「わたしも好きなことを仕事にしたいなぁ〜」

 

ドイツでフリーライターをしていると、ときどきこんなことを言われる。

わたし自身好きなことを仕事にしている身なので、「いいと思うよ〜」とうなずく。

 

が、そこで「たとえばなにをしたいの?」と聞くと、「それがわかんないから困ってるんだよね(笑)」と返ってくることがほとんどだ。

SNSでも「好きなことを仕事にする」というフレーズは溢れているが、いざ自分が好きなことはなにか、どうやって仕事にするか、となると、途方にくれてしまう人が多い。

 

でも好きなことを仕事にするのって、そんなにむずかしいことじゃないと思う。

需要に対して、供給をすればいいだけなのだから。

 

需要があるところに供給することで商売は成り立っている

そもそも仕事とは、需要があるところに供給することで成り立っている。

どんな業種だろうが働き方だろうが、これが大原則だ。

多くの人がほしいと思う商品は売れるし、だれも望んでいないサービスはまったく話題にならない。

商売は、「お客様」がいてこその世界。

 

……ということは?

そう、好きなことを仕事にしたいのなら、お客様を確保し、需要に対して供給すればいいのだ。

 

思えば自分も、まさに需要に供給するかたちでフリーライターの世界に飛び込んだ。

もともとは、ドイツでの生活が思うようにいかず、「なんだこのやろう」という鬱憤を、こっそりとブログに書き殴っていた。

そんなチラシの裏に書いたような文章でも、ありがたいことに「おもしろい」と言ってくださる方が現れ、少しずつ読者が増えていった。

 

「もしや自分の文章って需要があったりする?」とライター仕事を探してみたら案外すんなり拾ってもらえて、いまに至る。

好きで記事を書いていたら、それを望んでくれる方が現れ、その需要に応えるかたちで供給したら、商売として成り立った。

話としては、至極単純だ。

このような「好きが高じて仕事になりました」が、うまくいくパターンなのだと思う。

 

無給でももともと好きでやってたんだから本人は当然楽しいし、すでにファンがついているからある程度うまくいく目処が立っている。

0から1にするのではなく、1を増やしていく作業だから、商売開始のハードルも低い。

 

主婦のブログがバズる→料理研究家や、イラストの二次制作者として有名になる→イラストレーター、などもそうだ。

知名度があるプロブロガーも最初は趣味だったことが多いし、最近は小説投稿サイトから人気に火がつき小説家デビューする人も少なくない。

 

好きなことをする→需要が生まれる→お客さんが集まる→仕事になる

この流れが、「好きなことを仕事に」の王道である。

(なかには最初から計算づくで成り上がる人もいるけど、そういう人は「好きなことを仕事に」ではなく「経営者」タイプなのでここでは割愛)

 

需要を無視して自分が売りたいものを供給しても利益は出ない

しかし「好きなことを仕事にしたい」という人は、需要の有無よりも、「自分がやりたいこと」を優先して供給しようとしがちだ。

「大学を辞めてブロガーとして生きていきます!」というタイプを想像するとわかりやすい。

 

「自分が」やってて楽しいから、「商売」になると思って見切り発車してしまう。

で、案の定「カネを払ってくれるお客さんがいない」「仕事につながらない」という状況になる。

「そりゃそうだ」という展開だ。

 

わたし自身、その昔、ドイツ語で日本語の日常会話を紹介する動画をアップしていたことがあった。

ドイツの語学学校で日本語教師のアルバイトをしていた経験もあり、自分自身楽しくやっていたのだが、いかんせん再生数が伸びない。

 

多くのドイツ人は英語ができるから、日本語を学びたければ、教材量が多い英語で検索するのが一般的。

そしてそこにはすでに、日系アメリカ人や元通訳など、わたしなんかよりよっぽど2ヶ国語に精通した人たちの動画が転がっている。

自分が逆の立場でも、自分の動画を見ようとは思わなかっただろう。

 

いくら自分がやってて楽しくとも、需要がなくお客様がいないのでは、「商売」にはならないのだ(趣味ならそれでいいんだけどね)。

 

自分が何屋さんであるのかを決めるのは、店ではなく客

「好きを仕事に」というと「自分が選び決めること」だと思いがちだけど、そもそも需要とは、他の人が決めることだ。

 

たとえば、こういう話がある。

オーナーの氏家健治シェフは、元はイタリアンレストランをやっていた方で、食後のデザートとして出していたガトーショコラが評判を呼び、家に持ち帰りたいというお客さんが続出したため、テイクアウト商品としての販売を開始。

これが圧倒的人気を呼び、とうとうお店の業態自体がイタリアンからテイクアウトのスイーツ専門店に代わってしまったのです。

自分が何屋さんであるのか、それを決めるのは店側ではなくお客さん側であることの好例といえるでしょう。

出典:繁盛店に「職人」はいらない

いくら「自分が好きなことをやりたい!」とはいえ、仕事として成立させたいのであれば、お客様が必要だ。

で、お客様がすでにいる場所で商売すれば、当然うまくいきやすい。

要は「他人から評価されている自分」の姿を認識して、それをベースにしながら自分のつくりたい店を組み立てていけば間違いがない、ということなのです。

出典:繁盛店に「職人」はいらない

わたしの場合、自分の主義主張を書くオピニオン系の記事が好評だったから、それを強みにした。

ドイツのお役立ち情報がよくバズっていたらドイツ特化ライターになっていただろうし、恋愛記事のリクエストが多ければ恋愛系ライターになっていただろう。

 

自分の「好き」と他の人からの「需要」が一致することが大事なのであって、「自分はこれがしたい! だれかこれにお金払って!」と自分視点でしか考えないのであれば、趣味にとどめておいたほうがいいと思う。

 

好きなことを仕事にしたいなら、自分の強みと他人からの需要が交わる場所で

あなたはこれまで、

絵が上手いから、毎年部活の勧誘ポスターを描いていなかったか?

文章を書くのが速いから、グループワークで清書を任されなかったか?

連絡がマメだから、カレンダーでのスケジュール管理を頼まれなかったか?

料理が得意だから、宅飲みでおつまみをねだられなかったか?

 

そういう小さなできごとも、まわりがあなたに求める「需要」であり、あなたが他の人にできる「供給」なのだ。

好きなことを仕事にしたいのであれば、そういう身近な需要に応えることからはじめてみたらどうだろう?

 

もしここで、

「他人からなにかを求められたこともないし、これといった特技もねーよ」

という気持ちになったのであれば、「好きなことを仕事に」は考え直したほうがいいと思う。

 

需要がないということはお客様もいないのだから、それでは商売は成り立たない。

それなら、まずどこかに就職して手に職をつけるとか、資格をとるとか、そういう堅実な道を第一ステップとして、自分の需要を見極めるほうが確実だ。

 

「いやだから、そういう遠回りはしたくないんだよ。『自分の』好きなことをやりたいんだって」

こんな反論がきそうだけど、「客がほしいもの」より「自分が売りたいもの」の話ばっかりしてる人は、どのみち大成しないと思う。

自分の好きなことだけを考えるのではなく、自分が作りたいモノと求められたモノが交わる場所で商売する、という考えのほうがいいと思う。

 

何度もいうけど、仕事というのは、需要があって成立するのだから。

 

 

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(2021/06/09更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

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