ちょっと前になりたい職業ランキングでライターが1位になったんだそうだ。

大人がなりたい職業ランキング1位はライター、2位は? | マイナビニュース

「大人がなりたい職業ランキング」1位は、「ライター(Webライター)」(56人)だった。「在宅でできる」「場所や時間を縛られることがない」というメリットに魅力を感じている人や、「文章を書くのが好き」という人が多かった。

これに対する先達方の反応が味わい深い。

 

当サイトBooks&Appsのブレない執筆陣を見ていると記事を書くのはそう難しそうにみえないかもしれないが、実際はライターをやり続ける難易度は超高い。

 

もちろん中には飄々と書けるタイプの人もいるのかもしれないが、少なくとも自分はそうではない。

ぶっちゃけ超大変☆でたまに発狂しそうになる。

 

このライター、というかクリエイティブな仕事のシンドさが何に起因するのかが長い間わからなかったのだが、最近やっとその疑念を晴らすことができたので、今日はそれについて書こうかと思う。

 

気分変調と仕事の関係

人間、誰だって調子の良い時もあれば悪い時もある。

気分がよくて爽快だという日もあれば、ポンコツで全く駄目だという時もある。

 

この手の気分変調だが、いわゆるサラリーマン的な働き方をする分にはそこまで仕事の生産性には影響しない。

僕自身の話をすれば、医師としての仕事は気分がどんなに最悪でも最低限の品質は保つことが可能だ。

求められた仕事はまず問題なくこなす事ができる。

 

だがライティングとなると話は別だ。

ライティングは気分の良し悪し、もっといえば躁状態と鬱状態で仕事の生産性が100000倍ぐらいは変わる。

 

普通の労働とクリエイティブは全然違う仕事

僕が思うにサラリーマン・ワークとクリエイティブな仕事は同じ仕事という言葉で括れないほどの断絶がある。

僕にとって医者という仕事は何をすればいいかがハッキリとしているタイプの仕事であり、とにかくやるべき事を淡々とやれば仕事は進む。

そこに調子の良し悪しが介在する余地はあまりない。

 

それに対してライティングのようにゼロから有を生み出すタイプの仕事は調子の良し悪しが生産性にダイレクトに直結する。

ネタを閃くという、クリエイティブにとって一番肝心な部分は暗黙知の塊で、そこに何をすればいいのかという明文化されたルールはない

 

このように基本的にはクリエイティブとは生みの苦しみから逃れられない職業であり、その生みだす力は躁鬱のように”波”がある。

 

クリエイティブは気分変調≒仕事のパフォーマンス

ゼロから有を生み出すクリエイティブにとって、気分変調≒生産性だ。

まるで洪水のようにアイディアが降り注いで無限に原稿を書き続けられるような時もあれば、何をどうやったってアイディアが思い浮かばず、ただただ「書けない…」という苦痛を受け入れなくてはいけない時もある。

 

気分変調には波がある。それ自体は”そういうもの”でしかなく、普通の仕事をしている分には精々「今日はちょっと調子が悪いな」と思うぐらいだろう。

 

だがクリエイティブを仕事にすると必然的にそういう己の内なる気分変調に真剣に向き合わざるをえなくなってくる。

調子が悪い≒生産性がほぼゼロなので仕事なんて絶対・無理みたいな感じなのだが、それでも締め切りは間違いなくある。

 

そういうシンドイ時期をクリエイターは薄氷を踏むかのように綱渡りしていくのだが、多くの人は薄氷を踏み抜いて創作が無理になる。

 

己の内なる躁鬱気質に向き合うという事の恐ろしさ

こうしてクリエイティターは仕事を通じ、己の内なる躁鬱気質にルーティン・ワークの住民とは桁違いの密度でもって向き合う事になる。

己に真摯に向き合い続けていくと多くのクリエイティターは仕事の能力と気分変調との境界が曖昧となっていき、挙句の果てには鬱になって生産力が枯渇する。

 

そうして仕事ができなくなると「自分、メチャクチャに無能やん…」と思い込んで、鬱に更なるスパイラルがかかったりもする。

結果、多くのクリエイターはこれに耐えきれずに創作活動を脱落してしまう。

 

アガったらアガっただけ、墜落した時の痛みはデカい

また、クリエイティブは仕事の成果も気分変調に直結しやすい性質がある。

例えばかなり気合をいれて作った成果物が全くといっていいほどヒットしなかったり、あるいは自分が意図していない形でもって批判されたりと、とにかく落ち込むようなネタには事欠かない。

 

その逆である予期せぬアガる反応をもらえる事だってもちろんある。

が、これもまた難しい問題をはらんでいる。それはアガったらアガっただけ、ちゃんと落ちるのだ。

 

躁鬱という名前がついているように気分変調というのは基本的にはアガったら下がって下がったらアガる。

想定以上にPVが取れて喜びまくってたり、調子がいいからといってシャカリキになって働きまくったりとアゲアゲしてたら…後でちゃんと見事にズゴーっと地獄の谷に落ちる。

 

躁の波は崖から飛び降りて、地面に衝突する前のフワフワと空中に浮かぶような感覚に似ている。

それは物凄く気持ちいいのだが、当たり前だけどそれが高くて気持ちよければ良いほど地面に墜落した時は痛い。

 

クリエイティブの生活は清い。破天荒にすると死ぬ

なので己の内なるバイオリズムをキチンと学習したクリエイティブは、調子がいい時にあえて働きすぎなかったりする等の”安全運転”の技術にかなり入念に取り組むようになる。

躁状態だからといって寝ずに夜通しでぶっ続けで働くみたいなヤバい生き方をし続けていると、躁鬱の波に飲み込まれて悶え苦しむ羽目になるからだ。

 

安全運転とは具体的にどういうことをいうかといえば、以下のようなものだ。

 

1 毎日決まった時間に就寝し、キッチリ7~8時間は睡眠時間を確保する。

2 定期的に身体を動かして、運動する。

3 食事は野菜や魚を中心に食べ、酒は飲みすぎないようにする。

 

このように清い生活を送るクリエイティブな人はかなり多い。

作家というと何やら破天荒な人種を思い浮かべるかもしれないが、そういう人は大体においてまず長続きはしない。

 

クリエイティブとは躁鬱の波乗りピカチュウである

たまに「普通の会社務めが無理だと思ったのでクリエイティブを志した」という人をみかけるが、その手の人種はメンタルがあまり強くはなさそうで終わりなき気分変調の荒波に耐え続けられるとはとても思えない。

夢がない話で恐縮だが、個人的には気分変調と仕事パフォーマンスの相関関係が弱い会社務めの方が多分向いているのではないかと思う。

サラリーマンは最低でも会社に通ってれば何とかなる。クリエイターではそんな芸当、絶対にできない。

 

クリエイティブとして長く生き続ける為には、普通の会社務めをしていたら意識しなくてもいい事をかなり意識してメンテナンスする必要がある。

躁鬱の波を己の生活リズムでもっていい塩梅に調整できないと生き残れないといってもいいかもしれない。

これは言葉で聞く以上に実行難易度は高く、ライターの10年生存率がそれを裏付けている。

 

クリエイティブとはいわば躁鬱の波乗りピカチュウだ。荒波を乗りこなせなかったピカチュウは、濡れ鼠となって放電して死ぬのである。

 

創作は趣味にするのが無難だが、仕事にできたら大きく成長もできる

創作を仕事にするのはエラいキツい。なので趣味に留めておくのが無難だと僕は思う。

だが…もし創作を仕事にする事ができたなら、貴方は人としてとてつもなく成長できる。

最後にそれについて話して文章を〆よう。

 

3月のライオンという将棋の漫画がある。この本の第一巻にとてつもなく大好きなコマがある。それがこれだ。

<3月のライオン 一巻より>

 

「他人が説得しなけりゃ続かないようならダメなんだ。自分で自分を説得しながら進んでいける人間でなければダメなんだ」

「進めば進む程道は険しく周りに人はいなくなる。自分で自分をメンテナンスできる人間しか、どのみち先へは進めなくなる」

この言葉には非常に学ぶべき事が多い。

 

頑張るというのは、単にガムシャラになってシャカリキになるという事だけではない。

数日で終わるようなものならばそれでも別にいいのだが、多くの局面において人生というのは連続性が求められる。

 

ここまでクリエイティブとして生き続ける事の難しさを書いてきたが、逆に言えばクリエイティブとして生き続けられるという事は”自分自身をキチンと管理できる”という事の逆証明ともなる。

人はいつか老い、若い頃のような無茶な生活を続けられなくなる。

観測範囲では30代も中盤を越えてくると、結構な数の人が健康診断で不穏な数値が示されるようになってくる。

 

健康は無垢なままでは保てない。

人は健康に生き続けたいのならばどこかのタイミングで自分自身の管理に向き合う必要がある。

 

そういう時に「そろそろ管理しないとヤバい」と気がついて生活習慣を修正させられる人は…立派に波乗りピカチュウをやれるだろう。

そうではなく「まあ特に今は体調不良みたいなの無いから、いっか」と見て見ぬ振りをしてしまう人は…いつか荒波に揉まれて大変な事になる。

 

クリエイティブをやろうがやらまいが、私達はみな1人のピカチュウなのだ。

いつかは必ず波乗りデビューする日がやってくる。

それをいい日にできるかどうかは、ひとえに貴方の覚悟にかかっている。

 

だから創作活動を通じ、人よりもはやく自分自身に向き合う機会を持つ事は決して無駄にはならない。

だから来よう。こっちの沼に。

こっちの水は甘ンンまい…よ…ガクリ

 

 

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【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

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