この前、とても素敵な人に出会った。

 

とあるゲームで、ギスギスすることが多い高難易度に行ったときのこと。(ギスギス=キツめの指摘や下手な人を除外するなどによって、空気が悪くなること)

プレイヤーのひとりが常にフォローしてくれたおかげで、足を引っ張る犯人探しがなかったばかりか、驚くほど和やかな雰囲気で遊ぶことができたのだ。

 

ポジティブな言葉をかけてくれる人がいると、こうも空気がよくなるんだなぁ。

超絶ネガティブなわたしだけど、わたしもこの人のように、まわりの人の気持ちをやわらげられる人になりたい。

どうやったらなれるんだろう?

 

……と考えた結果を、今日は書いていきたい。

 

空気が悪くなる手前で、ぐっと雰囲気を良くしてくれる人

「さっきから○○のタイミングで死んでる人多いですよね。対処法わかってますか?」

「テロしないでください(敵の攻撃に味方を巻き込む行為)」

「アイテム取ったのだれだよ。俺のぶんないんだけど」

 

高難易度コンテンツでは、こういった発言が飛び交うのも日常茶飯事(なぁなぁだとクリアできないし、のんびり遊びたい人が来る場所ではないからね)。

そのせいでピリついた空気になることも多いのだが、この前はそういうのがまったくなくて、むしろ和気藹々と遊ぶことができた。

 

その輪の中心にいたのは、レイさん(仮名)というプレイヤーである。

「さっきから○○のタイミングで死んでる人多いですよね。対処法わかってますか?」に対し、

「自分のためにも一度確認させて! こういう処理でいいんだよね?」

 

「テロしないでください」に対し、

「あの攻撃、範囲が広いからまわりに当たっちゃうんですよね〜。あの目印の前まで逃げるといいですよ!」

 

「アイテム取ったのだれだよ。俺のぶんないんだけど」に対し、

「ごめん、自分がやっちゃったかも。自分のぶんわたしますね」

 

こうやって、空気が悪くなるちょっと手前で、すかさずフォローをいれてくれるのだ(ちなみにアイテムをとったのはレイさんではなかった)。

サラッとこういうことできる人って素敵だよねぇ、うん。

 

とくに感心したのが、レイさんの「でも」の使い方だ。

「すみません、ミスしました」と言われたら、「でもさっきより上手でしたよ!」と言う。

「申し訳ないのですがここがわかりません」と言われたら、「でもそうやって質問してくれるとこっちも答えやすいから助かります!」と言う。

「なかなかクリアできませんね」と言われたら、「でも最初よりだいぶ進んでますよ!」と言う。

 

空気がちょっと重いほうに傾いたら、「でも」を使って、ぐいっと『いいほう』に持っていくのだ。

そのおかげで、高難易度にも関わらず、明るい雰囲気でワイワイ楽しむことができた。

 

悪いことが起きても、いいことに目を向けられる強さ=ポジティブ

そこでふと、『スキップとローファー』という漫画のワンシーンを思い出した。

 

過疎地から上京した、高校1年生のみつみ。まっすぐで純粋、ちょっと鈍感で天然な女の子。

同じクラスのミカは、みつみと仲がいいイケメンの志摩くんが好き。

けん制のためにみつみに近づくが、みつみはそんなことに気づかずミカを友だちとして慕う。

ミカも、そんなみつみにほだされて、なんやかんや仲良くなっちゃう……という流れだ。

 

ある時クラス対抗の球技大会でバレーをすることになり、運動オンチのみつみは、元バレー部のミカにコーチを依頼。

しかし練習のために体育館に行くと、上級生の男子2人がふざけて遊んでいるところだった。

ミカにぶつかっても謝らないし、みつみが「1年生が使う日だ」と言っても2人は完全に無視。

ムッとするみつみとミカだが、そこに現れた男子生徒が「白井、柴本、はやく出ろよ」と注意したことで、一件落着。

 

「白井と柴本。心の許さじノートにしかと刻んだからな……!」と、鬼の形相で心の中でブチギレるミカ。

一方のみつみはというと、「福田さんって先輩かっこよかったね。注意してくれて」と笑顔で言う。

ミカが驚いて「知ってる人だったの?」と聞くと、「ううん、靴に名前があったから」と。

 

そしてミカは、「私がムカつく奴の名前をふたつ覚えてる間に、岩倉さんは親切にしてくれた人の名前をひとつ覚えるんだろう」と、自己嫌悪して落ち込むのだ。

 

そしてみつみに、

「村重さんも元バレー部でしょ。なんで私に(コーチを)頼んだの?」

「私、岩倉さんにやな奴だったもんね。迷惑かけやすかった?」

と嫌味を言ってしまう。

 

しかしみつみは、「ちょっと当たり強いかな?と思ったことはあったんだけど」と認めつつも、

「言い方はキツかったけど噓ついたりはしてないよなって」

「忌憚ない意見を言ってくれると思って」

「実際わかりやすかったし、すごく練習してじょうずになったんだなってわかるよ」

と答えるのだ。

 

わたしはこのシーンが大好きで、ことあるごとに思い返す。

わたしもミカ側で、めちゃくちゃ根に持つし、嫌なことがあるとそればかりに囚われて、なかなか前を向けない。

ムカつくやつのことを許してあげられない。気持ちを切り替えられない。

いいことが10あっても、悪いことが12起これば、すべてがダメだったような気がしてしまうのだ。

 

でもみつみは、そうじゃない。

いいことが10、悪いことが12あっても、ちゃんといいところにも目を向けられる。

ミカがちょっと意地悪をしてきても、「でもいいところもある」と思える。

 

悪いことに飲み込まれない強さがあるから、まわりの人々を明るい気持ちにすることができるのだ。

 

自分のたったひと言で『いい雰囲気』にすることができる

というわけで、わたしもレイさんやみつみを見習って、悪いことばかりに囚われず、「いいこと」に意識的に目を向けることを心がけてみた。

 

そんなある日、最近ゲームをはじめた初心者さんが、「これに挑戦したい」と言った。

「いいよー」「行こう行こう」と、わたしを含めすぐに協力者が集まる。

 

しかしちょっと古いコンテンツなので、みんないろいろと忘れていてミスを連発。

初心者の人は死にまくり、他の人のフォローも不十分、失敗を繰り返す。

「すみません……」と、言い出しっぺの初心者さんががっくりと落ち込んでしまった。

 

それに対し、

「自分も忘れてて罠に引っかかっちゃった。ごめんなさい」

「俺も判断が遅かったです」

「もう少しイケるって欲張ったら被弾しました」

とみんなが反省しはじめ、ちょっと重い空気に……。

 

もちろん、自分のミスを自覚し、みんなと共有すること自体はいいことだ。

でもそれに引っ張られて謝罪・反省大会になってしまうと、暗い雰囲気になってしまう。

というわけで、満を持してキーボードをカタカタ。

 

「でも、初めて来たのにここまでできるってすごいですよ! みんな思い出してきてるから、何回かやればクリアできるかも!

△△さんのフォローナイスだったし、××さんもさっきノーミスでしたよね!」

 

そう書き込んだところ、みんなも

「たしかに! 自分のときはもっと苦戦したよw」

「うん、どんどんよくなってるから、3回くらいやればいけそう」

「ちょっとあそこ確認してもう1回やってみよう!」

と答えてくれて、なんだか全体が『いい感じ』になったのだ。

 

自分の一言で全体が『いい雰囲気』になったのは、すごくうれしかった(ちょっと偉そうな書き方だけど、本当にそう思ったんだ)。

 

いい雰囲気づくりを心がけるだけで、対人関係ストレスがぐっと減る

「なんかピリついてるなぁ」というタイミングで、「でもここがよかったよ!」と声をかけ、明るい雰囲気にする。

いい雰囲気をつくりだすように意識しはじめてから、ちょっとした発見があった。

しょーもない言い合いや、自分のことを棚に上げて他人を責めるような人との遭遇率が、明らかに激減したのだ。

 

よく考えれば当然で、自分自身が『いい空気』をつくれれば、自分はつねに『いい雰囲気』のなかで生きていける。

そうすれば対人ストレスが減るし、楽しい時間が増える。

まわりも、「この人といると楽しい」と思ってくれるから、人の集まりもよくなる。

すばらしい好循環!

 

もちろん、「いつでもどこでも空気をよくすべき」というわけではない。

人のせいにし、暴言を吐き、愚痴をこぼし、言い訳を続けるような、ネガティブをばらまくがいるときは、おとなしく距離をとる。

いくらこっちが『いい雰囲気』にしても、その人たちは、それをぶっ壊してくるからね。

 

でもまぁ、ちょっと空気が重くなったそのタイミングで、「でもこうだったよね!」とプラスに持っていくことを意識すれば、人間関係ってこうも快適になるんだなぁ、と思ったのだ。

 

「でも」をうまく使って、自分を楽にしてあげたい

「ポジティブになろう」と思ったところで、性格なんてそんなにすぐに変わるわけじゃない。

落ち込むし、いじけるし、自信がもてないし、愚痴りたくもなる。

でも、うまくいかない状況のなかでも、なにかしらの「いいこと」は、きっとどこにでもある。

だったら、そこに目を向ける強さを持ちたい。

 

たとえ悪いことが12あっても、「でもいいことも10あった! 大丈夫大丈夫、いい感じ!」というと、計算上はマイナスでも、なんだかプラスのほうが大きかったような気になれる。

そうやって、自分を楽にしてあげたい。

 

それを常に心がければ、その空気が伝染し、全体の雰囲気がよくなり、人間関係もなんだか『いい感じ』になる。

わたし自身まったくもってポジティブな人間ではないけど、一言言うくらいなら、性格を大きく変えなくともできる。

落ち込んだ時、うまくいかない時、空気が悪い時、そういう時に「でもプラスなこともあったよね!」と考えるだけでいいのだから。

 

だったら、やってみたい。やってみよう。

まわりの人のためではなく、なによりも自分が、『いい雰囲気』のなかで生きていくために。

 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

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