リーダーシップがあって人を引っ張っていける人は、一般的に「有能」だと言われる。

だから、「リーダーシップの鍛え方ノウハウ」なんかが盛り上がるのだ。

 

とはいえ、「船頭多くして船山に登る」という言葉があるように、全員がリーダーを目指す必要はない。

そもそも最初はみんな部下からスタートだし、ある時はリーダーだけどある時は部下、という中間管理職もいる。

 

それならリーダーシップよりもまず、リーダーにうまく使ってもらう能力、つまり『部下力』を磨いたほうがいいんじゃないか?

 

夫はレストランの店長、わたしは店員ではちゃめちゃクッキング!

みなさんは、オーバークックというゲームをご存知だろうか。

PS4、Switchなどでプレイできる「はちゃめちゃクッキング・アクションゲーム」だ。

最近夫とプレイしているのだが、これが思いの外盛り上がる。

出典:https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000010088.html

 

ゲームの内容はシンプルで、左上に表示される注文どおりの料理を用意し、提供するというものだ。

この写真でいえば、一番最初に作るべきは、「パン+焼いた肉+チーズ」の「ハンバーグ」。

 

まずわたしが肉を取り出し、夫がそれを切ってフライパンで焼く。

それを待っている間、わたしはパンとチーズを皿に乗せておく。

肉が焼きあがったら夫はそこに肉を挟み、わたしが持っていく。

わたしが料理を運んでいるかたわら、夫は次の食材を用意して……

と、協力しながら注文をさばいていく。

 

のだが。

「肉焦げてるよ! 遅れてるから先に料理を提供しないと!」

「次はチーズなしバーガーだからパンだけを皿の上に置いて……ああ、皿がない! 洗わなきゃ!」

「ちょ、通れない! どいて!」

「その肉切り終わってないから焼けないよ!」

 

と、うまくいかないこともしばしば。

まさに、「はちゃめちゃクッキング・アクションゲーム」である。

 

しかもわたしは、時間制限があるマルチタスクがめちゃくちゃ苦手だ。

時間がなくなると焦ってパニックになるし、即座に優先順位をつけることもできない。

だから夫が指示役でレストランの店長、わたしはその部下……という感じでプレイしている。

(これは性差ではなく、向き不向きを踏まえた役割分担である)

 

というわけで、夫に仕切ってもらうなかで、「上司にうまく使ってもらうならこの3つが大事だな〜」という気づきがあったので、『部下力3か条』としてお伝えしたい。

 

指示の目的を理解して動けば+αができる

まず一番大事なのが、『指示の目的を理解する』ことだ。

 

1番はじめに作るべきはトマトスープなのに、「玉ねぎスープを作って」と言われたことがあった。

よくわからないまま玉ねぎスープを作ったものの、指示の目的を理解していないから、次になにをすればいいのかわからない。

だから、「作ったよー。で、次はなにをすればいい?」と聞く。

でもこれでは、指示がなければなにもできない人間になってしまう。

 

実はそのとき夫は、

「トマトスープは注文からかなり時間が経っているから、作っても提供が間に合わない。2番目の玉ねぎスープから作れば間に合うし、万が一間に合わなくても、3番目の注文も玉ねぎスープだからそっちに使える。よし、トマトスープは捨てて玉ねぎスープを優先だ」

と考えて、わたしに指示を出していたのだ。

 

もしわたしが指示の意図を理解していたら、

「玉ねぎスープが連続しているから、まとめて玉ねぎを切っておこう」

「スープを煮込んでいるあいだ、先にお皿を用意しておこう」

「うまく連携が取れているから、4番目のきのこスープの準備をしてもいいかもしれない」

と、+αの作業ができたのに。

 

わたしは「玉ねぎスープを作れ」という指示を受けた時点で、

「最初のトマトスープはパスでいいのね? じゃあ2番目、3番目の玉ねぎスープをまとめてつくるよ」と確認すべきだったのだ。

 

指示の意図が理解できなければ、指示の範囲でしか行動できず役に立てない。

指示の意図を理解していれば、自発的に指示以上のことができる。

 

より積極的に、より効率的に、より柔軟に仕事をするために、指示の意図を理解してから行動することは大切だ。

 

指示の精度を上げるために、作業進度は正確に報告する

2番目に大事なのは、『上司にこっちの状況を的確に伝える』こと。

 

上司とはいえ、同じ人間。自分の仕事だってある。

常にこちらの作業の総量や進行度を、完璧に把握しているわけではないのだ。

 

言われるがままにどんどん指示を受けると、「こいつに丸投げすればいい」と思われるし、それで作業を終わらせられないと、「引き受けたのにやらなかった」とマイナス評価になってしまう。

だから、上司から最適な指示をもらうために、部下は現在の作業量や進行度を、ちゃんと自己申告する必要がある。

 

「いま自分はこれをやっていて」「あとどれくらいで終わる予定だから」「これくらいの余力がある」と、伝えるのだ。

そうすれば、「全部丸投げされて手が回らない」「仕事がどんどん増えて終わらない」といったことも防げる。

 

たとえば、

「さっきトマトを切ってって言われたからそっちやってるんだけど、玉ねぎスープ優先する? トマト切り終わってからでいい?」と聞く。

すると、

「それなら俺が玉ねぎスープ作るから、トマトスープを最後までお願い。終わったら皿用意しといて」

「はーい」

と、話が進む。

 

こちらの作業進度を正確に伝えることで、相手の指示の精度が上がり、うまく仕事がまわっていくのだ。

 

遠慮せずに上司にも指摘&お願いしたほうが効率的

最後はこれ。

『上司にもどんどん指摘&お願いしたほうが、結果的にうまくいく』。

 

わたしは、時間制限があるマルチタスクが苦手だという自覚がある。

それに対して夫は素早い判断ができ、ゲームもうまいから、「仕切ってもらえばいいや〜」と思っていた。

 

「あれ? こっちから先にやったほうがいいんじゃないかな? でも『これやって』って言われたから、それに従ってればいいか」と楽をしていたのだ。

でも次々と注文がきて、汚れた皿が積み重なり、食材が散乱するキッチンでは、そんなことも言ってられない。

ドタバタと料理をつくるなかで、わたしからも夫に指摘&お願いをするようになった。

 

「ポテト焦げてるよ!」

「お皿溜まってるから洗って〜」

「提供口遠いから運んでもらっていい?」

という感じで。

 

すると作業のスピードがどんどん上がり、雰囲気もよくなって、うまく協力できるようになった。

まぁ、当然といえば当然かもしれない。

 

萎縮せずに上司のミスを指摘できれば、事前にトラブルを防ぐことができる。

相手からミスを指摘されても、「お互い様」とフォローしあえる。

上司が自分の負担を軽くするために部下に仕事を振って効率化するなら、その逆もしかり。

こちらがしんどければ、上司に手伝ってもらえばいい。

 

もちろん、上司に「それできてませんよ」「これやってください」と言うのは、は現実的にむずかしい。

でも、上司に遠慮することは、「有能な部下」の必須条件ではないはずだ。

 

理想論かもしれないが、「部下の話をちゃんと聞く」ことがリーダーシップの要件であるのなら、「上司に率直に伝える」ことは有能な部下の要件だと思う。

 

いい部下になれなければ、いい上司にもなれない

夫とオーバークックをプレイして強く思ったのは、「他人にうまく使ってもらえない人間が、他人をうまく使うなんてムリ」ということだ。

 

他人の指示を理解できない人が、的確な指示を出せるわけがない。

自分の状況を報告できない人が、他人の状況を把握できるわけがない。

他人に指摘やお願いをできない人が、全体の指揮を執れるわけがない。

 

リーダーシップうんぬんは、まず「部下としてうまく使ってもらう」ことができてからだ。

とはいえ、今回書いたのは、あくまで「マトモな上司のもとで有能な部下になるために身に付けたい能力」である。

無謀な量の作業を押し付け、ストレス発散のために部下を叱責し、自分ばかり楽をするような上司であれば、『部下力』なんて鍛えようもない。

 

でももし信頼できるリーダーのもとで働けるのなら、その人のもとで『部下力』を鍛えることは、将来に大きなメリットをもたらすと思う。

 

わたしはフリーランサーで個人作業が多いから、いままでリーダーシップというものをそこまで意識してこなかったけど。

でもだれかからお仕事をいただくという広い意味で捉えれば、『部下力』はきっと、だれにでも必要なものだ。

というわけで、今日も元気にオーバークック!

 

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

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