「東京がロックダウン(封鎖)されるかもしれない」という話を、各所で見かけるようになった。

「まさか」と思ったし、上の会見でもそれは否定されている。

 

だが、今回のコロナウイルス禍は、その「まさか」が連発しているので、全く油断できない。

最悪のことを考えておく必要もある。

 

日本ではその予定はないと政府が発表しているが、海外の国々、例えばイタリア・フランス・イギリスではすでに「ロックダウン」が行われており、違反者には罰金などの処罰もあるとのこと。

うーむ。

とても他人事とは思えない。

 

だが、本当に「ロックダウン」が発生したらどうなのだろうか?

いっそのこと、現在の状態がダラダラ続くのなら、東京を封鎖してでも、一気に事態を収束させるようにしたほうが良いのだろうか。

そのあたりについて、正確なところが全くわからない。

 

そう思っていたところ、ごく親しい研究者がスパコンを使ってロックダウンの影響を調べていた。

この研究を行った井上さんは、兵庫県立大学でスパコン「京」(注:現在「京」から「富嶽」へのリプレース中)を使って、様々な数理モデルを基に、複雑なネットワークの振る舞いを調査・研究している。

 

こんなご時世なので、webチャットで色々と話を聞いたのだが(左:安達 右:井上さん)

結論から言うと、

「ロックダウンやばい」

である。

 

東京が封鎖されるとたった「2週間」で、東日本大震災と同じくらいの経済的被害が出る可能性

試算では、東京が封鎖されると「2週間」で、東日本大震災と同じくらいの経済的被害が出る可能性がある(内閣府のレポートによると、震災による GDPの減少は、GDP の 1.25%~2.25%だった。)

 

日本のGDPの成長率は年間1%前後なので、たったの2週間で、2年分くらいの成長は吹き飛ぶ計算だ。

論文のサマリーは下のスライドシェアで見ることができる。

 

実は「ロックダウン」の経済的影響は、各所が試算を行っている。

首都封鎖の経済損失 1カ月間で5.1兆円の実質GDP下押し 第一生命試算

新型コロナウイルスの感染拡大で東京都が都市封鎖(ロックダウン)された場合、物価変動を除く実質の国内総生産(GDP)が都内だけで1カ月間に約5兆1千億円下押しされるとの試算を第一生命経済研究所がまとめた。

 

首都圏封鎖ならカナダと同等規模の経済活動がまひの恐れ

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、東京がロックダウンになったら経済活動がほぼストップしてしまうことになるため、「オリンピックの延期よりも影響は大きくなる」と指摘。仮にロックダウンが1カ月続いた場合、夏場に新型コロナが収束して回復に向かうという前提でも「2020年のGDPを1%くらい押し下げる要因になる」と予想する。

 

ところが、残念ながらこれらの試算は「かなり楽観的」な予想だ。

記事中にも「サプライチェーンの影響は含まれていない」と書かれているように、東京の経済活動が止まってしまうことによる、全国への波及効果が含まれていない。

熊野氏はこれでも「非常に楽観的な計算」だと指摘する。東京や南関東の経済活動が6割減れば全国規模でサプライチェーン(供給網)が混乱し企業の事業活動が停滞するなど大きな波及効果が想定されるが、試算には含まれないからだ。

 

私が知りたいのは、今までハズれ続けてきた楽観的予想ではなく、悲観的予想、すなわち「ワーストケース」だ。

最悪、どうなっちゃうの?

を、このような緊急事態のときには抑えておく必要がある。

 

そのリアルなシミュレーションのために日本企業160万社のサプライチェーン(相互の取引)の影響を加味した計算をしたというのが前述の井上さんの研究だ。

(日本の企業をほぼ網羅するサプライチェーンデータの様子)

この推計は、東日本大震災で発生した被害を、スパコン「京」で分析し、その結果を用いた数理モデルを回して得られた結果であり、信頼性は高い。

 

上を見るとわかるように、

1ヶ月封鎖が続けば「5年分」

2ヶ月封鎖が続けば「10年分」の、日本の成長が吹っ飛ぶ。

あの恐慌、リーマン・ショックのときですら、GDP成長で言うと、マイナス5%程度だ。東京封鎖は事実上、経済の「死刑宣告」にも等しい。

 

今はすでに「戦時」

これを見て、私は愕然とした。

これって、本当の本当にヤバくないか?

 

爆発的に感染者が増え、近親者に死者などが出れば「経済が停滞したとしても、人の命には替えられない」と皆が思うようになるのは当然だろう。

そして、東京は封鎖され、経済は死ぬ。

 

だだが、経済が死ぬと、病気ではなく、今度は絶望で死ぬ人が増える。

インドの主要都市で暴動が起きかけている例でみるように、貧しい人にそのしわ寄せがまず行ってしまう.

 

もう間に合うかどうかもよくわからない。

アメリカではすでに「戦時」だ。

ナバロ米大統領補佐官、コロナ対策は「戦争」 WSJインタビュー

【ワシントン】ピーター・ナバロ米大統領補佐官は、連邦政府が新型コロナウイルスの封じ込めに向けて、倉庫の検査から不足物資の増産要求まで、戦時の権限を行使してありとあらゆる手段を活用すると表明した。

 

といっても、私にできることは「不急の外出を控える」「手洗い」「換気」くらいしかない。

だが、下の記事にもあるように、今はひとりひとりの小さな努力が大事なときなのだ。たぶん。

医者の僕でも、コロナウイルスをナメていたが、間違っていた。

この問題を解決するのは、わかりやすいヒーローや勇者のような英雄的存在ではない。

全国の医療スタッフは当然として、わたしたちひとりひとりの草の根の民の努力が、こいつには1番効くのである。

 

ひょっとしたら気がついてないかもしれないけど、私達はみな1人のコロナウイルススレイヤーである。

微力であっても「東京が封鎖」されるという、最悪の状況を回避するために、やれることはやっておきたい。

 

 

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

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元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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