「同僚と折り合いが悪い」
「新しい職場の雰囲気に慣れない」
日々の生活を送っているうえで、人間関係の悩みは尽きませんよね。
特に仕事の場合は、苦手な人がいたとしても、業務上の関係で避けることが難しいケースが多々あります。
本記事では、職場の人間関係に関するモヤモヤを楽にするコツをご紹介します。
職場の人間関係で悩む人は多い
仕事は一日の大半を占めるものです。
職場で人間関係の悩みを抱えていると、それが本人にとって大きなストレスになることも頷けます。
実際に、労働政策研究・研修機構が21~33歳を対象にした調査結果によると、3割近くが人間関係を理由に退職をしています。
【参照元:『若年者の離職状況と離職後のキャリア形成』のグラフを加工し作成】
心理的ストレスは、目に見えないからこそ要注意
人間関係の悩みを代表とする心理的ストレスは、じわじわとメンタル面や仕事のパフォーマンスに負の影響を与えます。
ひどい場合は、うつ病に発展するケースもあります。
大きなストレスへと育っていく前に、対処していかなければなりません。
また、チームを束ねる立場にある人の場合は、自分だけでなく、メンバーのストレス状態にも気を配る必要があります。
チーム全体の生産性に影響を及ぼす可能性があるからです。
しかし、他者の心理的ストレスの度合いを正確に感知することは、思っている以上に難しくもあります。
突然退職を切り出され、「元気そうに見えたのに…」ということもありえます。
心理的ストレスで押さえておきたいポイントを、2つご紹介します。
ポイント①:目の前にストレス源がなくても、ストレスを感じてしまう
みなさんは、このような経験はありませんか?
対人関係で嫌なことがあった時、後から何度もそのことを思い出して、さらにムカムカする。
上司に厳しく怒られた会議室に足を踏み入れただけで、なんだか気持ちが落ち込む。
このように私たちは、たとえストレス源となる出来事が目の前で発生していない時でも、ストレスを感じてしまいます。
ポイント②:心理的ストレスは、増強されていく
ストレスを専門とされている田中正敏先生(久留米大学名誉教授)による研究で、興味深いものをご紹介します。
マウスに肉体的ストレス(電撃)と心理的ストレスを与え、違いを比較するという実験です。
各ストレスは、1日1時間、5日間連続で与えられ、ストレスレベルは「ノルアドレナリン(※)の放出量」で計測します。
(※)不安や恐怖を感じると放出される脳内物質
電撃ストレスを受けたマウスの場合は、1日目でドーンとノルアドレナリンが上昇するのですが、2日目以降は徐々に低下していきます。
一方で、心理的ストレスを受けたマウスの場合は、1日目のノルアドレナリン量は、電撃ストレスよりも少ないのですが、2日目、3日目…と徐々に上昇していき、4日目になると、ついに電撃ストレスでの放出量を越してしまいます。
この実験から、心理的ストレスは日を追うごとに増強されていくことが分かります。
そして、職場の例でいうと、上司や同僚との折り合いが悪く、日々ストレスを感じていると、そのストレスがどんどんと増強されていく可能性があることが示唆されます。
人間関係の悩みが生じる理由
そもそも、なぜ人間関係による悩みは発生するのでしょうか?
人間関係の基本は、コミュニケーション(言語+非言語)です。
私たちは、コミュニケーションを通じて、互いに情報のやりとりをしています。
コミュニケーションの基本プロセス
コミュニケーションは、図のようにSTEP1~6から成り、このサイクルをぐるぐると回すことで行われます。
このサイクルが上手く回ると、互いに心地の良いコミュニケーションに感じ、信頼関係が構築されていきます。
人間関係こじらせの原因は、「つまづき」が解消されないことにある
この6STEPの中のどこかで「つまずき」が起こることがあります。
つまずきが解消されないまま「負のループ」がぐるぐると回ると、人間関係がこじれていく原因となります。
人間関係を改善するには、「負のループをどこかで断ち切る」必要があります。
人間関係の悩みを解消する3つの基本原則
相手の行動や感情を完全にコントロールすることは、至難の業です。
「相手に完全に非がある」場合もありますが、自分でコントロールできる領域で、負のループを食い止める努力をしていくことが、解決への近道です。
【自分でコントロールできる領域】
①自分の考え方
②自分の行動
③ストレッサー(ストレス源)の対処の仕方
とくに、①③で肝になるのが、「認知の仕方」です。
同じ出来事が起こっても、それがストレスになるかどうかは、人によって異なる(=認知の仕方によって異なる)からです。
人間関係の悩み解消法①:「自分の考え方」を変える
自分の考え方に原因があるケースは、大きく2パターンあります。
パターン①:知らず知らずのうちに「ネガティブな感情」を抱いている
パターン②:相手を気にしすぎてしまう
パターン①:知らず知らずのうちに「ネガティブな感情」を抱いている
1つ目は、自分の「ネガティブな気持ち」が、人間関係こじらせの根本原因であるパターンです。
一見「相手が悪い」と思える場合でも、知らず知らずのうちに抱いていた「自分の中のネガティブな感情」が発端で、負のループに入ってしまっていた、ということが往々にしてあります。
相手に対する行動(言語、態度、表情)をポジティブなものに変換し、相手に悟らせない方法もありますが、自分の気持ちと反する行動をし続けると、それ自体がストレスになっていきます。
なので、ここでは根本原因である「自分の考え方」から変えていく方法をおすすめします。
【ケース別対処法】
☑ケース1:相手に嫉妬心を持っている
「なんだか気に食わない」「やる事なす事、すべてにケチをつけたくなる」という人が、あなたの身近にいたとします。
その場合、相手への「嫉妬心」が原因かもしれません。
無意識のうちにケチをつけ、”相手を下げる”ことで心の安定を保とうとしている可能性があります。
まずは、自分の中に「嫉妬心」がないかを確認し、ある場合は「自身が嫉妬していること」を自覚してみましょう。
そのうえで、相手の優れている点を素直に認め、「学ばせてもらおう」というポジティブな気持ちで接するようにしてみてください。
相手に対する感情や行動は、自然と変わっていきます。
☑ケース2:信頼できない/心を許せない
信頼関係とは、すぐに構築できるものではありません。
互いを知る時間が積み重なって、できあがっていくものです。
接する時間や回数が少ない人に対して信頼できないというのは、ある意味当然です。
また、「信頼できない」というのは、「この人が言っていることは本当なのだろうか?」という疑いの気持ちがあるためです。
本心で話し合うことができる関係を望むならば、まずは自分から自己開示し、相手が安心して本音で話せる空気づくりをしていきましょう
☑ケース3:嫌い/苦手
対処法の1つは、相手を気にしすぎないことです。
相手は、こちらが思っているほど気にしていない可能性もありますので、負の感情に振り回されすぎないようにしましょう。
また、嫌いな人に対して、私たちは相手の嫌な所ばかりに目を向けがちです。
人はいろんな側面を持っており、表に現れているのは、ほんの一部です。
完全に「悪」という人間は、ほぼいません。
意識的に相手の「長所」を見つけるようにしたり、「良いエピソード」をメモしていくようにすると、だんだんとフラットな気持ちで向き合えるようになります。
パターン②:相手を気にしすぎてしまう
相手を気にするあまり、自身が疲弊してしまうというパターンです。
【ケース別対処法】
☑ケース1:人の意見に流されてしまう
自分の考えや決断に自信がないことが原因かもしれません。
客観的な意見を聞きながら判断することも大事ですが、あくまで参考程度にとどめておきましょう。
アドバイスには、その人自身の価値観や感性が反映されるため、必ずしもあなたにとって良い選択肢とは限りませんし、他人はけっして「あなたの人生」の責任を取ってはくれません。
関係性にもよりますが、無責任なアドバイスをされていることも往々にしてあります。
☑ケース2:他人に嫌われるのが怖い
前提として、「全員に好かれる」ことは不可能です。
どんなに人柄がよく非の打ちどころがない人でも、相手からの「嫉妬」で嫌われることはあります。
ある程度”しょうがないもの“として受け入れていく必要があるでしょう。
人間関係の悩み解消法②:「自分の行動」を変える
けっして自分に悪気がない場合でも、相手からはネガティブな行動として捉えられているケースがあります。
相手から微妙なリアクションをされる場合は、相手目線で不快な行動をとっていないか、振り返ってみましょう。
【ケース別対処法】
☑ケース1:感情が分かりづらい/出しすぎてしまう
まったく感情を表に出さない人は、なんとなく近寄りがたいですよね。
感情表現は、コミュニケーションの1つであり、人間関係構築において重要な要素です。
一方で、怒りや悲しみといったネガティブな感情をすぐに表情や態度に出したり、爆発させてしまう人に対しても、周囲の人はどう接していいか分かりませんよね。
心当たりがある人は、「この感情を表に出したら、何を失うか?」と一歩踏みとどまる癖をつけましょう。
☑ケース2:相手の話を聞かない
コミュニケーションは、「双方的なもの」です。
人は、自分の話を聞いてくれないと感じると、尊重されていないと受け取ります。
普段の会話を思い出して、「自分ばかり話しているかも…」という人は、相手の話にも耳を傾けるように意識してみましょう。
☑ケース3:ネガティブな発言が多い
愚痴や不平など、ついネガティブな話題ばかりをしていませんか?
話に乗っかるタイプの人もいる一方で、「どう反応していいか分からない」と困る人もいますので、気をつけましょう。
人間関係の悩み解消法③:「ストレッサー(ストレス源)への対処の仕方」を変える
人間関係こじらせの原因で、どうしても「相手の行動に問題がある」場合もあります。
しかし、このケースも自分でコントロールできる領域でなんとか解決していくしかありません。
「なるべく関わり合いをもたない」という手もありますが、業務の都合上、そういうわけにもいかないことも多々あるでしょう。
【ケース別対処法】
☑ケース1:あからさまに敵意を向けてくる
心当たりが全くないのに、相手から一方的に敵意を向けられる場合は、嫉妬されている可能性が高いです。
あなたが悲しんだり、落ち込んだりすると、相手は喜ぶので、極力フラットな対応をしましょう。
攻撃し返すのは、相手がさらに過激な言動や行動に移る可能性があるので、のぞましくありません。
丁寧な対応をして適度にかわしつつ、相手があきらめるのを待ちましょう。
☑ケース2:相手に変わってほしいのに、変わってくれない
「なんでこの人は、いつもこうなんだ!」という人もいるでしょう。
先述したように、相手の行動や性格を変えることは至難の業です。
子どもの頃に、先生や親から「宿題をやりなさい!」と言われてやる気が出た、という人はいないのではないでしょうか。
ここでのポイントは、「相手に自分で気づかせる」「適度に支援する」「変わっていくことを気長に待つ」の3つです。
相手がのぞましい行動を少しでもとったら、肯定的な反応をするなど、無理強いするのではなく、信頼し見守る姿勢でいましょう。
☑ケース3:いやがらせをしてくる(悪口や業務妨害など)
もはや自分でどうにかできる範囲で対処できないほど相手の行動がひどい場合は、一人で抱え込まずに人事部や周囲の信頼できる人に相談し、第三者の手を借りながら解決していくことも、手段の1つです。
生まれつき、”超繊細な人”が5人に1人いる
ここまでは、自分を変えていくことで、人間関係の悩みを解消する方法をお伝えしました。
しかし、中にはHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる、生まれつき「周囲のことに対して敏感すぎる人」がいます。
HSPの人の場合は、異なる対処法も考えていかなければなりません。
HSPとは
HSPとは、心理学者であるエレイン・N.アーロン博士が提唱した概念で、「視覚や聴覚などの感覚が敏感かつ感受性が豊かで、周囲からの刺激を受けやすい人」のことを指します。
ささいな刺激もキャッチしてしまいますので、人間関係で悩み、疲弊することも少なくありません。
一方で、その共感力や感性を活かして、サービス業やクリエイティブ業で活躍されている人も多くいます。
HSPの人がどうしようもなく人間関係で悩んだら…
HSPは、本人の性質によるものなので、変えることは困難です。
なので、職場の人間関係でどうしようもなく悩んでいる時の対処法としては、
・居心地のよい職場へ転職する
・リモートワークで働き、周囲からの刺激を減らす
・働く場を選べるフリーランスで働く
など、心地よく働ける環境に身を置く、もしくは自分で作っていく選択肢も検討していく必要があります。
まとめ
人間関係の悩みという普遍的なテーマの解決法を紹介しました。
自分で変えられる所に目を向け、改善していきましょう。
(執筆:新宅 千尋)
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【著者プロフィール】
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Photo by christopher lemercier