらない」から見られなくなったのではなく、

「つかいにくい」から、見られなくなったのだ。

 

 

うちには、かなり前からテレビがない。

正確に言うと、ディスプレイモニタはあるのだが、NHKの言う「放送を見る設備」が、もう長いこと存在しない。

 

ウチでは、子どもたちが言う「テレビ」は、AppleTVのことで、彼らはAmazonプライムビデオや、Youtubeをディスプレイモニタで視聴し、それを「テレビ」と呼んでいる。

 

子どもたちが「本当のテレビ」を見るのは、おじいちゃん、おばあちゃんの家に行ったときくらいで、それもリアルタイムの放送ではなく、全て録画したものを見ている。

そして、観察する限り、彼らには「放送」という概念が無い。

 

実際、先日こんなことがあった。

たまたまYoutubeで、昔見ていたアニメがやっていたので、懐かしくなって子供と一緒に見た。

宮崎駿も監督を努めたこのシリーズは、私の子供時代の1週間に一度の楽しみであり、放送を首を長くして待っていたものだった。

 

それを子どもたちに話したところ、

「なんで一週間に一度しか見れないの?」と娘に真顔で聞かれた。

「一週間に一回しか放送しなかったから」と言っても、娘はまったくピンときていない。

 

まあ、それはそうだろう。

すでに、「放送」のイメージが、娘たちには全く存在しないのだ。

 

彼女たちの世界では、コンテンツはすでにそこにあるものであり、見たい時に見るものだ。

最初の5秒でコンテンツを判断し、つまらなければ横のおすすめコンテンツをタップすれば良い。

 

そんな彼らに「1週間待たなければならなかった」と言ったところで、全く理解されないのは当たり前だろう。

 

 

繰り返しになるが、個人的には、テレビの番組には、質が高いものがあることも、認識している。

多くはないが、「見てもいいかな」と思う番組もある。

 

ただ、仮にテレビを所持していたとしても、私はおそらく見ない。

なぜなら、テレビの前に座るのが面倒だからだ。

 

リビングで見るよりも、そのへんに寝そべって、スマホやタブレットを見る方が楽なのだ。

 

また、家族が近くにいるのも問題だ。

ホラーコンテンツなどは、残酷なので子供に見せたくない時もあるし、妻からは嫌がられるだろう。

そもそも、みんな見たいものが違う。

 

皆で見ていると、「つまらないな」と思った時に、チャネルを買えることもできない。

ビデオに録画していなければ、結論だけ教えろ、という気分になったときに、早送りもできない。

 

結局今は、家庭においても、個人が好きなものを勝手に見る時代だ。

寝室やデスクで、一人でYoutubeを見ていたほうが、遥かに楽である。

 

だからもう、私は正直なところ、テレビをどうやって生活の一部にしていたか、思い出せなくなってきている。

 

 

一方で、唯一の牙城である「番組の質」も、すでに、テレビの専売特許ではなくなってきた。

 

先日、テレビ番組の制作会社の人と打ち合わせをした時、幹部の方から

「安達さん、Amazonの番組製作費、知ってます?桁違いですよ」という話を聞いた。

 

調べてみると、確かにそのとおりであった。

動画配信サービス、ドラマ1本の制作費は映画並み

近年は、AmazonプライムビデオやNetflixといったネット動画配信サービスが存在感を高めている。

これらのサービスがドラマやアニメ、ドキュメンタリーなど、オリジナルの番組コンテンツ制作に力を入れるようになったことで、コンテンツ流通現場のビジネスモデル自体が変化してきた。

映画並みの制作費をかけたコンテンツが全世界向けに配信されるようになっている。高品質な作品を手軽に見られるのは視聴者にとっては喜ばしいことだ。一方で、主戦場がテレビからネットへと移る中、日本のコンテンツは勝てるのか。

しかもその方が言うには、収益モデルもコンテンツ作成サイドにとっては、テレビよりネット配信のほうが遥かに旨味があるとのこと。

関係者「良質なドラマ企画は全てAmazonプライムビデオに流れている」地上波テレビはもうダメだ!

「『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』が配信されるなど、近年はオリジナル映像作品も登場しています。そのプライムビデオの契約では制作費をAmazon側が出すんですが、著作権は芸能事務所が持つことができると聞いています。

そのやり方だと、配信したあとのDVD化などは事務所の独断で可能ですし、制作費は出してもらえるのでリスクも抱えません。

このような形で取引してくれる会社は国内にはないので、芸能事務所や映像制作会社はこぞって企画書をAmazonに持ち込んでいる状況です」(芸能事務所関係者)

もちろん、このやり方だとビュー数が伸びなければ、あっという間にAmazonに切られてしまうが、ヒットコンテンツを作れば、収益は青天井だ。

最初から「グローバル展開」を見据えて、番組を作る制作会社も出てくるだろう。

 

また、当然ながら、金の流れが変われば、コンテンツを制作サイドの才能も、そちらに流れる。

ジャガーさん「若者がTVを見ないのは当然だ」

テレビは昔とやっていることが変わっていない。昔と同じ人が今も出ている。

ビートたけしさんとか、ベテランがずっと出ている。彼らの存在が偉大だし、代わりがいないんだろうね。

若くて魅力的なスターが出てこないから若い世代の視聴者が見ない、ということもあると思う。

 

先日でた「No.1ユーチューバーは、年収28億の8歳児」は、衝撃すぎるニュースだ。

ネットには才能ある者にとって、夢がありすぎる。

今年最も稼いだユーチューバー、年収28億円の8歳児 フォーブス

【AFP=時事】米誌フォーブス(Forbes)は18日、動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」で今年最も稼いだクリエーターのランキングを発表した。1位は年収2600万ドル(約28億円)を稼いだ8歳のライアン・カジ(Ryan Kaji)君だった。

 

一方で、テレビでは未だに、ローカルの芸能人がワイワイやっているだけの番組も多数ある。

そんなことで大丈夫なのか、と他人事ながら思ってしまう。

 

 

ただ、先に述べたように、本質的には「コンテンツ」でいくらテレビが張り合っても、問題は解消しないだろう。

「テレビを見ない」ことの原因が、コンテンツの問題ではなく、放送というプラットフォームの問題なので、コンテンツにテコ入れしただけでは、視聴者は戻ってこないからだ。

 

重くて扱いにくいハードウェア

融通の効かない、垂れ流しのプラットフォーム

大昔から変わらないインターフェイス

「リモコン」というダメなUI

 

これらによって、テレビは、面白いコンテンツを十分に活かすことができない。

さらに、「番組」の拡散性も乏しい。録画もコピーコントロールでままならず、テレビの機種を変えれば録画した番組が見れなくなる。

面白い場面のシェアもできない。

 

一体、視聴者は、質が高いコンテンツをどうやって発見すれば良いのだろう?

拡散をネットに依存するしかないのであれば、すでにテレビに勝ち筋は見えない。

 

 

近々、私はPS4でやりたいゲームがあるので、4Kの解像度が再生できるモニタに変えようかと思っている。

もちろん、テレビではなく、4Kのディスプレイモニタにするだろう。

 

一つの理由は、テレビよりディスプレイモニタが遥かに安いこと。

ドン・キホーテの施策は、すでに一般層にも、そのような需要があることを見越している。

ドンキ、「チューナー無しの液晶テレビ」を発売。32インチHDで2万円

デジタル製品に詳しいEngadget読者なら「それってPCモニターでは」というツッコミが入りそうですが、慣れ親しんだリモコンによる操作性や多くの機器を接続できる拡張性をアピールするために、あえて”チューナーが無いテレビ”と謳っているのでしょう。

 

もう一つは、義務となっている、公共放送の高額なサブスクリプション契約を結ばされたくないからだ。

月額2000円以上のサブスクリプション契約は、他のサービスとの比較で問題外である。

さらにこれは、有料課金以外の選択肢がなく、「プラットフォーム」として、最悪である。

 

さようならテレビ番組。

聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。

君はいい友人であったが、NHKがいけないのだよ。

 

 

うちの子供達がスマホを持つようになるのは、もう数年後だ。

その時に、彼らには「放送を見る」という選択肢はないだろう。

 

みたい番組は、webのサービスで。

Youtubeで?

Amazonで?

AppleTVで?

Netflixで?

Huluで?

 

……

この、NHKって、何?

どんなアプリ?

 

これしか動画がないの?

つまんなーい。

 

そんな反応が当たり前の世代が、すでに目の前にいる。

 

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元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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