この世で一番「うんざりする仕事」ってなんだろう。
上司5人に承認のハンコをもらうこと?
データ共有すればいいのにわざわざ書類をプリントアウトして配ること?
2時間話し合った結果「判断保留」になった会議に参加すること?
まぁうんざりする仕事なんていくらでもあるよね、うん。
でも数ある「うんざり」のなかで、トップクラスで御免被りたいのは、返事の催促だと思う。
だって、返事の催促=相性が悪いってことだから。
入社を決定した理由は「返信や対応が早いから」がトップ
返事の催促というのは、それが必要になった時点ですでに、仕事が滞っているということだ。
それなのに、「お手元に届いておりますでしょうか」「ご多忙とは存じますが」などと言葉を重ね、丁寧に丁寧におうかがいを立てなきゃいけない。
これがもう本当に面倒くさい!
返事が返ってこないってだけでもうモチベーションが下がるし、なんなら「とりあえず放置でいいや、ほかの仕事しよ……」くらいの気持ちになる。
逆にいえば、さくさくと話が進み、ノリノリのテンションのままゴールできる仕事はやってて楽しいし、いい結果を出せることが多い。
そういえばマイナビの統計によると、転職の選考フローの際、入社決定に強く影響したのは「応募・面接後の返信・対応が早い」が34.3%と最多らしい。
「会社・業務についての説明がある」「入社日の希望を聞いてくれる」ことよりも、返信が早いことが入社を後押しするのだ。
もちろん、うっかり返信を忘れてしまうことくらい、だれにでもある。
とはいえ日常的に連絡が滞り、話が進まないとなると、いくらせっついて返事が返ってきたとしてもその後うまくいかない。
わたしの経験上、うまくいったためしがない。
だからこそ、返事の催促はダントツに面倒くさいし不毛だしうんざりする作業なのだ。
何度も返事の催促が必要な時点で信頼関係は破綻している
ここでいくつか、わたしの経験を紹介したい。
1週間に1記事寄稿という契約のもと、毎週末記事を納品していたメディアがあった。
しかしその次の週末になっても、受領の連絡がこない。
となると、「今週の記事です。先週の記事はどうなりましたか」と、毎週末聞かなきゃいけなくなる。
で、水曜日あたりに「まだお返事をいただいていない記事が3本あります。執筆を続けていいのでしょうか」とまた確認。
その後「せめて受け取ったかの返信はほしい、受領連絡がないまま記事を納品し続けるのは不安だ」と正直に伝えたところ、即レスで「メディアの収益化がうまくいっていないので寄稿は終わりで」とクビになった。
そういう返事だけは早いんかーい!
そうそう、はじめて出版のお話をいただいたときも、なかなかにヤキモキした。
夢の出版ということで気合を入れて構成を作り提出、「2週間後の会議にかける」と言われたので、2週間ずっとそわそわしながら結果を待っていた。
しかし1か月近く経っても返事が来ないのでとある日曜日に確認メールを送るも、返ってこない。
木曜日に「日曜日のメール届いてますか」と追撃すると、「同ジャンルの企画が上がっているので企画か時期を変えようかと悩んでいました。結論をお急ぎならご連絡ください」とのこと。
いや、そっちが「2週間後の会議」って言ったから連絡を待ってたんだけど? 結論がどうであれ、会議が終わったらひとまず連絡するのが筋じゃないの?
というわけで、その後出版を辞退した。
ほかにも、こんな悲しいこともあった。
とても素敵な編集者の方と出会い、一緒にお仕事していたときのこと。
その人はわたしが質問や相談をすればすぐに返事をくれたし、わたしの至らない部分はしっかりと指摘してくれた。
「ずっとこの人とお仕事したい!」と思うくらい、尊敬していたのだ。
しかし即レスだった返事があるときから少しずつ遅くなり、「ご確認いただけましたか」と返事を催促しなきゃいけなくなってしまった。
「すみません、今週中に確認します」と向こうが期限を切るのにそれが守られることはなく、放っておくとまったく連絡がこない状態に。
「ああ、もうこの仕事は終わりだな」と悟るよね、さすがにね。
尊敬している人に何度も何度も返事を催促するのは心苦しかったし、以前より明らかに軽く扱われている事実を前に、やる気を失ってしまった。
本当に悲しかったなぁ。1年前に納品した記事なかったことにされてるし……。
とまぁこういう経験をしたので、返事を何度も催促しなきゃいけない時点で信頼関係は破綻しているし、どうせ仕事もうまくいかないから、返事の催促って気乗りしない作業だなぁ、と思うのだ。
「返事が遅いのでこの話はナシ」と言われてびっくり!
……とは言いつつも、この記事の結論は、「返事が遅い人とは一緒に仕事するな」ではない。
なぜならこの記事を書いているのは、わたし自身、返信が遅いことを咎められたからだ。
わたしはいままで、(ありがたいことに)何度かテレビ出演のお話をいただいたことがある。
「こんな番組に出れるの!? めっちゃ有名になっちゃうんじゃない!?」と浮足立つような話もあった。
しかしテレビ業界はとにかくスピード感が早くてついていけず、結局全部断っている。
「3日後の番組でこういうVTRがほしい。今日であればいつでもいいのでまずは打ち合せしたい」
「1週間後のニュースのためにドイツの街並みを撮影し、通行人にインタビューしてほしい。詳しい話は打ち合わせで説明」
「日本時間の深夜でも大丈夫なので、こちらのzoomにコンタクトください」
一事が万事、この調子。
わたしはふだんのんびりと仕事をしているから、そのスピード感が「こっちの都合無視の理不尽な要求」に思えてしまって、どうにも重い腰が上がらない。
で、ある朝メールチェックしたところ、ラジオ出演の依頼が来ていた。
おもしろそうな依頼だったので、「今日はドイツの祝日だし、1日ゆっくりトーク内容を考えて、それをまとめたうえで明日返事をしよう」と考えていた。
そして次の日の朝受信ボックスを開いたら、「お返事をいただけなかったのでこの話はなしで」という連絡が届いていてびっくり!
時差含め1日半も待てないようなスケジュール感で仕事を依頼してくる人がいるだなんて、想定していなかったんだ……。
返事の催促は相手の心地よいテンポを否定すること
「この話はなし」というメールを見たとき、「こっちにも都合があるのにさぁ。こんな人と一緒に仕事したくない」と思った。正直ね。
でもふと冷静になると、相手からすればわたしは「返事が遅くて使えねーやつ」に見えたのかもなぁと思い至る。
わたしが返事をしない編集者に辟易したように、向こうもわたしにイライラしたんじゃないか、と。
だって、状況としては同じだもんね。
わたしから返事を催促された編集者も、「こっちにも都合があるんだからせかすなよ」と思っていたのかもしれない。
返事の催促とは、お互いのスピード感、スケジュール感、時間感覚に齟齬があるときに生まれる作業だ。
そしてそのコミュニケーションのスピード感は、結局のところ「相性」である。
たとえば、歩く速度と同じ。
わたしは、歩くのがめちゃくちゃ遅い。デートに行くと、歩くのが速い男性はさっさか前に行ってしまう。
で、わたしが遅れてるのを見て相手は歩調を緩めてくれる。
「歩くのが遅くてごめん」と言うと、たいてい「いや、気が利かなくてごめんね」と言ってくれる。
そして一時的にとなりに並んでも、結局男性がいつもの速度に戻り、わたしは速足にならざるをえずへとへとになってしまう。
これはどちらがいい、悪いではなく、単純に「相性」の話だ。
相性がいい人って、歩幅や足の長さが全然ちがうのに、なぜか歩くペースがぴったりと合うんだよね。
きっとコミュニケーションのスピード感も、そういうものなのだ。
コミュニケーションのスピード感が一致すると「やりやすい」
返事の催促は、「こっちのペースに合わせろ」と相手に要求する行為。
相手が一番実力を発揮でき、一番やりやすいと思うテンポを否定し、合わせることを求めたところで、信頼関係を築きいい仕事をするのはむずかしいだろう。
たとえ相手が期限を守っておらず、100%の非があったとしても、ね。
返事を催促することによって、一時的にスピード感をすり合わせることはできる。
でも根本的な「心地よいテンポ」がお互いちがうのだから、最終的には「合わない」という結論にしかならない。
うまくいく相手って、そういうストレスがなく、「相性がいい」場合がほとんどだし。
だからわたしは、返事の催促が大嫌いなのだ。
相性が良ければそもそも不要だし、相性が悪ければ催促して返事がきたところでうまくいかないからね。
とはいえ仕事をしていく以上、相性の悪い人と一緒になることもある。
そういうときは、事前にスピード感をある程度共有するしかない。
多少強引でもあらかじめ「こういう感じのスケジュール感なのでこういうテンポでやっていきましょう」という認識を共有しないと、絶対に事故るから。
それでもうまくいかなければ、「返事は〇〇日までにください、なかった場合は××で進めます」のような、強硬手段に出るしかない。
受け取る人からすればいい気はしないだろうが、何度も返事を催促しなきゃいけない時点で信頼関係もなにもないし、仕事を終わらせるためにはしょうがない。
……でもさ、そんなふうに仕事したくないじゃん?
どうせなら楽しく、ストレスなく進めたいじゃん?
だったらもう、できるだけ「相性」がいい人と仕事ができるように「選ぶ」しかないよなぁ、と思う。
というわけで、仕事において大切なのは「返事の早さ」ではなく、「コミュニケーションのスピード感の一致」というのが、今日の結論だ。
人手不足 × 業務の属人化 × 非効率──生成AIとDXでどう解決する?
今回は、バックオフィスDXのプロ「TOKIUM」と、生成AIの実務活用支援に特化した「ワークワンダース」が共催。
“現場で本当に使える”AI活用と業務改革の要点を、実例ベースで徹底解説します。
営業・マーケ・経理まで、幅広い領域に役立つ60分。ぜひご参加ください!

こんな方におすすめ
・人材不足や業務効率に悩んでいる経営層・事業責任者
・生成AIやDXに関心はあるが、導入の進め方が分からない方
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<2025年5月16日実施予定>
人手不足は怖くない。AIもDXも、生産性向上のカギは「ワークフローの整理」にあり
現場のAI・DX導入がうまくいかないのは、ワークフローの“ほつれ”が原因かもしれません。成功のカギを事例とともに解説します。【内容】
◯ 株式会社TOKIUMより(登壇者:取締役 松原亮 氏)
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・AIだけでは解決できない業務とは?
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◯ ワークワンダース株式会社より(登壇者:代表取締役CEO 安達裕哉 氏)
・生成AI活用の実態
・「いま」AIの利用に対してどう向き合うか
・生成AIに可能な業務の種類と自動化の可能性
・導入における選択肢と、導入後のワークフロー像
登壇者紹介:
松原 亮 氏(株式会社TOKIUM 取締役)
東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
2020年に株式会社TOKIUMに参画し、当時新規事業だった請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の立ち上げを担当。
2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。
安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。
日時:
2025/5/16(金) 15:00-16:00
参加費:無料 定員:50名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
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(2025/5/8更新)
【著者プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
ハロプロとアニメが好きだけど、
著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)
ブログ:『雨宮の迷走ニュース』
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