皆様の職場では、中途採用は増えていますでしょうか。
報道によれば、2019年時点では、10年連続で中途採用の割合が増加しており、全体の3割に達している、とされています。*1
終身雇用が過去のものとなった今、この傾向は当分続くものと見て良いでしょう。
そのため、多くの企業において、採用時における候補者の能力の見極め、そして入社後のカルチャーフィットなど、採用後の定着に関わる諸問題が、大きな課題となっています。
しかし、「一緒に働いたことのない人」の能力の見極めは、非常に難しい。
現在、候補者の能力の見極めは、「面談・面接」での質問と、職務経歴が中心です。
が、ほとんどの会社で、簡単な質問表しか用意されない上、面接官は訓練を受けていない素人です。
これでは能力の見極めは不十分にならざるを得ません。
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部専任教授の川上真史氏は、従来の面接の問題点は2つあり、
「入社後の活躍と結びつかないポイントを見極めていること」
「面接での見極めのほとんどが 「直観」で行われていること」
と述べています。*2
それゆえに川上氏は、「コンピテンシーを見極める面接をしよう」と提唱しています。
より具体的には、面接における質問は、行動事実の話が出てくるまで「例えば?」を聞いていくと良い、と述べています。
「例えば、その強みであるリーダーシップを発揮した例を聞かせてください。
いつ、どこで、誰に対して、どのような効果的なリーダーシップを発揮した事例がありますか?」というような質問です。
採用面接での回答は、本人の主観に依存する
しかし、ここにもまだ問題があります。
それは、採用面接での、候補者の回答は、あくまで本人の主観に依存しているという点です。
突っ込んで言えば、いかにも「それっぽい話」を作り上げることは、面接対策をすれば可能であり、そして、面接官はその真偽を判定する術はないのです。
これに対して「詳しく聞けばわかる」という方もいます。
が、果たして本当でしょうか。
面接でなされた回答の「裏とり」もしくは「追跡調査」をしているケースはほとんどなく、実際には検証されていないのではないでしょうか。
したがって、「採用で絶対に失敗できない」創業期などの会社は、信頼の置ける「社員の紹介」によって、採用しているところが多いのです。
それは、仕事の能力や、人付き合いの能力が、一緒に働いてみないとわからないからです。
事実、私の会社、ティネクトでは、採用は基本的に知人の紹介、もしくはしばらく一緒に働いて、お互いのことがよくわかってから採用、ということがほとんどです。
また、Googleも、創業からしばらくの間は、社員の紹介による入社に力を入れていたと人事のトップが述べています。
創業以来長きにわたり、わが社にとって最高の人材供給源は既存社員からの紹介だった。一時は、ほかの社員の紹介で入社した人が全社員の半数以上を占めたこともある。
(ワーク・ルールズ ラズロ・ボック 東洋経済新報社)
人間は似た者同士が集まる傾向にあります。
優秀な人の周りには優秀な人が集まりますから、紹介が最も合理的な採用の手法であることに疑いの余地はありません。
しかし、「社員の紹介」にも限界はあります。
上で触れたGoogleでも、それは例外ではありませんでした。
彼らは気づいてしまったのです。「本当に優秀な人は、紹介の候補に上がってこない」という事に。
本当に優れた人々は仕事を探していないのだ。すばらしい業績を上げる人々は、現に在籍している組織に満足しているし十分な報酬を得ている。彼らが紹介の対象として人々の頭に浮かぶことはない。どうして、現在の仕事に満足している人をわざわざ紹介しようとするだろうか?彼らが仕事に応募しないのは間違いない。
つまり、「社員の紹介」は強力なツールではありますが、必要とする人材の数には紹介だけでは不十分です。
特に会社が成長期にあり、採用を積極的にすればするほど、この問題は顕著になります。
では「面接」でもない「社員の紹介」でもない、候補者の能力を客観的に判断する方法は、他にあるのでしょうか。
リファレンスチェックという、古来からある手法
アガサ・クリスティーという作家をご存知でしょうか。
「ミステリの女王」と呼ばれる、最も有名な推理小説作家の一人です。
彼女が生きた時代は19世紀から20世紀にかけて。まだイギリスに貴族社会が根付いていた頃でした。
実際、作品中にはまだ「貴族たちの生活」についての描写が存在し、彼らの邸宅には多くの住み込みの使用人たちが働いていました。
その中で、私が面白いな、と思った描写のひとつは、住み込みの使用人たちの求職活動です。
いくつかの作品の中には、使用人たちが、新しい雇い主を求めて、試行錯誤する様子が描かれています。
そして、その求職活動の中で、大きな意味を持っているのが、前の雇い主による、勤務態度などを記した「紹介状」の内容でした。
基本的に「住み込み」で労働していた当時の使用人は、紹介状がなければ再就職が難しく、紹介状なしでの解雇は最も厳しい処罰の一つだったようです。
実はこうした、「前の雇用主への勤務態度などの照会」は、諸外国では今でもほとんどの会社が当たり前のように行っており、現代では「リファレンスチェック」と呼ばれています。
(参考 リファレンスチェックサービス『ASHIATO(アシアト)』説明動画)
実際、「中途採用における、リファレンスチェック実施状況調査」*3によれば、日本で活動する外資系企業の6割近くがリファレンスチェックを行っており、その7割の会社が「採用の判断に影響する」としています。
・リファレンスチェックの認知率、外資系企業93%、日系企業73%
・リファレンスチェックの実施率、外資系企業58%、日系企業23%
・7割の企業が「リファレンスチェックの回答内容が採用の判断に影響する」
・リファレンスチェックを行っているのは、約5割が「人事・採用担当者」
なお、これらは興信所などによる旧来の「身元調査」などとは意味合いが異なります。
そうした身元調査には、「本人に黙って秘密裏に行う」というニュアンスが含まれていますが、日本では採用時に本人の同意なく調査を行うのは違法行為です。
採用時に必要なのは、「リファレンスチェック」であり、これは「本人の同意をとった上」で、「本人の紹介をもらった人」から情報を得る行為であり、雇用側の当然の権利でもあります。
近年では上のような背景から、中途採用の増加にともなって日本でも、リファレンスチェックの導入が進みつつあります。
リファレンスチェックサービス「ASHIATO」
日本で提供されているリファレンスチェックサービスの一つが、エン・ジャパンの提供する「ASHIATO」です。
ASHIATOのレポート回収率は90%以上であり、すでに3000名以上の候補者のレポートを取得しています。
ASHIATOはそのレポートに特長があり、候補者情報の偽りのチェックだけではなく、面接精度の向上、または候補者の入社後の定着を確実にするための情報提供などが含まれます。
例えば、以下のような質問に対する回答が得られます。
・依頼者はどのような目標やミッションを追っていましたか?また、客観的にみて達成度合
いはどの程度でしたか?・長期欠勤や欠勤/遅刻など勤怠が乱れることはありましたか?
・依頼者がパフォーマンスを発揮できるチーム/組織の文化はどのようなものだと思います
か?また、上司やチームが気をつけるべきことはありますか?・依頼者ともう一度一緒に働きたいと思いますか?それはなぜですか?
活用法や推進手順、事例など、詳しい情報を知りたい方は、以下のリンクから資料を取得してください。
お役に立てることと思います。
【ダウンロードリンク】
海外では95%の会社が採用している、早期離職を防ぐ採用の仕組み「リファレンスチェック」のすべて(全24ページ)
【目次】
・リファレンスチェックとは
・リファレンスチェックサービス「ASHIATO」
・リファレンスチェック導入事例
【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
◯Twitter:安達裕哉
◯Facebook:安達裕哉
◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書)
*1 中途採用、全体の3割(日本経済新聞)
*2 『高い精度で、活躍人材を見極められる面接方法』(エン・ジャパン)