最近、「電話してくる人」への風当たりが驚くほど強くなってきている。

 

電話は迷惑というひとたち

ちょっと調べるだけでも堀江貴文氏を筆頭に、「電話嫌い」の方々がワラワラ出てくる。

堀江貴文氏「電話してくる人とは仕事するな」

「自分の時間」を奪う最たるもの。それは「電話」だ。 僕は「電話に出ないキャラ」を確立している。

電話で話す必然性のない用事なのに、やたらと気軽に人の電話を鳴らす者がいるが、僕は絶対に応答しない。相手がどんなに偉い人であろうが、僕は「電話に出ないキャラ」になると決めている。

電話は多動力をジャマする最悪のツールであり、百害あって一利ない。仕事をしているときに電話を鳴らされると、そのせいで仕事は強制的に中断され、リズムが崩れてしまう。

 

極論だろうか?

だが、極論にしては賛同者が多すぎるし、堀江氏がただ感情的に否定しているわけでもなさそうだ。

そして「電話は受けない」という人は、電話が苦手だと言われる若手だけではなく、年代も様々である。

 

成毛眞氏

電話をかけてくる人は、仕事がデキない!…成毛眞氏が断言する「納得の根拠」

ホリエモンの言い分には、私も完全に賛同する。電話する必要がないような用事で電話をかけてこられて、自分の時間が奪われるのが、とにかく腹立たしい。

澤円氏

電話は若手が取れ…4つの「昭和的価値観」が働き方改革を阻む

電話は耳と口をふさぐ、前時代的なコミュニケーションスタイルなので、本当に必要な場面に利用を特定した方が、生産性向上には貢献してくれるでしょう。

田端信太郎氏

イーロン・マスク

週100時間働くイーロン・マスクの超人的な1日

スケジュール通りに仕事を進めるため、電話にはほとんど出ない。

メールアカウントにスパムメールが届かないよう、彼は予測不可能なメールアドレスを使用する。

 

これらは決して「主観に基づく、勝手な主張」ではない。

データから見ても、世の中が「電話不要」(あるいは縮小)の方向性にあるのは間違いないようだ。

 

例えば、総務省の「平成 28 年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、平日の固定電話、携帯電話共に、行為者率が減っている。

固定電話 6.8% → 2.6%

携帯電話 25.8% → 15.5%

ネット通話が若干増えているが、微々たるもので、逆に増えているのはソーシャルメディアだ。

13.2%〜30.5%にまで跳ね上がっており、かつての電話と完全に逆転している。

 

「音声通信」そのものが使われなくなってきている

事実、総務省の通信量からみた我が国の音声通信利用状況(年度)という統計を見ると、ここ16年で「総通信回数」が4割も減少している。

 

・モバイル・IP電話は増、固定電話は減。音声通話の総量は毎年右肩下がり。

・音声通話回数を示す「総通信回数」は、2001年に1384.0億回→2017年に821.8億回と、4割減

 

このように、電話の代替手段が発達し、増えてきた結果

「電話いらなくね?」と考える人が多くなったのは、全く不思議ではない。

 

また

「固定電話から携帯電話へのシフト」と「知識労働の増加」

も、電話が迷惑と考える人の増加と無関係ではないだろう。

 

これは、ピーター・ドラッカーの指摘のとおりだ。

仕事の多くは、たとえごくわずかの成果をあげるためであっても、まとまった時間を必要とする。

こま切れでは、まったく意味がない。何もできず、やり直さなければならなくなる。

報告書の作成に六時間から八時間を要するとする。しかし一日に二回、一五分ずつを三週間充てても無駄である。得られるものは、いたずら書きにすぎない。

ドアにカギをかけ、電話線を抜き、まとめて数時間取り組んで初めて、下書きの手前のもの、つまりゼロ号案が得られる。

携帯電話は「電話が直接」本人にかかってくるため、電話を受けるためにはどうしても「中断」が要求される。

 

知識労働の「中断」は、即、生産性の低下につながるため、これを深刻に捉える人が多くなったのだろう。

 

 

個人的には、正直、私も電話は嫌いだ。

かけるのも、受けるのも、できれば避けたい。

 

なぜなら、前にも書いたが、「仕事を中断してまで受ける価値のある電話は少ない」からだ。

これは「電話を受ける」コストが、「電話好きに配慮する」ことのメリットを上回っていることを示す。

 

例えば、私はスマートフォンに会社の電話番号のIP電話をインストールしているが、

かかってくる電話の殆どは迷惑電話だ。

迷惑電話は全て登録をし、着信拒否にしているうちに、自然にこうなった。

 

逆に、商談も、殆どがSNS、チャット、あるいは問い合わせフォームから来るので

結果的に、私もまず「電話には出ない。」

電話に出るのは、相手がわかっているときだけだ。

 

また、秘匿性が低いのもいただけない。

昔は「電車内で通話は迷惑」などと騒がれたものだが、今はむしろ「そんな会話を公衆の面前でして大丈夫?」という人がいる。

電話の会話、聞かれてますよ、と。

 

「パソコンの画面、見えてますよ」より、「電話の会話、聞こえてますよ」のほうが

むしろ良くないのではないだろうか。

 

しかし今なお「電話好き」は存在する

しかし。

電話嫌いがいくら増えたと言っても、依然として世の中には「電話好き」もまた存在する。

 

単純に、電話は「かける側にとって都合の良いツール」だからだ。

また、受ける側も「楽でいい」という人も、場合によってはいる。

 

それは、次のようなメリットによる。

・相手に「今すぐ」依頼ができる

・(大変な)文章を作らずにすむ

大きくはその2点から「電話のほうが早い」という理由で「電話好き」は電話を使う。

 

また、少数派ながら「メールやチャットより電話のほうが丁寧」という方もいる。

さらにその昔は「電話は失礼!手紙を書け」と言われたはずなのだが……。

 

とはいえ、そんな事を言っていても、「電話好き」と付き合わなくてはならないこともある。

では、「電話好き」を、我々のような「電話嫌い」は、どのように扱えばよいのだろうか。

 

一つには、堀江貴文氏を始め、冒頭に掲げた人々のように、バッサリと「相手しない」で切り捨ててしまうのも一つの手だ。

まあ、私も基本的には、その方向に世の中が進むだろう、と思っている。

最近は企業も人手不足で、「皆がやりたがらない仕事」にコストを掛けないからだ。

 

だが現在は過渡期であり、残念ながら「電話好き」を無視できるシーンばかりではない。

 

例えば大口顧客の担当者が、「電話好き」の場合。

そんなとき「電話は嫌いなんで、受けてません」というのは、結構な勇気が必要だろう。

 

あるいはクレーム対応。

相手は「すぐに対応してほしい」と思っているだろうから、実際の対応の時間に差がなかったとしても、電話を好む人が多いだろう。

中には「感情を相手にぶつけたいから」という理由で、電話を選択するシーンも少なくない。

 

結局、立場が強い人は「電話拒否」を貫けるが、現在では機会損失のリスクを背負ってまで、「電話拒否」をやり切るのは立場が弱い、一介のビジネスパーソンには難しい。

だから、いきなり電話がすぐに無くなることはないだろう。

 

しかし、個人でできることもいくつかある。

 

普通のビジネスパーソンが、電話してくるやつとは仕事しない、を実現するには

かつていくつかの「電話中心」なクライアントを、メールやチャット中心に変えていただいた事がある。

 

といっても、別に強引なお願いをしたり、「電話は受けません」とか、突っぱねたわけではない。

やったことは簡単で、いくつかのことをしただけだ。

 

1.メールの署名から電話番号を消した

2.個人のSNSアカウントを、「こっちのほうがつかまりやすいです」と教えた

3.電話がかかってきたら、SNSで「すみません!いま打ち合わせ中です」即レスした

4.(セキュリティが許す限り)打ち合わせに使う資料はチャットでおくった

 

次第に、ほとんどのクライアントは、電話してくることがなくなった。

即レスも不要になっていった。

要は、「電話よりチャットが便利」と相手に認識してもらうことが重要なのだろう。

ほぼメール、もしくはチャットのみにすると、「言った、言わない」のトラブルも減るのでこれもありがたい。

 

最近は名刺にも電話番号を入れない人が増えたが、弊社もそれに習おうかと思っている。

できる限り社員が電話を取らずにすむ環境は、もはや必須なのだ。

 

 

*本記事は、月1万円から「煩わしい電話番業務をアウトソースできる」電話代行サービス【fondesk】のスポンサードによって制作されています。

 

 

【著者プロフィール】

◯Twitterアカウント▶安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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